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2006.05.07

ウフィツィ美術館のボッティチェリ

371イタリアの町で一番好きなのがフィレンツェ。毎年でも行きたいくらいだ。

あまり大きな町ではないので教会や美術館をまわるのがすごく楽。地図を見ながら少し歩くとめざす教会にたどり着く。

観光のハイライトはドゥーモ、サン・ジョヴァンニ洗礼堂、ジョットの鐘楼があるところとミケランジェロの“ダビデ”(コピー)が立っているシニョーリア広場。買い物に忙しい人はこの2つを結ぶ通りと平行
に走るトルナヴォーニ通りに直行するかもしれない。ここにはプラダ、グッチ、フェラ
ガモなど名だたるブランド品の最新作が飾られている。商品の色彩やデザインは
ハイレベルで、ディスプレイの仕方が実に上手い。

ルネサンス美術が存分に楽しめるフィレンツェで誰がお目当てかというと、絵画では
ボッテイチェリとラファエロ、彫刻ではミケランジェロ。ダ・ヴィンチもフィレンツェで制作
していたので、名画があるが数は少ない。ダ・ヴィンチに較べればボッテイチェリと
ラファエロは質、数ともに申し分ない。最高傑作が揃っている。そして、ミケランジェロ
も“ダビデ”などの傑作がアカデミア美術館やサン・ロレンツォ聖堂にある。

普通のツアーの場合、ラファエロの作品が沢山あるピッティ宮・パラティーナ美術館は
見学コースに入ってないので、ルネサンス美術の素晴らしさはウフィツィ美術館で
出会うボッティチェリの作品で堪能することが多い。ウフィツィ美術館での最大の楽しみ
はこのボッティチェリの絵といっても過言ではない。代表作の大半がこの美術館の3部
屋に収まっている。

ボッティチェリが活躍したのはちょうどフィレンツェがメディチ家のロレンツォ豪華公治下、
一番繁栄していた1470~90年。聖母子、宗教画、神話画のなかでとびっきりの
傑作はボッテイチェリが絶頂期にあった1480年代前半に制作された。右の“ヴィー
ナスの誕生”は1485年ころ、もう一つの傑作“春”は1482年ころの作。“ヴィーナス
の誕生”は西洋絵画の中では好きな絵ベスト5に入る絵である。

この絵をはじめて見たのが大変いい時期だった。1982年の春、この絵は1年がかり
の洗浄、修復により、長年の汚れが無くなり、輝かしい色彩と透明感に満ちた新鮮さを
取り戻した。その1年後の1983年にお目にかかったので、ピカピカの名画を天にも
昇るような気持ちでみた。絵画を見たときの興奮度はこのときが最も大きかったような
気がする。これぞルネサンスの美という感じ。

今回、3回目の対面となったが、やはりちょっとずつ汚れがついてるのか、絵肌の鮮明
さは1983年のときとくらべると落ちている。でも絵の魅力は変らない。優雅な線で輪郭
された天上のヴィーナスの少しメランコリックですっきりした顔と美しい裸体にしばしうっ
とり。ヴィーナスが神話に出てくる崇高な姿ではなく、ヨーロッパの町を歩けば出くわす
ような現代的な女性に見えるところがこの絵の一番の魅力である。

左の愛の風ゼフュロスが花の神フローラと抱き合って、まき散らす薔薇の花(ヴィーナス
の愛の象徴)と海の波の描き方が15世紀の絵とは思えないほど現代感覚で装飾的
なのに驚ろく。また、ヴィーナスの長い金髪や右でホーラ(時のニンフ)が広げる精緻な
模様の入ったマントがゼフュロスの吹く風で流れるようなフォルムになってるため、画面
全体にリズミカルな印象を与えている。

“ヴィーナスの誕生”に久しぶりに会えて、満ち足りた気分になった。ルネサンス美術の
殿堂、ウフィツィ美術館に感謝。

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コメント

こんばんは。
先日TVでボッチチェリ特集してまして、色々思うところありましたが、やっぱりウフィッツイの美誕が一番良いと思います。
わたしはガイドさんに頼んで、カラバッジョのところへ連れて行ってもらいました。
フィレンツェは全イタリアの中でも最愛の地です。
『ハンニバル』見て以来ますます好きになった街です。
十日くらい住みたいと思います。

投稿: 遊行七恵 | 2006.05.07 22:52

いづつやさん、こんにちは。
いやぁ、本当にすばらしいイタリアの旅をされて、良かったですね。私もイタリア行きたくなりました!!

