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2006.06.07

東山魁夷の白馬の森

3991ヶ月くらい前、長野市の善光寺近くにある東山魁夷館を訪問した。

長野までクルマを走らせた直接の理由は水野美術館で開催されていた(4/15~5/14)“加山又造展”をみるため。一度神戸展を観て、満ち足りた気分なのだが、長野展だけに展示される名画があるとどうしても追っかけたくなる。

洋画とちがって、日本画の場合、前期、後期とか会場によって展示作品が一部変るのが悩みの種。京都の美術館だともうすぱっと諦めるのだが、長野市には東山魁夷館があるのとタイミングよく同じ敷地にある長野県信濃美術館で“菊池契月展”もやっていたので、迷わず出かけることにした。

04年4月、兵庫県美であった大回顧展では展示替えのため、東山魁夷館蔵のいい作品をかなり見逃したので、前々からこの美術館には行こうと思っていた。ここは東山が1970年から晩年に制作した作品を所蔵している。テーマを設定し、およそ2ヶ月に一度のペースで展示替えを行っているという。今回のテーマは“花明り”(3/30~5/30)。本画、習作、スケッチなど60点あまりが展示してあった。神戸でみれなかった作品の何点かがリカバリーできたのでとても気分がいい。3回くらいで所蔵品は観終わるような気がしてきた。

ここには馬を描いた有名な絵が2点ある。右の“白馬の森”(1972)と“緑響く”(1982)。過去2回、回顧展をみたので2点とも鑑賞済みであるが、“緑響く”は一時期、コピーを部屋に飾っていた。緑一色の木々と白馬が水面に映る倒影の構図はとてもモダンで、洋画を観る感覚でいつも眺めていた。今回でていた“白馬の森”はメルヘンチックな絵。風景画のなかに白い馬がでてくる最初の絵で、この馬をモティーフにした作品を東山は18点描いている。白馬は群青の光に照らされた森の真中あたりに凛として立っており、生き物のような木々と白馬が一体となって醸し出す幻想的な雰囲気には容易に入っていけそうにない。遠くからそっとこの美しい風景をみていようという気持ちにさせられる。

自然から感じ取った心象風景を青や緑で表した東山の風景画はわかりやすく、素直に“いいなあ”と感じることが多い。絵に品があるのに、芸術家ぶってないところがこの画家の一番の魅力。東山魁夷の図録を眺めていると、高原のひんやりした空気とか爽やかな風を無性に感じたくなるのは東山の絵に観る者の心をゆすぶる力があるから。国民画家の称号がぴったりの画家である。

現在、東山魁夷の作品は東近美の平常展に“残照”(7/30まで)、山種美の“緑雨の景観展”に“緑潤う”(6/25まで)がでている。ご参考までに。

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コメント

いづつやさん、お久しぶりです。降りみ降らずみの日が続いておりますが、お変わりございませんか。
驚きました、本日ちょうどブラジリエと東山魁夷画伯の連作「白い馬の見える風景」について記事をアップしたばかり‥ 記事を投稿する前にこちらを拝見したかったです! フランスのブラジリエと画伯に親交があったことを最近知りました。たしかに、両者のブルーとグリーンは共鳴し合っています。青水無月にふさわしい湿潤な色。画伯がモーツァルトを愛し、また晩年に夫人とザルツブルクを訪れていることも知り、軽やかな白馬の足音とそのゆくえを聞いたような気がいたします。
山種美術館の招待券をいただいたので、さっそく見にでかけますね ^^

投稿: 雪月花 | 2006.06.08 19:56

to 雪月花さん
中欧を旅行されてたのですね。念願の東山魁夷館に行ってきました。
運よく、“白馬の森”も出品されてました。ブラジリエの絵ははじめ
て観たのですが、魁夷の白馬の絵と響きあってますね。ブラジリエの絵
にも倒影の構図が使われてますし。情報有難うございます。ブラジリエ
という画家に興味が涌いてきました。

投稿: いづつや | 2006.06.08 23:43

こんにちは
東山魁夷館に行かれたのですね 魁夷いいですよね
特に私は魁夷の蒼が好きです 
気持ちの奥の方がしんとなる感じがして 

昔訪れたときに買った「コンコルド広場の椅子」というポストカードはとても気にいっていて今でも大切に使っています(あんまり気に入っているので中々使えないのですが・笑)

投稿: muha | 2006.06.09 23:22

to muhaさん
東山魁夷の風景画が好きなものですから、長野の記念館はいつか訪ねよう
と前々から思ってました。今回は加山又造展が近くの水野美術館であり
ましたから、いい機会とばかりに長野までクルマを走らせました。

魁夷が描く山や海、京都の町をみていると肩の力が抜けほっとしますね。
日本人の情感をゆすぶる魁夷と広重の絵とは一生つきあっていこうと思って
ます。

投稿: いづつや | 2006.06.10 17:38

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» ブラジリエの青 [雪月花 季節を感じて]
   青水無月の風光に響き合う美しい絵画のお話です。  アンドレ・ブラジリエ(1929年〜)というフランスの画家がいます。この画家の絵との出合いはいつだったのか、もう忘れてしまったけれど、ずいぶん前から好んで鑑賞しています。  特徴はご覧のとおり、大胆な構図にやわらかなフォルム、鮮やかなブルーとグリーン、草原の風を感じる詩的な作風です。題材は馬(あるいは乗馬)、音楽、そして奥さまのシャンタル夫人を描いたもの�... [続きを読む]

受信: 2006.06.08 19:55

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