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2006.05.04

ヴェネツィアのティントレット

368ヴェネツィアは今回で4度目の訪問となるので、大運河の位置関係や町の賑わいにだいぶ慣れてきた。

多くの観光客が集まる町の中心、サンマルコ広場、その隣のドゥカーレ宮殿のあたりを歩いていると心が浮き浮きしてくる。宮殿前では水上バスが行き交い、ゴンドラに乗り込む人がひっきりなしだ。

ここの観光の定番はドゥカーレ宮をまず見学して、次が金色のモザイクがまばゆい
東方のかおりのするサンマルコ寺院への入場。あとはヴェネツィアン・グラスの店に
寄り、親方から製品つくりを見せてもらい、お土産の算段となる。販売員の漫談調の
達者な日本語にのせられて財布の紐もゆるみがち。ツアーの最初で気が大きくなっ
ているので、ついついグラスの鮮やかな赤に魅せられて、“これ買おうか”という
ことになる。ヴェネツィアを満喫するならゴンドラ遊覧が一番。が、これまでなぜか縁
がなく、今回はじめてゴンドラに乗った。運良くアコーデイオン弾きと歌手が乗る真
ん中の舟にあたったので、大変楽しい運河めぐりとなった。

現地人ガイドさんが日本語で説明しながら、じっくり回ってくれるのがドゥカーレ宮殿。
ここのハイライトは欧州で一番古い20連発式銃(1620年代)などが展示してある
武器庫、大会議の間、そして牢獄と溜め息橋と呼ばれる運河を渡る通路。宮殿内の
謁見の間、元老院の間、大会議の間にある天井や壁面に描かれた油彩画はヴェネツ
ィア派のティントレット、ヴェロネーゼらの手によるもので、右の大会議の間の正面に
あるのはティントレットの“天国”。世界最大のカンバス画である。この絵はティントレッ
トが60代後半に制作したため、ほとんどは工房の弟子たちが仕上げたと言われて
いる。すこし暗い色調なので、細部はとらえきれないが、ここには2千人くらい描き込
まれているという。壮大な天国絵である。

ヴェネツィアに住み続けて多くの絵を描いたティントレット(1518~1594)の傑作が
あるのはアカデミア美術館と内部が67点にもおよぶ大作で覆いつくされているサン・
ロッコ大信徒会。アカデミア美術館には拙ブログ05/8/6で取り上げた出世作“奴隷を
救う聖マルコ”や“聖マルコの遺体の運搬”など鮮やかな色とハットする構図が魅力
の名画が何点もある。

1999年のとき、ティントレットの絵で一番圧倒されたのが46歳のころから23年かけ
て完成させたサン・ロッコ大信徒会にある連作。なかでもキリスト処刑の場面を描いた
横が12mもある大作、“磔刑”の前では、その劇的な雰囲気、見事な群像表現に言葉
を失った。ほかでは奥行きのある神秘的な空間や体が捻じ曲がったり、空中を浮遊
するようなポーズにより、絵のなかに引きずりこまれそうになる“キリストの昇天”や“岩
から水を湧き出させるモーセ”などをいまでも鮮明に記憶している。これほど感動する
鑑賞体験はそうない。次のヴェネツィアはちょっと先になるかもしれないが、もう一度こ
れらの絵をみたいと思っている。

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