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2006.06.08

竹久夢二の五月の朝

400長野美術館めぐりのあと、草津温泉で一泊し、翌日伊香保温泉にある竹久夢二記念館を再訪した。今回は右の“五月の朝”をみるため。

2年前観た“黒船屋”とこの“五月の朝”は美術館が所蔵する夢二の作品のなかでは特別扱いになっており、鑑賞するためには事前の予約が要る。

日本の美術館で予約(日時)制で絵を公開しているのはここだけではなかろうか。2点以外は予約の必要はなく、展示替えはあるがいつ行っても見られる。“五月の朝”は例年5月、“黒船屋”は9月に公開される。1995年、新館“夢二黒船館”が建設され、3階に“黒船屋”のための特別の部屋がつくられた。この畳の部屋の正面に軸装となった“黒船屋”と“五月の朝”が掛けられる。

前回座敷に座って学芸員の方の説明を聞きながら、念願の“黒船屋”と向かい合ったときは大変感動した。そして、今回は“五月の朝”。しばらく言葉が出ない。“黒船屋”と“五月の朝”は夢二の美人画のなかでは飛びぬけていい。このようにガラス越しでなく真近でみると、本当に心をゆすぶられる。

この絵は夢二がはじめて外遊したアメリカで1932年に制作された。夢二はその年49歳、亡くなる2年前である。画題は“西鶴五人女の中の吉祥寺のお七”。目が大きいのが夢二式美人の特徴だが、この絵はアメリカの女性をモデルに使ったためか、睫がさらにパッチリしている。なんといっても色使いの素晴らしさに“うわー”となる。濃いピンクの帯や橙色の着物が抜けるような白い顔や手をした女性のエキゾチックな美しさを一層惹き立てている。下地窓からみえるのは五月晴れの青い空と緑の若葉。縁側に置かれた画帖に挟んである葉っぱは女性が窓からその白い手をそっと出し、もぎ取ったものであろうか。

夢二はアメリカから欧州に行く際、この絵をお世話になった在留邦人ジャーナリストの坂井米夫氏に贈っている。第二次世界大戦のとき、収容所キャンプに入れられた坂井氏は絵が没収されないように額をはずし、巻いて隠していたという。1989年朝日新聞社が主催した“昭和の日本画100選”にこの画が選ばれたとき(夢二の絵はこの1点、黒船屋は大正時代に描かれたので対象外)、一度だけ美術館から離れ、展覧会に出品された。夢二の名画中の名画、2点を見ることができ、これほど嬉しいことはない。これで代表作はほとんど鑑賞したことになるので、一休みできる。

夢二の展覧会情報をひとつ。千葉市美術館で来年1/20~2/25に“竹久夢二展”が開催される。200点でるらしいので今から楽しみ。なお、夢二については拙ブログ05/1/16で取り上げた。

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コメント

こんにちは

わたしは本郷の弥生美術館の会員ですので、併設の夢二美術館も楽しんでおります。
伊香保の夢二記念館では、童画のほうに感銘を受けました。
故郷の岡山と、そして金沢にも夢二の美術館がありますが、夢二が愛されて、各地にこうした美術館があるのは嬉しいです。

投稿: 遊行七恵 | 2006.06.09 11:18

to 遊行七恵さん
こんばんは。本郷の夢二美術館には2回行きました。振り返る女性を描いた
“水竹居”にぞっこんです。岡山の記念館(岡山市と牛窓町)にも足を運
びましたが、金沢にもあるというのは知りませんでした。HPを開いてみます。

投稿: いづつや | 2006.06.09 19:05

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