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2006.06.20

ダヴィッドのナポレオン騎馬像

4126/18(日)まで江戸東京博物館で開催していた“ナポレオンとヴェルサイユ展”は美術の本に必ず載っている新古典派のダヴィッドやグロの作品がでてたので、どうしてもはずせなかった。

具体的には、ダヴィッドが描いた右の“サン・ベルナール山からアルプスを越えるボナパルト”、“マラの死”、グロの“アルコル橋のボナパルト将軍”、そしてジェラールの“戴冠式の正装の皇帝ナポレオン”。

“マラの死”については昨年から立て続けに3点観た。05年4月、ベルギー王立美術館でオリジナル、6月に横浜美術館であった“ルーヴル美術館展”でレプリカ、今回、ヴェルサイユ宮殿美術館が所蔵するレプリカ。ジェラールのナポレオンの肖像画にもレプリカがいくつか制作されたようで、ルーヴル美展にも今回とそっくりのが飾ってあった。

ヴェルサイユ宮殿にあるのがオリジナルといっても画家本人がまた描くのだから、仕上がりの質が落ちることはない。皇帝ナポレオンの威厳とカリスマ性を存分に表した肖像画の傑作である。ナポレオンが身につけた衣装は絢爛豪華。赤紫の生地に白貂の毛皮をあしらい、黄金の糸で皇帝の紋章の蜜蜂が刺繍されている。こういう肖像画をみると、油彩画はつくづくいいなと思う。ナポレオンの自信にあふれる顔の表情や冠、衣装に使われた黄金の輝く質感は油絵の具でないと出せない。

白描による“随身庭騎図”に描かれた日本の騎馬像に対し、西洋画でも同じような馬のポーズをしているのが右のダヴィッド作、ナポレオン騎馬像。男前の随身が御する馬は荒々しく、その目はふてぶてしく描かれている。が、ナポレオンがこちらに視線をむけ、右手を上にあげて騎乗する愛馬は鬣と尾っぽを風で前にたなびかせ、美しい後ろ立ちの姿をみせている。この“サン・ベルナール山からアルプスを越えるボナパルト”はマルメゾン国立美術館にある作品(1801年)がオリジナルで、これはその後制作されたヴァージョンの一つ(1803年)。

ナポレオンの騎馬像の背景で険しい峠を登っていく兵士たちの姿は岩や馬の前足で一部を隠し、あまり目立たないように描かれており、観る者の目が自然に騎乗する勇ましいナポレオンと美しい馬にいくように構成されている。実際のアルプス越えは悪路に強いラバにまたがって進軍したのだが、誰だってラバに乗ったナポレオンはみたくない。ナポレオンの肖像画に大きなパワーをもたせるためには創作が不可欠。こういうとき絵画は役に立つ。ダヴィッドはそのあたりはよく心得ており、立派な肖像画に仕上げた。

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