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2006.06.19

大倉集古館の随身庭騎絵巻

411大倉集古館の“男の美術展”(6/3~7/30)は変ったネーミングの展覧会。

03年に奈良博で“女性と仏教展”というのがあったが、この展覧会のキーワードは“男の中の男”。日本美術に現れた男の諸相を宮廷貴族、武者、宗教者などの肖像から読みとろうとする切り口が面白い。

例によって作品数は多くないが、今回のお目当ては“国宝 随身庭騎絵巻”(ずいしんていき)。これを観るのは2度目。絵巻が制作されたのは鎌倉時代、13世紀の中頃である。随身は貴族が外出する際に警護にあたった近衛府の官人。今でいうボディーガード。だが、主人の安全を確保するために体を張っているだけではない。騎馬が巧みなだけではダメで、教養があり、和歌のひとつも詠め、主人の相手を務められる者が選ばれた。もうひとつ容貌はイケ面がよしとされた。

この絵巻に登場する9人の随身は実在の人物。最初にでてくる3人は後白河院(1127~1192)、次の6人は後嵯峨院(1220~1272)につかえた。右の二人のうち力士のように太っているのが後白河院の随身。そして、左が後嵯峨院の随身の一人。この絵は肖像画の一つであるが、対象となる人物に似せて描く似絵(にせえ)の方法で描かれた。以前の肖像画の多くは理想的に描かれているのにたいし、この頃から写生風の肖像画になった。だから、似絵で描かれることを嫌がった者も当然いた。

太った随身はどんな気分だったかわからないが、後白河院のころは美貌よりは腕力や武力が求められていたのかもしれない。これに較べると左の後嵯峨院の随身はなかなかいい男。垂直になるくらい後ろ立ちになった馬を眉をひそめながら、軽く手綱を絞っていなしている姿が凛々しい。が、描線を主体とした白描の手法で随身の騎乗場面を描いたこの絵巻の一番の見所は男よりは馬。後ろ足を大きくはねあげ、随身を振り落とそうとする馬、体を左右にねじっている馬、馬術競技で障害物を飛び越すときのような美しい姿で描かれた馬。見事な描写に感嘆させられる。

馬の力強さ、荒々しさを躍動感いっぱいに描いた日本画がもう二つある。共に13世紀後半に制作された“平治物語絵巻”(国宝、東博、拙ブログ06/2/20)と“蒙古襲来絵詞”(三の丸尚蔵館)。“平治物語絵巻”で軍馬の迫力ある動きを夢中になってみたが、今回も元気よく飛び跳ねる馬に魅せられた。次のターゲットはは99年の“皇室の名宝展”ではじめて見た“蒙古来襲絵詞”の竹崎季長が騎乗する黒い馬。いつ実現するだろうか?

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