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2006.06.16

神坂雪佳の百々世草

408京都にある細見美術館の琳派コレクションは一級品。さらにここは人気の伊藤若冲の作品もいくつか持っているので他の美術館が主催する展覧会からも引っ張りだこである。

日本橋高島屋ではここの所蔵品が多く出た“神坂雪佳展”(5/24~6/5)をやっていた。神坂雪佳(かみさかせっか、1866~1942)は京都の人で、明治から昭和初期にかけて、美術工芸の分野において琳派様式を復興させ、独自の装飾美を生み出した偉大な工芸デザイナー。

東近美で回顧展が開催されたり、“琳派展”や“日本のアールヌーボー展”にも右の代表作、“百々世草”(ももよぐさ)が出品されたりしたので、だんだん美術ファンの目にふれる機会が多くなってきた。今回は細見美の所蔵する自慢の雪佳コレクションが沢山出品されていた。

絵画だけでなく、染織、漆器、陶芸、図案にみられる抜群の色彩感覚とあたたかみのある造形は観るものの心を和ませてくれる。絵画では、琳派風の流水やたらし込みの土坡のなかに紫陽花、立葵、桔梗の花などを咲かせた“叢華殿襖絵”、色彩が綺麗でとても品がある“四季草花図屏風”に魅せられた。“十二ヶ月草花図”や“白梅図”、“椿にすみれ図”には中村芳中(ほうちゅう)の影響を受けた幹のたらし込みや丸っこい造形がみられるが、大胆なトリミングによる画面構成、洒落た色使いは雪佳独自の表現方法である。

琳派の装飾性にくわえ、文人画のユーモアやあったかさをとり込んだ中村芳中の画風イメージと重なるのが図案集の“百々世草”。全60図のうち16図が展示されていた。右はその一つ“狗児”(くじ)。見てるとほんわかする絵である。太い輪郭線で横向きに描かれた白の子犬は小さなカタツムリを眺めている。なんとも優しい目。トリミングされた竹の木の間からこっちを見ている茶色の犬も愛らしい。円山応挙が描くリアルな子犬(拙ブログ06/1/2)にも和むが、雪佳の図案化された子犬に深い愛着をおぼえる。

この図案集はどれもこれも魅力一杯。大きな波に隠れる月の“立波”、水車の向こうに体半分を見せている“白鷺”などに惹きつけられる。今回は出ていなかったが、薄ピンク、黄色、緑の組み合わせに天性のカラリストを感じさせる“春の田面”、はっとさせる構図の“引舟”、地べたに座る黒い牛と笛を吹く童子を描いた“牧童”にもグッとくる。満足度200%の展覧会であった。

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コメント

こんにちは
昨日京都市美術館で雪佳の工芸品など数点見てきました。
やっぱりいいです。すてき。
シャープさはないですが、もっちゃりした可愛らしさがあります。
粋。イキではなく、スイ。
これだと思います。

どうもいづつやさんとわたしのぱそは相性がよくなくてTB出来ないのがザンネンです。

投稿: 遊行七恵 | 2006.06.18 18:27

to 遊行七恵さん
パソコンも調子の悪いときがありますね。TB操作をしていただいてるのに申し
訳ないです。

雪佳は中村芳中の絵が好きだったのでしょうね。芳中の丸っこい形、あた
たかさを受け継ぎ、雪佳独自の近代感覚に溢れた図案をつくりました。
琳派を進化させたSEKKAワールドもこれから人気がでるでしょうね。京都
市美術館の工芸品をいつか見てみたいです。

投稿: いづつや | 2006.06.18 23:04

雪佳の展覧会は日本橋三越ではなく高島屋でしたね、いづつやさん。
外国で日本人一人の回顧展が開かれるのは珍しいとか、外国人によって再発見された画家ですね。
ところで「百百世草」のどんな点が外国人の目に留まったのでしょうか、いづつやさんはどう考えられます?

投稿: oki | 2006.06.19 13:59

to okiさん
日本橋高島屋の間違いでした。ご指摘有難うございます。雪佳は光琳
模様をベースをして独自の図案をつくりましたが、中村芳中の“光琳
画譜”がワンクッション入ってます。“百々世草”には芳中の丸っこい
造形とあったかさがそのままダブりますね。

では、芳中にないものは何かといえば、色彩と構図です。エルメスの
会長の目をとらえたのはカラリスト、雪佳の上品な色使いではないかと
にらんでます。“春の田面”の黄色、ピンク、薄緑、薄土色なんかエルメス
好みの色ではないでしょうか。

もう一つは構図ですね。これは北斎よりは広重の大胆な構図を思い出し
ます。浮世絵愛好家の多いフランス人が“樵夫”や“白鷺”をみるとググッ
とくるにちがいありません。

投稿: いづつや | 2006.06.19 17:25

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