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2006.06.04

大岡信コレクションのサム・フランシス

396詩人大岡信の詩を楽しんだことはないが、この人は日曜美術館によく登場するので、顔だけは前から知っている。

息子の大岡玲(芥川賞作家)も過去、この番組の司会をしており、親子揃って美術のことに詳しいなといつも不思議に思っていた。が、その謎が“大岡信コレクション展”(三鷹市美術ギャラリー、4/15~5/28)に足を運んだことで解けた。大岡信は現代美術の大コレクターだったのである。

現代アートが好きな人からは今頃知ったの?と言われそうだが、日本の前衛芸術とか現代絵画への関心が薄く、東近美に展示されてる作家の作品くらいしか見ないので、周回遅れランナーみたいなことがよくある。

でも、最近はここの平常展を定期的に鑑賞し、目が慣れてるせいか、今回出品されていた日本の作家の作品にはだいぶついていけるようになった。大岡信は若い頃から内外の現代美術の最前線にいた作家と親交があり、作家から贈られたり、購入した作品が400点近くもあるという。会場には大岡の高い鑑識眼を窺がわせる一級の絵画、陶器、オブジェ、彫刻などがいくつもあった。

日本の作家では東近美で馴染んでいる菅井汲、加納光於、宇佐美圭司の作品があった。大岡は菅井汲と詩と絵画の実験コレボレーションをしたり、加納や宇佐美らと新しい美術を共に切り開くなど積極的に美術家と関わってきた。昨日は東近美で菅井汲の代表作“朝のオートルート”、宇佐美の“ドーム・内なる外”、加納光於の“波動説”を観たのだが、3人が大岡と親しかったという話を聞いたばかりだったので、注意深く見た。なかでも宇佐美の作品に惹きつけられた。大岡コレクションにあるのは小さい絵で画風がまだ定まっていない感じだったが、この大作“ドーム・内なる外”は未来派を思わせる人体の連続運動を球体の中で立体的に表現する見事な作品に変っていた。

この展覧会で一番見たかったのがサム・フランシスの絵。色鮮やかな作品が4点ある。どれも魅せられるが、お気に入りは右の“大岡の月”。米国人の現代抽象作家のなかでもサム・フランシスの作品にはとくに惹きつけられる。それは抽象画なのに、日本人の心を打つ技法で描かれているから。サムは日本で水墨画や琳派を学んだためか、余白を意識した構成をしたり、ドロッピングの手法を使った彩色で装飾的な絵画空間をつくっている。

この“大岡の月”にみられる真ん中の余白はどうみても東洋美術の影響。ドロッピングによる細かい点の連続は実に繊細で装飾的。そして、左端にあるフォルムは全部を見せず、一部がトリミングされ、上の青い円と右斜め下にある赤い円が対角線で呼応しあう構成がえもいわれぬ抽象美を生み出している。

はじめてみる作品では鴨田しづの“エスパース・コスモの階段”などに足が止まった。現代美術を見る眼を指南してもらったような展覧会で、大きな満足が得られた。

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コメント

サムフランシスといえばいづつやさんはご存知でしょうが、東京都現代美術館の常設展示がだいぶ様変わりして、サムフランシスの部屋がなくなってしまいましたね、これは残念至極!
僕は「ぐるっとパス」で常設だけ見てきました。
いづつやさんも「ぐるっとパス」ですね、三鷹は。
来週から又三鷹は新しい展覧会ですか、あそこはいつ行っても落ち着けますね。

投稿: oki | 2006.06.04 22:27

to okiさん
MOTにあるサム・フランシスの大作、2年前にみましたが、昨年あった
イサム・ノグチ展のときはありませんでしたね。お気に入りだったので、
私も残念に思ってます。三鷹市のギャラリーははじめて行きました。パス券
ですので無料でした。

投稿: いづつや | 2006.06.05 23:34

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