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2006.06.28

ジャコメッティ展

545葉山にある神奈川県近美で今、“ジャコメッティ展”が行われている(7/30まで)。

ジャコメッティといえば、すぐあの超細長い人物のブロンズ彫刻が頭に浮かぶ。そのぐらい、この彫刻家の作風は世間一般には知れ渡っている。

ジャコメッティの作品のイメージができあがったのはNYのMoMA、グッゲンハイム、パリのポンピドーセンターでの鑑賞によるものだが、つい最近訪れたローマの国立近代美術館にあったジャコメッティには驚いた。

数は一番多く10点ちかくあり、しかも、ほかの美術館が所蔵する作品より人物の背が一段と高いのである。今年日本で開催される展覧会ではこのジャコメッティ展に注目していたので、ローマでの思わぬ遭遇は丁度いい目慣らしになった。

今回はジャコメッティ財団が所蔵する彫刻、肖像画と国内の美術館にある作品で構成されている。そして、単なるジャコメッティ展とちがう特別の味付けが展覧会の価値を高めている。それはジャコメッティが親しくつきあっていた哲学者、矢内原伊作をモデルにつかって制作した肖像画や彫刻作品を多く展示していること。これまで、ジャコメッティのグレーや黄褐色の色調で描いたちょっと幽霊のような肖像画になぜ矢内原という日本人が登場するのか不思議に思っていたが、ようやく理解できた。

“半身像、全身像のヤナイハラ”の油彩が9点、半身の石膏像“ヤナイハラ”が2点ある。矢内原以外の肖像彫刻の場合、顔は極端に細長く、耳がなかったり、髪もふさふさしてなかったりするのに、この“ヤナイハラ”は目、鼻、口、耳どれもきっちりリアルに表現され、実に立派な肖像彫刻につくられている。ジャコメッティは元来西洋人と較べると彫りの浅い日本人の顔立ちを縦に長くしては、敬愛する矢内原の肖像が造形的につまらないものになってしまうと思ったのかもしれない。

弟のディエゴでも妻のアネットでも、普通の顔の半分くらいしかない細顔のブロンズや石膏像は正面からみるとすごく違和感があるのに、真横からみるとどれも美しいフォルムになっている。右の“ヴェニスの女Ⅰ”(大原美術館)の正面向きのポーズは両手の先が腰のところにくっつき、胴体との間にできる空間のほかはこれといって面白い形ではないが、横にまわると高い鼻、唇と顎のつながりはまさに生ある女性の顔そのものに見える。体全体は細い棒のようにつくられてるのに足だけは馬鹿デカイ。孤立したはかなげな人間ではあるが、それでも生きていかなければならない現実をこの大きな足で表現しているのであろうか。

なお、この展覧会は葉山のあと次の美術館を巡回する。
 ・兵庫県立美術館:8/8~10/1
 ・川村記念美術館:10/10~12/3

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コメント

葉山で観たかったジャコメッティ、やっと川村記念美術館で観ました
良い展覧会で、葉山でも観たかったですね
カタログが今ひとつだったのが残念です

投稿: えみ丸 | 2006.11.09 13:02

to えみ丸さん
ご無沙汰してます。北海道旅行で返事が遅れました。
申し訳ありません。川村記念美で今、ジャコメッティ展
をやっているのですね。意外にもジャコメッティの回顧
展ははじめてでしたが、いい思い出になる展覧会でした。

投稿: いづつや | 2006.11.12 07:55

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