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2006.06.18

伊藤若冲の動植綵絵 その三

410_1若冲の動植綵絵の展示(三の丸尚蔵館)は現在、第3期に入っている(6/3~7/2)。

全30点のうち18点が登場したので、はじめてこの傑作を見る人も筋金入りの奇想派愛好家も、今はほかの絵師とは一味も二味もちがう若冲ワールドへ全開でのめり込んでる最中ではないだろうか。

では、その感動を長く持続させるかにはどうしたらいいか。会場を離れると、どうしても記憶は時間の経過と共に薄れてくる。これは仕方がない。となると展示してあった作品を絵葉書か図録で眺め続けるしかない。美術館で鑑賞した後は1週間くらい図録を身近なところに置いて、図版を見ることにしている。美術評論家や学芸員の論考、最後にくっついてる作品の説明書きは読まず、気に入った絵をひたすら見る。普通の絵師の場合、これで作品から受けた衝撃や感動は体の中に浸み込む。が、若冲の絵に関してはこれでは大きな感動は体の隅々までいきわたらない。

なぜか、それは絵全体の図版だと若冲が心血を注いで描いた細部がわからないからである。それで市販の若冲本、例えば、狩野博幸著“目をみはる伊藤若冲の動植綵絵”(小学館、アートセレクション)などでは随所に“部分図”で細部を思いっきり拡大して見せている。これだと展示場で目を凝らしてみて、“こんなところまで丁寧に描いてる、凄い!”と思わず口にした鑑賞体験が蘇ってくる。理想を言えば、本画全体の図版があって、それと2,3点の部分図がセットになっていると申し分ないのだが。でも、これはコストがかかりすぎて値段が高くなるので無理。

今回の図録は“動植綵絵”と“花鳥”の2つあるが、“動植綵絵”には部分図は論考に一部使われてるだけ。むしろ“花鳥”のほうに細部にフォーカスした部分図が多く出ている。右は3期に出品された6点のうちの一つ、“梅花小禽図”の部分図。これぞ若冲ワールド!全体図では見えないつぼみの下の赤。そして、くらげみたいに透き通った白い花弁や茶せんを思わせる上に伸びる白の線と黄色の点々。一枚の絵として図版におさまっているときは、海底に生えてる海草から気泡が連続して出ているように見えるのに、再接近してみるとこんな色鮮やかで美しい花鳥画の世界が画面一杯に描かれていた。

残りの5点は“秋塘群雀図”、“紫陽花双鶏図”、“老松鸚鵡図”、“芦鵞図”、“蓮池遊魚図”。細部に若冲の技が隠されているのが“蓮池遊魚図”での蓮の描写。太い葉脈からさらに細かい線が横に無数にでている。それが屋根にように描かれているので蓮が立体的にみえた。一番下で泳ぐ魚は腹が薄ピンクの別種で、上の9匹にくらべるとカッコよく表現されている。

3期でのお目当ての白は“老松鸚鵡図”。群青とアクセントになった赤が目に焼きつくインコを見ている2羽の鸚鵡は目の前にいるのではと錯覚するほどの実在感がある。レース地をおもわせる滑らかな羽根の質感が見事にでた印象深い鸚鵡だった。

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コメント

こんにちは。
仰る通り実物見ないと駄目ですね。若冲は特に。
実物を見ても見逃してしまったりもしています。

今はプライス展をどう攻略するか計画中です。

投稿: Tak | 2006.06.24 11:27

to Takさん
動植綵絵も残り12幅ですね。4期の展示では傑作、“旭日鳳凰図”が登場
しましので、今からワクワクしてます。そして、いよいよ7/4からプライ
スコレクション展ですね。

いいタイミングで三の丸尚蔵館が若冲の最高傑作を公開してくれたので、
プライス氏ご自慢の若冲コレクションをより深く鑑賞できるような気がします。
美術館も自分たちの企画展だけで完結しないで、こういうコラボレーション
を意識してやって欲しいですね。これでTakさんのような若冲通がかなり増
えるのではないかと思います。

投稿: いづつや | 2006.06.24 18:23

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受信: 2006.07.11 00:57

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