アッシジのジョット壁画
アッシジにはルネサンスの幕開けをつげるジョットの有名な壁画があるので、シエナからこの町に向かうバスのなかでは徐々にテンションがあがってきた。
添乗員のKさんは自分でも絵を描いたりして、絵心がある方で、聖フランシスコ大聖堂の内部に描かれている多くの壁画のなかから、主要なものとその場所を示した小画像つきのミニ教会平面図を作ってくれていた。ここはガイドさんによる説明無しで、いきなり観ることになったので、これが大変役立った。
聖フランシスコ大聖堂はアッシジの町はずれにあり、斜面を利用して上下二つの聖堂から構成されている。聖堂の建設は、清貧を重んじ、自然の恵みを喜び、自然と共に生き、神の愛の世界を実現しようとした聖フランシスコを讃え、聖人の死後(1225年)まもなく、はじまった。聖堂の内部は13世紀後半から14世紀前半にかけて、一連の壁画によって装飾されたが、1295年、28歳のときアッシジを訪れたジョットは上堂の身廊に“聖フランシスコの生涯28場面”を描いた。
聖フランシスコの物語は“精薄者から尊敬を受ける”ところからはじまり“湧き水の奇跡”までが右側に、右の“小鳥の説教”から最後の“改心した異端者の釈放”までが左側に描かれている。ジョットの絵が中世の硬い殻を破ったといわれるのは背景に出てくる建物や登場する人物の動き、表情が実際の観察にもとずいて現実的、写実的に表現されているから。
例えば、10番目の“アレッツオの町から悪魔を追い出す”では、建物の描き方はまさに写実そのもので、遠近法を取り入れ、立体感を出している。中世の平面的で装飾的な画面からすると革新的な表現方法である。右の“小鳥に説教する”は聖フランシスコ伝では最も有名な場面を絵画化したもの。聖フランシスコが一番愛したものは自然の恵みであり、自然との対話といわれる。聖人が小鳥たちを集め、神の恵みについて説教すると、小鳥たちもそれを理解し、喜びに羽を広げ、聖人の服をついばんだという。
右の大きな木と聖人の後ろにある木とは対角線をなし、奥行き感をつくっている。手前でまっすぐ前を向き聖人の話を聞いてる鳥たちの姿がほほえましく、木のまわりを飛ぶ3羽の白い鳥の喜びが伝わってくるようである。ほのぼのとした雰囲気があり、木があり、小鳥が沢山出てくるこの絵画空間をみていると、日本画に通じるものを感じる。ふと、日本画家の小林古径や前田青邨がこの壁画をみて感動し、油絵に対するコンプレックスが消え、日本画に自信をもったという話を思い出した。
フィレンツェ、アッシジにあるジョットの壁画は見終わったので、残るは14世紀のはじめ、パドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂に描かれた“キリストの生涯”。この絵の期待値は“聖フランシスコ伝”より高い。次回のイタリアはパドヴァが入ったツアーを選択することを今から決めている。
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コメント
こんにちは
わたしもジョットのブルーに感動しましたよ。
なにか星の欠片が胸に飛び込んできたようでした。
絵本で『ジョットという名の少年』というのがありまして、その絵本にジョットブルーがそのまま再現されていました。
嬉しかったのを覚えています。
もう一つ違う場所でジョットの絵を見たのですが、(イタリアではなくもしかするとマカオかも・・・)ちょっと今思い出せません。
素敵ですね。
投稿: 遊行七恵 | 2006.05.15 16:38
to 遊行七恵さん
ジョットの壁画をアッシジでみるのを楽しみにしていました。期待通りの
聖フランシスコ伝でとても喜んでいます。次はスクロヴェーニ礼拝堂の
ジョットブルーです。これはなんとしても観ようと思います。天井の
ブルーに感動しそうですね。
投稿: いづつや | 2006.05.15 22:19