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2006.05.03

アンブロジアーナ絵画館のカラヴァッジョ

367ミラノでの自由時間の大半をブレラ美術館にあてたあと、次に向かったのが集合場所のドゥオーモの近くにあるアンブロジアーナ絵画館。

ここのお目当てはカラヴァッジョの静物画、“果物籠”。51点くらいあるカラヴァッジョ(1571~1610)の作品の多くはローマの教会やボルゲーゼ美術館、バルベリーニ宮国立絵画館にあるが、生地のミラノにはブレラとアンブロジアーナに2点ある。

右の“果物籠”は是非とも観たかった作品。この絵はカラヴァッジョの代表作のひと
つであるとともに、宗教画や肖像画が重きをなしていたそれまでのイタリア絵画のなか
で、最初の独立した静物画として重要な意味をもっている。カラヴァッジョが制作した
静物画はこの“果物籠”(1596)1点しかないが、この絵の前に描かれた世俗画の
“バッカス”(1593~4、ウフィツィ美)、“果物籠をもつ少年”(1593~4、ボルゲー
ゼ美)や宗教画の“エマオの晩餐”(1601、ロンドンナショナルギャラリー)などにも
同じ籠を描いている。

“果物籠”は館自慢の絵とみえて、図録の表紙に使われている。ぱっとみると16世紀
末の作品にはとても見えない。近代の静物画そのものである。完璧な写実描写が
籠いっぱいに盛られたリンゴや赤や白のブドウの存在感を恐ろしいまでに醸し出して
いる。01年、岡崎美術館で開催された“カラヴァッジョ展”に出品されていた“果物籠
をもつ少年”の艶のある果物にびっくりしたが、静物画として描かれた果物のリアルな
質感に再度200%痺れた。

美術史家の若桑みどり女史によると、宗教画に意味があるように、この絵にもある寓意
がこめられているという。西洋文化のなかでは、果物は古くから人間における五感の
快楽の一つ、つまり“味覚”の寓意。五つの感覚は精神から人間をそらさせ堕落させる
ものと考えられており、果物は甘さゆえに虫が食いやすく、また腐りやすいので、甘味
だがつかのまの快楽の寓意ともなった。カラヴァッジョの“果物籠”でリンゴのところどこ
ろに虫の食った穴があるのは退廃のはじまりを意味しているらしい。また、画面左の
光の当たってるほうには、みずみずしいブドウの葉が描かれているが、右側の葉は枯
れはじめているのは退廃しやすい快楽の寓意がこめられているという。この説はなか
なか興味深い。

あまり時間がなく、ここには長居できなかったけれど、ダ・ヴィンチの“楽士の肖像”と
ラファエロの大きな“アテネの学堂”の原寸大下絵(原画はヴァチィカン宮殿)を大急ぎ
で観た。もう一つ期待してたボッテイチェッリの“天蓋の聖母”は残念ながら修復かなに
かで展示されてなかった。自由時間がもう少しあれば、スフォルツェスコ城内の美術館
にあるミケランジェロの未完の彫刻、“ロンダニーニのピエタ”をみれたのだが、これは
次回の楽しみにとっておくことにした。

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コメント

イタリアに旅なさっていたのですね。
ときめく絵画との出会いの様子が伝わってきて、楽しく読ませていただいています。

投稿: seedsbook | 2006.05.04 01:55

こんにちは(^ ^)
てっきりフリーア美術館の北斎展に
行かれていたのかと思っていました(笑)
大変充実した鑑賞旅行のご様子、
続きを楽しみにしています♪

投稿: gem | 2006.05.04 12:34

to seedsbookさん
久しぶりのイタリアを楽しんできました。ゴシック様式やバロック
様式の教会、中にある祭壇画や壁画、そして名画や彫刻の傑作が
一杯の美術館、イタリアに滞在しているときは楽しいことだらけです。
また、本場のパスタやワインが最高です。

今回はマグリンゴ会のことを意識して、リンゴのでてくるカラ
ヴァッジョの静物画をとりあげました。まだまだ続きます。

投稿: いづつや | 2006.05.04 13:15

to gemさん
ワシントンではなく、ミラノ、フィレンツェ、ローマなどに行ってきました。
美術鑑賞だけでなく名所観光などもとりあげようと思ってます。しばらく
お付き合いください。

投稿: いづつや | 2006.05.04 13:21

いづつやさん、「果物籠」もご覧になられたのですね♪
あの葉の虫食いもですが、細かい水滴など、静物画を描くCARAVAGGIOの気迫が漲っているような気がします。端に置いた籠のあやうさを含め、見事な静物描写に陶然です。
あの絵はいつも見張り付きでしたが、いづつやさんがご覧になった時もいましたか?まぁ、大切にされている証拠なんでしょうがね(^^;

投稿: June | 2006.05.07 23:47

to Juneさん
アンブロジアーナ絵画館は時間がなくて、30分しかいませんでしたが、念願
であったカラヴァッジョの“果物籠”がみれましたので、充分です。すごい
写実描写ですね。この絵を見張ってる人は特にいなかったように思います。
カラヴァッジョの作品をローマの教会や美術館で沢山みましたので、ローマの
ところでまた、カラヴァッジョの絵を載せます。

オマケの美術館には“果物籠”とともにすごい絵がありました。ダ・ヴィン
チの“楽士の肖像”です。これが見れましたので、ダ・ヴィンチの絵(素描
は除く)は全作品を鑑賞したことになります。ちょっと感慨深いものがあります。

投稿: いづつや | 2006.05.08 17:22

いづつやさん、見張り人無しで「果物籠」ひとり占めだなんて羨ましいです~♪ それに、ダ・ヴィンチの絵の全制覇というのも凄いです!!アメリカにある作品を私もいつか観たいものです。
で、ローマはどのあたりを周られたのでしょう?まだ内緒でしょうか?(^^; CARAVAGGIOがまた登場する続きが、とっても期待されますね~(^^)

投稿: June | 2006.05.09 00:21

to Juneさん
ダヴィンチの“楽士の肖像”が最後の1点だったんです。本当にいいツア
ーでした。ローマはフランチェージ、サンタゴスティーノ、ポポロ教会、
ボルゲーゼ、バルベリーニをタクシーで回りました。もう、カラヴァッジョ、
見た、見たと言う感じです。いずれ。

投稿: いづつや | 2006.05.09 07:33

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