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2006.05.21

カラヴァッジョの聖マタイの召命

382教会でみたカラヴァッジョの絵はいずれも感銘深い宗教画であった。

それらはサン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会にある右の“聖マタイの召命”、“聖マタイの殉教”、“聖マタイと天使”、ここからすぐ近くのサンタゴスティーノ教会の“ロレートの聖母”、そしてポポロ広場のところにあるサンタ・マリア・デル・ポポロ教会の“聖パウロの改宗”、“聖ペテロの磔刑”。お気に入りは“ロレートの聖母”と“聖マタイの召命”。

画集をみて大変魅せられた“ロレートの聖母”はイタリア人も好きなようで、団体ツアーや個人が午後の開門4時近くになるとぞくぞくと集まってくる。最初は教会をいろいろ回ってるのだろうと思っていたが、門があくとその大多数の人は入ってすぐのところにある“ロレートの聖母”へ向かって急ぐ。つられてこちらも小走りになった。

場面全体は“蛇の聖母”同様暗く、集中的な強い光によって浮かび上がる幼児キリストを抱いた聖母マリアに巡礼姿の老婆と息子がひざまずいて礼拝する姿が感動的である。聖母マリアの清楚な美しさに心を揺さぶられるとともに、町のどこにでもいる男の汚れた足の裏をこちらに見せるという迫真のリアリズムにこの絵の革新性を感じた。この写実的な描写は聖職者には野卑で挑発的と受け取られたかもしれないが、劇的な光の効果と人物の実在感は物語の迫真性を増し、宗教性を一層高めたともいえる。

“ロレートの聖母”の5年前、1600年に公開された右の“聖マタイの召命”はカラヴァッジョの画力の高さをローマ中に知らしめることになった出世作。今回のイタリア旅行中にみたカラヴァッジョ作品では一番登場人物の多い絵で、収税所にいた徴税吏マタイのもとにキリストが現れ、“私に従いなさい”と言った場面を描いている。後世の画家がカラヴァッジョから光と影の使い方を学んだのはまさにこの絵ではないだろうか。傑作中の傑作である。

キリストに声をかけられとすぐに回心し、ついていったといわれるマタイはテーブルを囲む5人の男の誰なのか?昔は中央の髭の人物と思われていたが、現在では左端の顔をあげず、テーブルにある金貨を見つめる若者とする解釈が主流になっている。見所は右の暗いところから手を差し出すキリストをそれほどの緊張感も無く眺めている男たちのリアルなポーズと身振り。右上からあたる光が男たちの着る当世風でファッショナブルな衣装や白い鳥の羽をつけた帽子を被っている男の色白でふくよかな顔つきを照らしだしている。そして、マタイとみられ若者の横顔はよくみると、実に端正。これは宗教画ではあるが、人物一人々に生身の存在感を感じさせる風俗画でもある。

イタリア滞在中、カラヴァッジョ作品を全部で15点(初見11点)鑑賞できたことが、嬉しくてたまらない。これでカラヴァッジョの全絵画51点のうち29点を見終わった。次回のローマではカピトリーニ、ドーリア・パンフィーリ、コリシーニ美術館を訪問しようと思う。カラヴァッジョとのつきあいはまだまだ終わらない。

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コメント

いづつやさん、教会廻りもしっかりされたのですね!一挙に15点は充実ですねぇ(^^)
やはり祭壇画は飾られている礼拝堂で観るのが一番ですよね。昨年秋、大好きな「ロレートの聖母」をミラノのパラッツォ・レアーレで作品として観た時は嬉しいと同時にもったいなや、と思ってしまいました(貧乏性です)(^^;
で、「マタイの召命」ですが、CARAVAGGIOの気迫が画面からビシバシ感じられます。本当に傑作ですよね!昨今は金貨の若者がマタイ説が有力ですが、実は今回のオランダ旅行で、ちょっと素朴な疑問が出てしまい、いづづやさんもご紹介されている宮下先生のご本でもう一度勉強したいと思っていたところでした。名画を観るのって、なんだかミステリー小説を読むのと似ているような気がします(^^;;;
それから、来週のBS2「迷宮美術館」はCARAVAGGIOだそうですよ♪

投稿: June | 2006.05.22 01:05

to Juneさん
“ロレートの聖母”をここで蝋燭だけの明かりでみたらまた、ぐっとくる
でしょうね。この絵が人気があるのがここに立つとよくわかります。“聖マ
タイの召命”に見られる光と陰が新しい絵画の扉を開きましたね。感慨深く
眺めてました。

“聖マタイの殉教”は大胆な明暗法、残虐的な表現、身振り(マタイ
と右端にいる子供)とカラヴァッジョ絵画の特徴が全部みられる傑作ですね。
ミラノ、フィレンツェ、ローマでカラヴァッジョの作品を堪能しました。感動の
総面積は相当大きいです。たぶん全部見られているJuneさんにはいつまで
たっても追いつかないと思いますが、私も漸く半分を超えました。次のローマ
では9点ぐらい増やしたいですね。来週のBS2は楽しみですね。

投稿: いづつや | 2006.05.22 13:11

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