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2006.06.27

三渓園の下村観山展

280原三渓が横浜・本牧にあった自邸を三渓園として広く市民に開放してから100年経つという。これを記念した“下村観山展”(7/2まで)をみるため久しぶりに訪れた。

ここに来たのはもう随分前のことなので、三重塔以外は記憶が蘇ってこない。展覧会料金500円(入園料とは別)を払って入館した。

作品は26点あまりだが、代表作がずらっとある。才能豊かな新進作家を支援した原三渓(1868~1939)がとくに気に入っていたのが日本画家、下村観山(1873~1930)。三渓が買い上げたもの(現在三渓園蔵)を見る機会はめったにない。これに東博や東近美が所蔵する名品が加わり、豪華な回顧展になっている。観山の絵は東博の平常展にわりと頻繁にでてくる。そのなかで一番感激する絵が右の“弱法師”(よろぼし、重文)。観山の最高傑作といわれる作品である。昨年に続き、2度目の対面。

この絵は謡曲“弱法師”を画題にしたもので、右は父を求めて大阪・四天王寺にさまよう盲目の俊徳丸が日輪を拝んでいる場面(右隻の部分)。日輪は左隻の画面下に描かれている。見所は画面いっぱいに幹が伸びる白梅。三渓園内にある臥竜梅をモデルにして描かれたという。たらし込みが使われた太い幹の力強い存在感と繊細に描写された梅の花の美しさに言葉を失う。俊徳丸が立つ位置はここしか無いというくらいきまっている。絶妙に配置された白梅に囲まれて、手を合わせる俊徳丸の横のポーズからは純粋な気持ちが切々と伝わってきた。隙のない場面構成といい、盲目の人物の描き方といい、観山の高い画技が発揮された名画である。

まだ観てない東博所蔵品に魅せられる絵があった。六道のひとつである修羅道を絵画化した“修羅道絵巻”。馬に乗って戦う武家たちの横では、目がいくつもある怖い大鬼が赤い炎の中、にらみを利かせて立っている。迫力満点の地獄絵。東近美から出品された“大原御幸”は代表作のひとつ。平常展では年に1回の頻度で出品されるので、足を運んでいると必ず見れる。三渓園の所蔵品で気に入ったのは水墨画の“布袋”、“新緑”、“雪の朝帰り”。なかでも、“雪の朝帰り”の雪の重みでしだれる笹に雀が群がり、その下を頬かむりをしたいなせな男が歩いていく場面がいい。

流石、三渓園の主催する下村観山展。大きな満足が得られた。

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コメント

いづつやさん
こんばんは

この展覧会、私も日曜日に観てきました。
とてもよかったです。

三渓園は初めてだったのですが、横浜にこんな日本庭園が
あるなんて驚きです。今度はお庭の散策に行ってみようと
思います。

TBさせていただきます。

投稿: lysander | 2006.06.28 00:14

to lysanderさん
三渓園を訪れた日は横浜中華街で飲み会がありましたので、“下村
観山展”はあまりゆっくりは観れなかったのですが、“弱法師”や“大原
御幸”などが出品されてたのでびっくりしました。数は少ないですが、
質の高い回顧展でしたね。

東博平常展でまだお目にかかってない作品が2,3点観れたのも大
収穫でした。これで観山は一休みできます。

投稿: いづつや | 2006.06.28 17:24

こんばんは
観山の弱法師は別バージョンも見ていますが、こちらの方が絵画としてはいいと思います。'93に三越で開催して以来の、”立派な”観山展ではないでしょうか。
三渓園は以前来たとき、銀木犀が盛りでした。それまで金しか知らなくて、銀の木犀を初めて知った場所です。

投稿: 遊行七恵 | 2006.06.28 22:19

to 遊行七恵さん
久しぶりの三渓園だったのですが、庭園をゆっくり散策する時間がなく、
お目当ての観山展だけになってしまいました。現在、三渓園が所蔵して
いる作品もよかったです。観山芸術を堪能しました。

投稿: いづつや | 2006.06.29 11:28

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