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2006.06.03

バルラハの彫刻

3955/28日まで東京芸大美術館で開催されていた“バルラハ展”は観終わったあと、心になにかずっしりしたものが残る展覧会だった。

この展覧会を告知するチラシを手にしたとき、人間の内面にある感情や深い精神性がこの彫刻家の作品に表れてるようにみえたので、是非とも本物と向かい合いたくなった。彫刻は57点あり、そのうち12点が木彫作品。ほかはブロンズとか拓器。

彫刻作品だけでなく、彫刻を制作するために描いた素描も展示してあるので、作品をより深く鑑賞することができる。展覧会の前までは、バルラハ(1870~1938)が彫刻におけるドイツ表現主義運動の代表的な作家であったことを、全然知らなかった。で、多少目が慣れているキルヒナーやノルデなどドイツ表現主義の画家の表現方法と根っこのところで通じているだろうと想定して、作品を観て回った。

印象深い作品はその造形に驚かされるものと人間の感情や精神の状態が作品に強くでているもの。形で惹きつけられるのは“ベルゼルケル(戦士)”(木彫)、“復讐者”、“ギュストロー戦没者記念碑の頭部”(共にブロンズ)、“揺れ動く父なる神”(拓器)。“戦士”や“復讐者”のフォルムは写実的な彫りではないが、激しい戦闘に向かう兵士や大きな怒りをもつ男の姿を動きのあるシンプルな形で表現している。“復讐者”では後ろに跳ね上げた左足と頭が水平になり、剣を肩越しに持っている。まさに“復讐してやるぞ!”というこの男の気迫が伝わってくる。内面の感情がこれほどストレートに形に表れた彫刻をみたことがない。

右の“苦行者”(木彫)は一番心を揺すぶられた作品。瞑想している表情がいい。頬がこけてるところをみると、苦行が長く続いていることを窺がわせるが、精神的には高い境地に達しているように見える。衣装に下にある手の形がみえないのはそれだけ修行のため体が細っているためなのであろう。同じように目を閉じて、ひざの上に厚い本をおいている男を彫った“読書をする修道院生徒”(木彫)もぐっとくる作品。目、まゆげを大きくし、鼻も高くしているので瞑想する顔に力があり、その顔から今どんな精神状態なのかが手にとるようにわかる。神の教えに導かれて、静かな喜びに浸っているのであろうか。

心にズキンとくるバルラハの彫刻に会えたのは大きな収穫であった。この展覧会は今日からまた山梨県立美術館ではじまった(7/17まで)。

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» エルンスト・バルラハ:ドイツ表現主義の彫刻家 [Art & Bell by Tora]
上野に行ってきました。プラド展はシルバー・デーであまりの混雑にあきれて早々に退散し、芸大に回りました。 バルラッハは名前だけしか知りませんでしたが、戦争の時代にまみれながら、高い精神性を保持した彫刻をこの目で観て感動しました。 地味な展覧会なので、同じ上野の美術館とは思えないくらいに空いていました。 早速、感想をホームページに書きました。 地下で、「芸大コレクション展:大正昭和前期の美術」を見てきました。最近横浜で観た「長谷川潔」の銅版画も何点か新収蔵品として出品されていました。 ... [続きを読む]

受信: 2006.06.07 21:17

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