私もビーナス誕生に卒倒したことを思い出しました。
あんなに有名な、ステキな絵が私の目の前にあるのだと、
涙しました。20年ほど前の旅でした。
晴れ晴れとした命の輝き、清々しさが画面に溢れていて、
心に浸みました。
宗教の重さから解放されているようにも感じられ、
ただただ美しい絵だと思っています。
ステキな旅のお話をありがとうございます。
まだ、続きがあるのかしら?楽しみです。

投稿: あべまつ | 2006.05.08 12:46

to 遊行七恵さん
“ヴィーナスの誕生”が好きな人は本当に多いですね。ボッティチェリは日本画
のように線を重視した画家ですから、日本人には馴染みやすいのかもしれませんね。
宗教臭くないのがまたいいです。

遊行さんもカラヴァッジョがお好きなようですね。今回カラヴァッジョの作品を沢山
みましたので、ローマのところでまた、取り上げます。フィレンツェはいい町ですね。
隣の方も遊行さんと同じように、10日くらい住みたいと言ってます。

投稿: いづつや | 2006.05.08 16:47

to あべまつさん
しばらくイタリア旅行の話しが続きます。関心のある絵とか名所がでてくる
といいのですが。ボッティチェリの“ヴィーナスの誕生”をはじめて見たときは
本当に感動しました。洗浄したばかりでしたから輝くばかりの美しさでした。
以来、この絵に惚れ続けてます。ヴィーナスのあの白くてちょっとアンニュイ
な顔にメロメロです。

15世紀の末にどうしてファッションショーにでてくるモデルのような女性が
描けたのか、不思議でなりません。1999年以来の対面だったのですが、
今回は薔薇の花の配し方と薄ピンクの色にぐぐっときました。

投稿: いづつや | 2006.05.08 17:57

フィレンツエは良い街ですね。かつて文化の華が咲き誇っていた頃の様子を思い馳せながら歩くと楽しいですね。
私もヴィーナスは1985,6年頃ピカピカの状態で見ています。
又行きたいとは思いつつ、なかなかいけないでいます。最近格安飛行機なんていうのがあって20ユーロくらいで飛べるときもあるらしいのですが、なかなか。。。。

投稿: seedsbook | 2006.05.09 15:13

to seedsbookさん
洗浄直後に観た“ヴィーナスの誕生”の印象があまりによかったものです
から、1999年のときは、“えっ?!、前はもっと輝いていたのに”という
感じをもちました。やはり、時の経過とともに汚れがつくものなのですね。

フィレンツェはボッティチェリのほかにミケランジェロの“ダビデ”、
ラファエロの“小椅子の聖聖母”、フラ・アンジェリコの“受胎告知”など々、
ルネサンス美術の傑作が沢山ありますので、何度でも訪問したいですね。

投稿: いづつや | 2006.05.10 17:58

はじめまして、いづつやさん
Botticelliの事を調べようとしてネットをうろうろしていたら此処にたどり着きました。
本物は観た事がないのでうらやましい限りです。
ヴィーナスの誕生の模写(約1/3)を始めてはや一年。二十年振りに筆を執ったので思うように描けなくて苦労しています。やっと、フローラの顔にたどり着いた処です。
写真によって色が違いすぎて本当の色を確認したくて・・
もちろん海外には行けないので四国の大塚国際(陶版)にでも行ってこようかなと思っています。
でもやっぱり本物とは違うんでしょうね、きっと・・・

投稿: ぼっち | 2006.05.19 16:38

to ぼっちさん
はじめまして。コメント有難うございます。絵画の本当の色を再現してい
る図版はなかなかお目にかかりませんね。実際はもっと明るい絵だったと
きもありますし、逆にそれほど輝いてないこともあります。

“ヴィーナスの誕生”は色がきれいです。今回驚いたのは左に散っている
花びらの薄ピンクと波の白です。とても現代的な感覚で優雅な感じがします。
ぼっちさんがいつかみられると、生の美しさをまた共有できます。模写が
うまくいくといいですね。

投稿: いづつや | 2006.05.20 12:19

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