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2006.04.02

プラド美術館展のムリーリョ

349東京都美術館で開催中の“プラド美術館展”(6/30まで)には予想以上のいい絵が展示されている。

世界トップクラスの美術館が収蔵する作品を展示する場合、その絵の質によっては主催者が宣伝するほど見る人は評価しないケースだってある。今ではマドリッドにあるプラド美術館を訪問し、ベラスケスやゴヤ、グレコなどの名画を鑑賞したひとは数多くいるので、名画の残像が消えないときに日本に来た作品に接するとどうしても“えー、こんな絵しかきてないの、現地にはこれよりずっといい絵があったよ”ということになる。

プラドのような大美術館の展覧会ではあまり期待を膨らませないほうがいい。館自慢の名画が1、2点あればもう立派な展覧会である。そういう意味では、今回は目玉にティツィアーノの“ヴィーナスとオルガン奏者”(拙ブログ2/26)があるので申し分ない。これはベラスケスなどスペインの巨匠以外ではティツィアーノとルーベンスの傑作が揃っているプラドの所蔵品のなかでも評価の高い絵。

やはり群を抜いていい。とくにヴィーナスがつけてる髪飾り、イヤリング、ネックレス、腕輪の光り輝く質感に驚かされる。ベッドの敷物、後ろのカーテンのえんじ色と室内の外の風景に見える木々の緑が実にうまく溶け合い、落ち着いた絵画空間となっている。描かれた3人は顔の表情に微妙なちがいがある。左のクピドが一番緊張した顔をしている。幼子なのにどうしてそんなに顔をこわばらせているの?という感じ。端正な顔をしたヴィーナスはクピドの真剣なまなざしにたじらうこともなく、ゆったりと体をベッドに横たえている。右の二人に視線が向かうのに対し、左側のオルガン奏者は目がぼやっとしており、存在感はあまりない。今回でているティツィアーノのほかの3点にも魅了された。

また、右のムリーリョ作、“無原罪のお宿り”にも深い感動を覚えた。02年のプラド美展(国立西洋美)にも別ヴァージョンがでていた。前回のマリアは顔をすこし傾け、上のほうを見ているポーズだったが、この絵ではマリアは胸の前で両手を合わせ、まっすぐ前を向いている。目、口、鼻、のバランスがよく、とてもチャーミング。セビリアの町を歩けば出くわすような女性である。白い三日月に乗る聖母マリアのまわりには可愛い天使がいる。天使の数は今回のほうが多い。上のほうにいる頭だけ描かれた天使は左右からマリアをみつめ、マリアの足元にいる天使は手に花を持っている。ムリーリョの描く天使をみて心が和む感覚は円山応挙や長澤芦雪の仔犬図を前にしたときのそれと似ている。ムリーリョの優しい感性が充分伝わってくる“無原罪のお宿り”や羊がでてくる“貝殻の子供たち”を見れたのは大きな喜び。

このほかにも好きなグレコが4点あったし、ゴヤの色が鮮やかな“果実を採る子供たち”も見れた。階段を登るのはしんどいが、これを吹っ飛ばしてくれるほどの満足が得られる展覧会であった。

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コメント

いづつやさん、こんにちは。
ご無沙汰しておりました。
私も、久しぶりに見応えのある展覧会に足を運ぶことができ大満足で帰ってきました。
TBさせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

投稿: snow_drop | 2006.04.03 14:07

to snow dropさん
プラド美術館展は印象に残る展覧会でしたね。02年のときよりは作品の質が
高いように思います。今回メレンデス、サンチェス・コタン、スルバラン、
スナイデルスの静物画にも心を奪われました。こういう絵をみると油彩の魅力に
あらためてとりつかれます。

投稿: いづつや | 2006.04.03 17:18

こんばんは。
ムリーリョは受け入れやすいですよね。
親近感が自然とわきます。
マリア様なのに。。。

投稿: Tak | 2006.04.05 20:47

to Takさん
ムリーリョの絵を見てると自然に肩の力が抜けますね。聖母子像や聖マリアの
絵ではラファエロとこのムリーリョが一番のお気に入りです。どちらも宗教臭く
ないのがいいですね。穏やかな顔をした女性と愛くるしい赤ん坊に心が和まない
はずがありません。

投稿: いづつや | 2006.04.05 23:23

いづつやさん、こんにちは
こちらにもTBさせていただきました。
実はティツィアーノの「ヴィーナスとオルガン奏者」の美しさを十分に堪能できなかったこと(背景やオルガン奏者のぼやっとしたところに目がいってしまいました。)
にちょっと後悔しています。機会があれば、また行きたいと思います。
またムリーリョの「無原罪の御宿り」は今回の方が親しみやすさや清らかな美しさが勝っているような気がしました。
心やすらぐ絵は本当に良いものですね~

投稿: アイレ | 2006.05.08 18:45

to アイレさん
ティツィアーノの代表作をウフィツィ美やローマのボルゲーゼ美でみたの
ですが、“ヴィーナスとオルガン奏者”のレベルの高さをあらためて実感
しました。首飾りなどやベッドの布の描写がすごく精緻な感じがします。
油絵の魅力が200%でてます。

ムリーリョの絵はラファエロ同様、和みますね。企画者も日本人の好みが
わかってるのか、今回もムリーリョの作品を展示してくれました。◎ですね。

投稿: いづつや | 2006.05.08 22:58

こんにちは
やっと(今頃?)プラド美術館展行ってきました
稚拙ながらTBさせて頂きました

投稿: muha | 2006.06.23 23:22

to muhaさん
“プラド美展はご好評につき7/2まで延長いたします”という看板を
ルーブル美展を観に東芸大美に行く途中、見ました。ふと、ティツィアー
ノの“ヴィーナスとオルガン奏者”をまたみようかなという思いが頭を
よぎりましたが、止めました。終盤はとくに混みそうですから。

投稿: いづつや | 2006.06.24 18:02

TB有難うございました
そういえば私が行った日の上野公園はプラドとルーブル帰りの人に二分されてました
やはり終盤は混むのですね
今度は早く行きます。。。

投稿: muha | 2006.06.26 10:50

to muhaさん
前回のプラド美展より今回のほうが良かったように思います。超Aクラス
のティツィアーノ作、“ヴィーナスとオルガン奏者”だけで充分です。
海外の有名美術館から作品が出品される場合、目玉が1,2点あれば
◎にしてます。

来年の春、スペインを再訪することにしてますので、プラドで名品をまた
じっくりみるつもりです。

投稿: いづつや | 2006.06.26 16:05

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