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2006.06.25

松涛美術館の骨董誕生展

417日本民藝館へ行ったあとはよく、松涛美術館に寄る。井の頭線の神泉駅からの道巡に迷うこともなくなった。

ここで今、開館25年を記念した特別展“骨董誕生ー日本が愛した古器物の系譜”が行われている(7/9まで)。骨董屋に足を運ぶ習慣がないので、古美術の相場とかどんな作品がおいてあるのか詳しくない。

自分の家に飾るためにこれらを買い求める骨董愛好家でないかぎり、こういう店には縁がないであろう。TV東京の人気番組“なんでも鑑定団”で、“俺は目利きだ!”と自信満々の男性が持ち込んだ美術品をすごく安く鑑定され、しょぼんとして帰るシーンを何回見たことか。たまに、何の気なしに買ったものが予想以上の高値がつき大喜びという人もいる。世の中に骨董屋は沢山あるだろうから、信用のおける店、ちょっといかがわしい店、色々だろう。

今回でているのはもちろん質の高い骨董品。数奇者とか上級コレクターと呼ばれた美を見る確かな眼をもった愛好家の集めたものが李朝や日本の陶磁器などを中心に170点くらい展示してある。記念展なのでブランド美術館の所蔵品も多い。東博からは平常展でよくみる横河民輔旧蔵“豆彩龍文壷”、原三渓旧蔵“信楽袋形水指”、“伊賀耳付花入”など。永青文庫からは細川家伝来の“刷毛目茶碗・残雪”がある。また、益田鈍翁が持っていた“蒔絵厨子扉”など4点にも足がとまる。

ここで一番の収穫は青山二郎(1901~1975)が蒐集した骨董品を観れたことである。青山二郎の名前は知っているが、著作を読んだことがないので、何で有名なのかわからなかった。展示室の解説には“近代骨董”の生みの親とある。で、西洋アンティークや骨董品を集めている友人が“青山二郎と白洲正子の本を読め”とアドバイスしてくれた意味がやっと腹にすとんと落ちた。

青山は民藝の柳宗悦とも接点があり、“日本民藝美術館設立趣意書”の表紙に青山所蔵の“染付羊歯文切立湯呑”が使われている。青山所蔵の9点は流石と思わせる名品ぞろい。青山も柳同様、李朝工芸の美の虜になったようで、形のいい“白磁長壷”と“粉引徳利・酔胡”に心を揺すぶられる。右は“唐津盃・虫歯”。下のほうが横に歪み、歯痛で腫れた顔のようにみえる。まさにぴったりのネーミングである。とてもいいものを観た。

青山二郎は同世代の小林秀雄らとともにサークルをつくって、古器物の“味もの”を蒐集した。“味もの”とは形の歪みや色ムラといった味(景色)に美しさが感じられるものをいう。バランスがとれたものとか完璧な形や色から生まれる美よりも、自然の風合いがそのままでた“味もの”を選び抜いて蒐集し、そこに自己を表現した。“近代骨董”の誕生である。これまで柳宗悦の民藝に鑑賞のエネルギーを割いてきたが、これからは少し青山二郎や白洲正子のコレクションにも目を向けようと思う。

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コメント

面白い展覧会でしたね。
民藝館の柳は酒を飲まなかったのに青山は大の酒好き。
柳も酒を飲んでいれば民藝運動の展開も変わっていたかもしれませんね。
ところでいづつやさんは二階に展示されていた現代の数寄もののコレクションはどう御覧になったのでしょう?
ともあれこの美術館はどんな展覧会も三百円で入れる。
僕のお気に入りです。

投稿: oki | 2006.06.26 15:25

to okiさん
骨董の展覧会なので陶磁器や小さな工芸品などがごちゃごちゃあるのかな
というイメージで入館したのですが、ハイレベルの骨董品でした。青山二郎
は陶磁器の目利きだったのですね。柳VS青山という、大物コレクターだった
ことをはじめて知りました。コピーライターの仲畑貴志もいい李朝工芸を蒐集し
ていますね。へえー、有名な骨董コレクターだったのか!という感じです。

私は情報や文化記号というソフトのコレクターですが、いまのところ陶磁器、
絵画などハードとしての美術品やなにか好みのものを集めるという趣味はあり
ません。クラシックのCDを沢山持っていたのですが、ビデオを収録するように
なり、全部処分しちゃいました。このビデオも数が増えすぎたので総数管理を
し、見る頻度の少ないものは消してます。また、本もよく読みますが、本棚から
あふれるようになると、燃えるゴミにだします。

投稿: いづつや | 2006.06.26 16:32

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