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2006.04.08

木村定三コレクションの与謝蕪村

355京博の“18世紀京都画壇展”をみたあと、名古屋に寄り、愛知県立美術館で開かれている“江戸絵画展”(5/21まで)を楽しんだ。

コレクター、木村定三氏(1913~2003)が集めた質の高い江戸絵画をはじめて公開するというチラシのキャッチコピーがだいぶ前から頭の中を占領するようになったので、愛知県美を訪問してみた。

出品数は116点と結構ある。鑑賞を楽しくさせてくれたのはここにも“京都画壇展”
にでてた若冲(3点)、蕭白(1点)、芦雪(2点)、呉春(4点)、蕪村(6点)があった
こと。また、日ごろからもっと数をこなしたいと願っている英一蝶(4点)、白隠(6点)、
仙厓(5点)、浦上玉堂(9点)にいい絵があり、江戸琳派の酒井抱一と鈴木其一
にも出会ったので、見終わったあとは満ち足りた気分になった。

そのなかで新鮮だったのが若冲のはじめてみるタイプの絵、“六歌仙図”。ユーモラ
スな戯画で、六歌仙が田楽を焼き、酒の肴にしている様子が描かれている。見慣れ
た太った鶴の絵が隣にあったが、若冲は人間もコミカルにしている。人が笑ってい
る絵なら仙厓が一番。大きく口を開けて痛快に笑う和尚や子供の絵をみてると、こち
らもわけも分からずに笑ってしまいそうになる。白隠の絵も笑いを誘う。“寿”の入った
袋の口をもって嬉しそうな顔をしている布袋の絵や手の異様に長い猿が掛け軸に
筆書きしている“吉田猿猴図”も面白い。英一蝶の絵に鶴がでてくるいいのがあった。
陽をさえぎるため、鶴がデザインされた日傘を朝顔のなかに立てかけている構図
が洒落ている。

今回一番見たかったのが右の蕪村作、“富嶽列松図”。蕪村が晩年に制作したこの絵
は“夜色楼台図”、“峨嵋露頂図”とともに“横物三部作”(いずれも重文)とよばれて
いる。深山幽谷の中国的な山水を縦長の掛軸にかいた作品とは対照的に、これらは
極めて横長の画面を使った絵。チラシでみて横長の画面と雪を抱いた富士山の輝く白
に強く惹きつけられたが、予想以上の傑作だった。手前に筍のような太い幹をした松
がのびやかな濃い墨線で描かれており、そのむこうに見える端正なフォルムの富士山
が心を揺すぶる。日本人の情感を刺激するこの絵に会ったことは一生の思い出に
なるかもしれない。

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コメント

私もこの絵大好きです。昨年春に見ました。
愛知県立美術館っていい収蔵品がたくさんありますね。
前は企画展に時間をとりすぎたため、常設展が駆け足
でしたが、常設展をじっくり見てみたい美術館です。

投稿: リセ | 2006.04.08 23:01

to リセさん
蕪村のこの絵が気になってしょうがなかったものですから、名古屋で途中下車
しました。期待に違わぬいい絵でした。実景の富士山がでてくる風景画ですから、
ぐっときます。ずっと追っかけている“夜色楼台図”にも会えたらいいのですが。
焦らず待ちます。

投稿: いづつや | 2006.04.09 15:58

TBありがとうございました。TBさせていただいた日記のタイトルが、何度も繰り返された状態で表示されてしまい、大変申し訳ありません。
僕はたまたまふらっと行った展覧会で、蕪村の作品も初めて目にするものばかりでしたが、いづつやさんは詳しいんですね。”夜色楼台図”という作品、観てみたくなりました。

投稿: 新三 | 2006.05.05 23:05

to 新三さん
はじめまして。書き込み、TB有難うございます。蕪村の“富嶽列
松図”に大変感動しました。この絵は日本人の感性に合いますね。
次は“夜色楼台図”です。いつ出てきてくれますやら。
これからもよろしくお願いします。

投稿: いづつや | 2006.05.06 13:35

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