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2006.05.18

ベルニーニの福女ルドヴィカ・アルベルトーニ

380ベルニーニの作品があるローマの教会をタクシーで目一杯回った。ローマではボルゲーゼ美術館のほかに教会にもすごい作品があるのだ。

サン・フランチェスコ・ア・リーパ教会には右の“福女ルドヴィカ・アルベルトーニ”、サンタ・マリア・デラ・ヴィットーリア教会の“聖女テレジアの法悦”、そしてポポロ教会の“ハバククと天使”。ほかにもあるが、まずはこの3作品を目に入れようと地図を片手に教会を目指した。

最初に行ったサン・フランチェスカ・ア・リーパは町の中心からちょっと離れたトラステビル地区にあるあまり目立たない教会。お目当ての“福女ルドヴィカ・アルベルトーニ”は入って左手奥にある。これはベルニーニが73歳のときの作で、晩年の傑作。いつか見たいと思っていたが、やっと願いがかなった。

ルドヴィカは貧者に対する献身で人々に福者として崇められた女性で、この彫刻は福女ルドヴィカが神と神秘的な合一をはたす場面を表現している。胸に手をあて至福の表情を浮かべて横たわる福女ルドヴィカの顔をただただ呆然としてみていた。台座の布に用いられた色大理石が白い大理石の福女像を引き立てており、大きく深く刻まれた衣襞に目を奪われる。清らかであると同時に官能的にもみえる福女ルドヴィカの顔の表情、手の表現、本物の衣ではないかと見まがうばかりの襞のつくりかたをみていると、硬い大理石を自在にあやつるベルリーニののみの力に深い感動を覚える。

サンタ・マリア・デラ・ヴィットーリア教会にある“聖女テレジアの法悦”も“福女ルドヴィカ・アルベルトーニ”と同様、じっと見とれてしまう作品。昨年、美の巨人たちで紹介されたので拙ブログ05/5/22で取り上げた。二つの作品をみていると、この頃どうしてこんな官能的な表情をした女性像をベルニーニが制作したのか?その理由を知りたくなる。

背景には17世紀のカソリック圏における反宗教改革の動きがある。幻視体験やこれによって起きる法悦(エクスタシー)が信仰の強さの証であるというという考えがひろがってきた。幻視というのは選ばれた者が聖なる存在を見ること。この神秘主義的風潮を最も体現した聖者であるテレジアは幻視と法悦の体験を自叙伝に書いている。で、ベルニーニはこの話を彫刻にした。観る者は恍惚として体験した聖者の様子を彫刻で見て、聖者とともに神や聖母子の顕現を見ることになるというわけである。

ここでいう法悦はあくまでも神と一体になることで得られる精神の高揚のことであり、肉体的なものとはちがう。でも、肉体的なことを連想してみるほうが楽しいことは楽しい。観てる人の心の中はだれも分からないから大丈夫。が、ここは教会の中だから、あまりそわそわしてはいけない。因みに、この“聖女テレジアの法悦”は“福女ルドヴィカ・アルベルトーニ”の24年前に制作された。

ベルニーニが49歳と晩年の73歳のとき彫った傑作を観れて、これほど嬉しいことはない。もうベルニーニにぞっこんである。

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コメント

いづつやさん、こんばんは。

本当に、これが石?彫刻??と疑いたくなりますね。
日本の快慶などの仏師の手こそ神業だ、と思うのですが、
まさにこちらも神がなせる技のように思いますね。
すごいです。うなりますね。
システィーナ教会のピエタにも驚いたのですが、
画像からしかわからないのが、残念ですが、それでも圧倒してます。間近にご覧になってきた、興奮が伝わってきそうです。

そわそわも、わくわくもドキドキも、みんなステキなパッション、心の真実、ですものね★

投稿: あべまつ | 2006.05.19 22:38

to あべまつさん
“福女ルドヴィカ・アルベルトーニ”を観た人は誰もが“これ、大理石
でできてるの?!”という印象をもつのではないでしょうか。ベルニーニ
の父も彫刻家なんです。73歳になってもその技は衰えることなく、こん
な素晴らしい作品を彫るのですから、まさに神業です。

ミケランジェロの“ピエタ”も大好きな彫刻ですが、ベルニーニの人間の
感情や動き、精神性を表現した作品にも心を打たれます。

投稿: いづつや | 2006.05.20 14:12

いづつやさん、こんにちは。

今日はこちらにまた立ち寄らせていただきました。

つい先日、ダン・ブラウンの「天使と悪魔」を読んだばかりで、読みながら、いづつやさんのベルニーニの記事を思い出したのです。

コンクラーベが話題の本では、またまた映画化のときに大騒ぎになるのではと余計な心配もしましたが、いつどこでどんな芸術家に光が当たるのか、不思議な縁を感じました。
ベルニーニの超越した彫像を沢山の人に見てもらいたいですね。

投稿: あべまつ | 2006.07.18 12:36

to あべまつさん
“天使と悪魔”は“ダヴィンチコード”を読み終えたあと、続けて一気に
読みました。美術ネタは画家で美術史家の妻と共同で考えてるのではない
でしょうか。プロットをダン・ブラウンが、美術品の情報は妻が主として
アウトラインするとか。ローマが舞台なら主役はベルニーニでしょうね。
ダン・ブラウンはいいところをついてます。映画が楽しみです。

投稿: いづつや | 2006.07.18 18:53

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