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2006.04.11

亜欧堂田善の浅間山図屏風

358洋風画家、亜欧堂田善(あおうどうでんぜん)が描いた大きな屏風が今、府中市美術館の“亜欧堂田善の時代展”に出ている(4/16まで)。それは右の“浅間山図屏風”(東博所蔵)。

江戸後期、西洋画の油彩や銅版画の技術を使って風景や人物を描いた絵師のことを洋風画家と呼ぶが、亜欧堂田善もそのひとり。

この屏風は油絵としては最も大きいものらしい。そう言われても、なにしろ、こういう
タイプの絵はこれまでみたことがないので、ピントこない。ほかの油彩画と較べると
たしかに大きい絵である。今回出品されてる油彩画(11点)では風景のなかに
人物が描かれているのに、ここには人が登場しない。雄大な浅間山を右にどんと
描いている。

この絵は遠近感があまり感じられず、色使いをみても、左の炭焼きの煙がのぼって
るまわりの木々の緑とか浅間山の手前の山の茶色は、もっと濃くて油絵の具のねっ
とりした感じをイメージしていたが、そうではなく淡い色調。洋風画家が描く風景画
だから、男性的な浅間山が立体的に圧倒的な存在感のある姿で描かれているのだ
ろうと予想してたのに、実物は拍子抜けするくらい洋画ぽくない絵だった。

前期に出ていた“江戸城辺風景図”では、濃い緑や明るい緑が木の葉や土手の草
に光があたるところとあたらない場所の感じをよく捉えており、油絵の特徴がでて
いた。だが、“浅間山図”はこの絵とは違い大きな屏風なので、田善は制作にあたり、
画面いっぱいに油絵の具のぎっちり塗り重ねて、密度の高い絵画空間をつくるのは
相応しくないと思ったのかもしれない。

屏風絵は元来装飾的に描かれるものだから、注文者の目を楽しませることが絵の価値
をあげる。淡い色調とはいえ、伝統的な墨の濃淡で描く狩野派流の風景画にくらべれ
ば、この絵は色数が多く、空の色は実際に見たとおりに近い青で彩色されているし、
浅間山の山頂近くにみえる雲も見慣れた形をしている。だから、この油絵風景画は見る
ものを心地よくしたのではないだろうか。

はじめは、なにか物足りない印象をもったが、しばらく見ていると、逆にこの風景に陰影
でアクセントをつけ、色も濃くしたら、すぐ飽きられる屏風になるような気がした。これく
らいの洋画っぽさが無難だったかもしれない。洋風画というと、司馬江漢の絵しか思い
浮かばなかったが、亜欧堂田善という絵師の存在を知り、その油絵を見る機会に恵ま
れたのは大変よかった。こういう新しい絵師に出会う展覧会も刺激があっていい。

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