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2006.06.23

狩野典信の唐子遊図屏風

415本のタイトルは売れ行きに大きく影響するので、著者と出版社の担当はこれに随分神経をつかうという。

展覧会でも同じことが言える。ドキッとしたり、面白いネーミングがついてると足を運んでみようかなという気になる。6/25まで、板橋区立美術館で開催している“これが板橋の狩野派だ”という館の意気込みがストレートに伝わってくるタイトルに誘われて、出かけてみた。

ここははじめての美術館。都営地下鉄・三田線“西高島平駅”(終点)から歩いて15分くらいかかった。地図で確認してないので、この辺が池袋からどっちの方角なのか皆目わからない。HPでプリントした地図を片手に、首都高速5号線を左上に見ながら進むと公園が見え、そのなかに美術館があった。

どうでもいいことだが、途中、大きな声でぶつぶつ言ってる酔っ払い爺さんとすれ違った。その横を通りすぎるパトカーの警察官も呆れたようにニヤニヤしながら顔をみあわせている。“しょうがねえなあー、あの爺さん、昼間から出来上がっちゃってるよ!”。こちらはからまれないように急ぎ足になった。

この展覧会の事前情報は全くなかったが、展示リストをみて、後悔した。4/15からはじまっていて、すでに後期(5/23~6/25)に入っていた。04年10月、平凡社から刊行された“別冊太陽 狩野派決定版”により、この美術館が江戸狩野派の絵を沢山所蔵していることは知っていたが、これらを公開した特別展を2,3年前開催したはずだから、今回、作品はあまりでてないだろうと思っていた。これがとんでもない勘違いで、95年の“狩野晴川院養信の全貌”がなぜか混線して特別展でインプットされていた。アチャーである!今回の展覧会がまさにこの美術館がとくに力を入れて収集してきた江戸狩野派作品のお披露目だった。

前期の作品に狩野一信の“源平合戦図屏風”があった。これは観たかった。でも、観終わって購入した図録をみると、前期より後期にいい絵がでていたので救われた。惚れ惚れするようないい絵があった。狩野常信の“四季花鳥図屏風”。これまでみた常信の作品の中で一番魅せられた絵かもしれない。図録の表裏にこれが使われている。目を奪われるのが画面全体のうす灰色と金泥。この配色で描写された力強く上に伸びる松、勢いよく落ちる滝や水の激しい流れ、雪舟風の岩が右から左に配されている。この色彩に一段と映えてるのが、左の木の枝にとまっている錦鶏鳥の鮮やかな赤や橙色の羽根。ここでこれほどの名品に会えるとは思ってもみなかった。

狩野典信(みちのぶ、1730~90)が描いた右の“唐子遊図屏風”(右隻、部分)も目を楽しませてくれた。実は件の狩野派決定版に載ってたこの絵がもしやして見れるかなと期待していたので、非常にいい気分。これは狩野探幽の同名の絵(三の丸尚蔵館)の模写作品。構図はだいたい同じだが、子供の着物の柄などは変えている。最初の二人は鶏を互いに抱えて闘わせようとしている。次は花合わせで遊ぶところ。右にはでてこないが、次の二人は団扇をもって蝶を打ち落とさんと競っている。探幽の描く唐子より典信のほうが顔が相対的に大きく、丸顔。そして一番の違いは笑顔。笑みのこぼれる表情から遊びを心から楽しんでいる様子がよくでている。これが観れたのも大収穫。

横浜からだと遠くのほうへ来た感じだったが、いい絵を鑑賞できたので帰りの足取りは軽かった。

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