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2006.06.14

根津美術館の鈴木其一

250根津美術館が改装工事のため休館になって、一ヶ月ちょっと経った。

新装の館がお目見えするのが09年の秋だから、3年半という長期の休館である。ここへは定期的に足を運び日本画の名品や陶磁器を楽しんできたので、これらの作品に長らく会えないかと思うと一抹の寂しさを覚える。

最後となった展覧会には所蔵の屏風がいくつもでていた。光琳の“燕子花図”、“夏草図”、円山応挙の“藤花図”、右の鈴木其一の“夏秋山水図”、“蹴鞠図”、“吉野龍田図”、狩野宗信の“桜下麝香猫図”。やっと会えた“蹴鞠図”では一瞬ポカンとする。蹴鞠は一体どこにあるの?よくみると、右隻の真ん中あたりにある桜の木の上にちょこっと見える。公家や童子、僧侶たち8人の視線がそこに向けられてるから蹴鞠だとわかる。桃山時代にトリミングの描き方をつかってこうした風俗画を象徴的に表現するのだから恐れ入る。

屏風では鈴木其一の“夏秋山水図”をまた観れたのが最大の喜びだった。はじめてみたのは15年くらい前だから、久しぶりの鑑賞だ。其一の作品ではこれが最高だと思っている。右は右隻の夏の景色。檜の林と岩間を流れる渓流にスピード感があり、じっと見ているとこちらに流れが向かってくるような気がしてくる。まるで生命をもった水のようで、北斎の“諸国瀧廻り”にでてくる瀧の描写を連想する。背景を金地にし、水の流れを群青と金泥で様式的に描くのは琳派流であるが、群青と緑青、そして檜の褐色の鮮烈な色彩対比はシャープで近代感覚に溢れている。あまりに青と緑のイメージが強いので、見過ごしそうになるのが白い山百合と蝉。真ん中の檜に蝉が一匹とまっている。

鈴木其一(1796~1858)は広重より一年早く生まれ、同じ年に亡くなっている。酒井抱一(1761~1828)の内弟子として絵を学び、抱一没後に酒井家家臣の鈴木家に入り、家を継いだ。其一の作品で気に入っているのは04年の琳派展(東近美)に出品された“朝顔図屏風”(メトロポリタン美)と“群舞図”(プライスコレクション)。そして、“四季花木図屏風”(出光美)、“柳鷺図屏風”(プライスコレクション)。この2点は1994年、名古屋であった琳派展(名古屋市博)にでたが、“柳鷺図”は7/4から東博ではじまる“若冲展と江戸絵画展ープライスコレクション”で再び日本にやってくる。

其一は花鳥画だけでなく、美人画や風俗画の名手。プライス氏は流石、高い鑑識眼をもっており、美人画では一番いいのではないかと思われる“群舞図”を所有している。大谷コレクションにもいいのがあり、昨年あった“肉筆浮世絵展”で“吉原大門図”を観た(拙ブログ05/8/9)。名残惜しい根津美術館で行われた最後の展覧会で鈴木其一の代表作、“夏秋山水図”を観れて本当に良かった。新装根津美がパワーアップして開館することを期待して、館をあとにした。

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受信: 2006.06.17 09:09

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