ニキ・ド・サンファル展
ニキ・ド・サンファル展のことは3月に訪問した京博のミュージアムショップにおいてあったチラシで知った。そこに載っていた右の作品が不思議な磁力を発しており、吸い込まれてしまった。
これを制作したのはニキ・ド・サンファルという女流芸術家。1930年生まれで、02年に亡くなっている。まったく知らないアーティストである。
没後日本ではじめてとなる展覧会は大阪の大丸梅田のあと、東京店でも開催される(5/11~22)とあったので、このチラシをしっかりファイルしていた。
ニキの予備知識がなに一つないので、会場の説明書きを熱心に読みながら作品を見た。写真をみると大変な美人である。最初はモデルになるか芸術家になるか迷ったそうだ。今回出品されてるのは初期から晩年までの油彩、版画、彫刻、オブジェなど90点あまり。とくに惹きつけられるのは版画、代表作のナナ像、そしてガウディの影響が強くでているオブジェ。
25歳のころ、ニキはバルセロナで見たガウディがつくったグエル公園から霊感を受けたようで、この公園に行ったことのある人なら、口を大きく開けた蛇の頭がいくつもある“蛇の木”や“大きな肘掛椅子”などがあのイグアナor大トカゲ像に刺激を受けたものだとすぐわかる。版画にもガウディ風の漫画チックなヘビや怪物がでてくる。ヘビなどは女性を暴力的に支配したり、権力志向的に行動する男性の象徴。
こうした周りの束縛から解放され、喜びに満ち溢れる女性像としてつくり出したのがナナ像。素材はポリエステル。たくましい太ももと骨盤をもった丸みのある体型は一度見たら忘れられないほどユニーク。形も面白いが、ラッカー塗料で彩色された赤や黄色、緑などの明るい色彩が目を楽しませてくれる。お気に入りは“逆立ちするナナ”と右の“白い踊るナナ”。最初の頃のナナ像は布や毛糸、紙などで張子状につくっていたが、後に丈夫なポリエステルに切り替える。まだポリエステルの毒性について知られていなかったからである。が、これが命取りになった。後年、この素材がニキの肺を蝕んでいく。
ニキと関係のあった二人のことが非常に興味深い。一人はニキの夫になったティンゲリー。ポンピドーセンターにある自動で動く廃材を寄せ集めたオブジェ、“地獄、小さな始まり”の作家であるのは知っていたが、ニキの芸術仲間であり、二人が夫婦だったのははじめて聞く話。もう一人はニキのコレクター、増田静江氏。今回の作品は彼女が栃木県の那須町に建設したニキ美術館蔵のものが中心になっている。ニキの作品の虜になってしまったので、機会があれば一度、ここを訪ねてみたい(展覧会が開催中の9月までは休館)。
なお、この展覧会はもう二箇所を巡回する。
・名古屋市美術館:6/17~8/5
・福井市美術館:8/22~9/24
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コメント
いづつやさん、こんばんは。
ニキ、の画像を拝見して、これは、彫刻の森の野外にドカ~~ンとあった、カラフルな大きなオブジェ、を思い出しました。
あれ、ニキさんのなのかしら?そうとしか思えませんし。
ニキ美術館サイトもさきほど拝見してきました。
ん~~なかなかのソウルフルなものを感じました。
ブッダは、ガツンとやられますね。
女性としての呪縛から解き放たれたいと切望していたような、
悲しい情熱がほとばしっているような、そうか私ももっと、自由に爆発しても良いのかなって、パワーをもらえそうです。
もっともらしくしていることのつまらなさ、殻を破るべきかどうかなんて、愚問よね。って、言ってもらえそう。
ニキ、すでに天国に行ってしまっているんですね。
とってもステキな作家さんですね★
嬉しいご案内頂き、感謝です。
イタリア旅行記、絹谷幸二、ニキ、個人的に岡本太郎、と続いていて、どうも最近、色から元気が欲しいって思っているのかもしれません。弾けようって、教えてもらってるのかな♪
投稿: あべまつ | 2006.06.04 22:29
to あべまつさん
ニキのナナ像にKOされちゃいました。那須高原にニキ美術館があること
もはじめて知りました。10月ごろ、旅行を兼ねて出かけようと思います。
ポリエステルの毒性がニキの命を奪いました。これは職業病ですね。素材に
こんなリスクがあったとは怖いですね。ニキは天性のカラリストで、この色彩
パワーに惹きつけられます。
投稿: いづつや | 2006.06.05 23:50