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2006.06.09

菊池契月の少女

401日本画家、菊池契月(1879~1955)が生まれたのは美人画で有名な鏑木清方とほぼ同じ頃。生地は信州の中野というところである(現在の長野県中野市)。

長野市の上のほうで、近くに志賀高原がある。ここへ行ったことはないが、5,6年前小布施から金沢を目指すとき走った上信越自動車道に信州中野というICがあった。

菊池契月の没後50年を記念した回顧展が長野県信濃美術館で開かれていた(4/22~5/28)ので、加山又造展とセットで観てきた。代表作がほとんど出ている本画76点と写生帖が展示されていた。日頃、菊池契月の作品を鑑賞する機会があるのは東近美の平常展。今回ここから出品された5点のうち、歴史的逸話を画題にした“供燈”、白描画“涅歯”(はぐろめ)、働く女性を描いた“麦挋”はここ1年くらいの間に見たのでよく覚えている。

このほか過去見て印象深かった絵に再会できた。それは代表作中の代表作、“南波照間”(はいはてろま、京都市美蔵)。この絵は“昭和の日本画100選”(1989年、朝日新聞社)に選ばれている。ここに描かれた琉球地方に住む2人の女性をはじめて見たとき、その静かで気品のある表情に圧倒された。今回も紅型の着物を身にまとい、袖からでた白い手を体の真ん中で合わせ、正面をみている左側の女性の立ち姿に魅了された。手前の女性を大きく、後ろの風景にいる人物を中景、遠景でだんだん小さく描く構成が見事である。そして、一ノ谷の合戦で敗れ、熊谷次郎直実に首を刎ねられる美少年、平敦盛を描いた“敦盛”(京都市美)にも足がとまる。笛の名手だった敦盛がここで右手に持っているのは経巻。

この回顧展で一番の収穫は右の“少女”に会えたことである。菊池は歴史的な女性(例えば北政所)や平安時代の女房などを肖像画風に沢山描いたが、同時代の若い女性画はこの絵を含めて4点しかない。今回、その“少女”、“友禅の少女”、“散策”(すべて京都市美蔵)の3点だけはひとつの部屋に展示されていた。なかでもグッとくるのが“少女”。これまで多くの女性画を見てきたが、腰を床におろし、横向きのポーズでこちらを見ている女性はみたことがない。変則三角形の安定した構図が見る者を心地よくする。ちょっと冷たい感じにもみえるが、気品があり、知的なイメージのほうが強く印象に残る。この名画を早速My女性画に登録した。

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コメント

この絵、私も大好きです。京都市美術館で見て一目ぼれです。この絵と、秋野不矩の「紅裳」のために「名品百選」の図録を買ったくらいです。着物の絵付け師のように丹念に柄が描かれていたのが特に印象的でした。

投稿: リセ | 2006.06.09 23:11

おはようございます。
信濃で契月の展覧会が開催されているのはチラシで見て知っておりました。
わたしも契月好きです。
関西におりますと、契月に触れることが多いので、いづつやさんが契月の少女を褒められると、なんだかわたしまで嬉しくなります。
あの名品百選は確かにアンソロジーとしてはすばらしい本だと思います。あそこに昨日の夢二『五月の朝』もありますね。
それから契月の少女についてとても素敵な論考がありますので、ご紹介したいと思います。
http://blog.goo.ne.jp/tetsu-t0821/e/e9113fbd4d34ac263d2a03723168d94f
てつさんという方の契月の少女へのオマージュです。

去年、京都市美術館で契月の少女たちの展覧会があり、そのとき少女が誰であるかを初めて知りました。

投稿: 遊行七恵 | 2006.06.10 07:41

to リセさん
長野美術館めぐりは充実してました。菊池契月の絵を京都市美術館は沢山
もっていますね。女性画三部作ははじめて観ました。3点並べて展示してあ
ったので、じっくり鑑賞しました。なかでも“少女”がいいですね。チラシ
をみて、惹きつけられたのですが、予想以上の名画でした。

投稿: いづつや | 2006.06.10 17:13

to 遊行七恵さん
京都市美術館にこれほど菊池契月の名画があるとは知りませんでした。
お気に入りの“南波照間”や“敦盛”のほかにも、“少女”や晩年に描いた
黒い馬の絵のような名画があったんですね。大変満足してます。

また、追っかけていた京近美の“朝爽”にも会えましたので言うことありま
せん。晩年になるほど線描が冴えてますね。その高い画技に驚かされ
ます。てつさんの情報有難うございました。

投稿: いづつや | 2006.06.10 17:55

近代日本画に御精通の事感服いたしました。初めてで恐縮ですが、菊池先生の第4の少女の所在の美術館ご存知でしたらご教示お願い申しあげます。また少女と銘銘された作品が在りましたらその美術館も教えてください。宜しくお願い申しあげます。私も是非鑑賞します。

投稿: 中野 茂 | 2008.01.14 09:51

to 中野茂さん
はじめまして。書き込み有難うございます。

契月が描いた4つ目の“少女”は題名が“生暖”で
現在、韓国国立中央博物館にあります。ちょっと
遠いですね。

“少女”という名前がついた絵には次のよう
なのがあります。ご参考になさってください。

★“少女”小倉遊亀 滋賀県立近代美術館
★“蛇の目草をもつ女” 小倉遊亀 ウッドワン美術館
★“朝涼”鏑木清方 鏑木清方記念館(拙ブログ05/8/17)
★“茶壷と少女” 竹久夢二 夢二郷土美術館
★“花と少女”、“鳥と少女”東郷青児 損保ジャパン美
★“孫” 安井曽太郎 大原美術館
★“春の少女” 有元利夫 個人蔵
 

投稿: いづつや | 2008.01.14 13:40

誠にありがとうございました。韓国に飛びたくなりました。長野、京都が所縁の地なのに如何してですか。またご教示お願いいたします。知りたくなりました。菊池先生の才気煥発は言葉どうり眩しいものがあります。少女も輝いています。韓国の少女の輝きも楽しみです。またご提示いただいた作品についても順次鑑賞いたしたく思います。菊池先生の第5の少女探しもしてみますのでご迷惑でしようがまた連絡いたしたくお願い申しあげます。

投稿: 中野 茂 | 2008.01.14 14:32

to 中野茂さん
菊池契月が描いた同時代の若い女性画は上で
書きましたように四点しかありません。その一点
が韓国に渡った経緯はちょっとわかりません。

他の女性画は歴史上の人物(北政所)とか着物
を着たいわゆる美人画です。ご参考までに。

投稿: いづつや | 2008.01.14 16:26

ありがとうございました。体育座りの少女より8-9才若い玩具遊びをしている作品の話を聞いた事がありますので確認いたします。写真を送信する方法がわかりませんので教えてください。4少女の1人の幼い時のものと愚考いたします。

投稿: 中野 茂 | 2008.01.14 20:26

to 中野茂さん
写真はお気持ちだけいただかせてもらいます。

投稿: いづつや | 2008.01.14 23:19

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