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2006.04.09

大倉集古館の長澤芦雪

252_2江戸絵画の鑑賞が続いている。京都、名古屋のあと、ホテルオークラの隣にある大倉集古館でも“播磨ゆかりの江戸絵画展”(5/28まで)を観た。作品の数は57点なので、“18世紀京都画壇展”よりは少し多い。

この企画展を思いついた人は大変豊かな発想の持ち主。播磨の国、現在の兵庫県の旧家に若冲や芦雪などの作品が多く所蔵されてるのに気づき、播磨をキーワードにしてこれらを一度まとめてみようと思い立ったのかもしれない。

江戸時代、絵師たちが播磨とどんな縁があったのか正確なことはわからないと思うが、この頃活躍した絵師の作品を兵庫在住の個人がこれだけ所有しているということは、当時、この地を多くの文人墨客たちが訪ねたためであろう。この展覧会のお陰で画集や図録に載ってない佳品をいくつも見ることができた。

大倉集古館ではわりあい若冲の絵を見る機会がある。過去にも京都の細見美術館
所蔵の若冲を展示していた。今回は“羅漢図”、“鶴図”、“双鶏図”の3点。面白い
のは胴体がまんまるの鶴に顔がないこと。東博でも同じようなユーモラスな鶴の絵
をみたことがある。17歳年下の円山応挙の描く鶴は本物そっくりなのに対して、
若冲の鶴はぐっとくだけた姿態で奇抜なポーズをとっている。若冲は鶴や鶏が好きで、
自分もこれらに変身して、戯れたかったのだろうか。普通の絵師では太った鶴や鶏
を思いつかない。応挙は小ぶりの“雲龍図”と品格のある花鳥画“梅に鶯(うぐいす)
図”の2点。

この展覧会で一番の収穫は芦雪の絵が見れたこと。7点あり、ハットする絵がいくつ
かあった。右の“方広寺大仏殿炎上図”(部分)はそのひとつ。建立後、すぐに地震
に遭い壊れた方広寺を秀頼が復興させるも、今度は落雷で焼失する。背景をなにも
描かず、方広寺が炎上する様を墨の煙と朱色の炎が上空にのぼっていく縦長の画面
構成で表現している。上から落ちてくる大きな炎が滅びる豊臣家を暗示するかのよう
で、印象深い。芦雪の絵の魅力はハットさせられる構図。沢山の鶴が群れをなして飛
んでいる“千羽鶴図”の左右の鶴の配置には“おおー”と思わず声が出そうになる。

この柔らかい発想からくる奇抜な構図や対比の上手さが芦雪の真骨頂。若冲の作品
は残っていた“菜虫譜図巻”を見たので一休み。これからは芦雪に鑑賞のエネルギー
をシフトしようと思う。期待は7月、東博にやってくるプライスコレクション。見たくてたま
らない芦雪の大作、“象と牛図”が含まれていること切に願っている。

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コメント

こんばんは いい絵ですね。
方広寺は京博のご近所さんですが、なんだか先日来ご縁があるのではないですか、いづつやさんには。

四月五月は地元関西で遊ぼうと思っていたのですが、大倉のこういうのを見ますと行かねばならないと焦ってきました。
東博にも行きたいですし。

大倉はこの数年ほんとうに良い企画が並ぶようになりましたよね。行くたび来た甲斐を感じます。

投稿: 遊行七恵 | 2006.04.09 21:23

to 遊行七恵さん
この展覧会は“18世紀京都画壇展”のようなワクワク度があったわけでは
なく、若冲をみれればと思って足を運んだのですが、芦雪にいいのがあり、
嬉しくなりました。洛中洛外図でおなじみの方広寺が燃える絵を芦雪が描いて
たとは。こういうのが兵庫県の旧家にあるんですね!

大倉集古館の企画力に感謝です。ここは数は少ないですが、作品の質は高い
ですね。いつも感心させられます。

投稿: いづつや | 2006.04.10 09:07

いづつやさん、こんばんは。
TBありがとうございます。

今回は三の丸尚蔵館の若冲とリンクさせるため、ただ展覧会タイトルの「若冲」の文字に惹かれて行ってみた(予習なし)のですが、予想以上の掘り出し物に出会えて収獲大の展覧会でした。
特に今回は蘆雪の発想の豊かさにびっくりです。虎も良かったですし、方広寺炎上図の自由闊達な筆さばきは本当に画力がないとあそこまでは描けないと思います。
本当に大倉集古館に感謝の展覧会でした。
これにあわせて京博の「18世紀京都画壇展」にも行けばよかったと少し後悔しています。

投稿: アイレ | 2006.04.10 21:18

こんばんは。
長澤蘆雪の凄さを初めて実感しました。
あの鶴の屏風はどういう気持ちで
描いたものなのでしょう。

何しろ見応えありました。

投稿: Tak | 2006.04.10 22:32

to アイレさん
金閣寺の焼失を川端龍子が絵にしたように“方広寺炎上図”があってもおかし
くは無いのですが、これを芦雪が描いたということに衝撃を受けました。掛け軸
に描くとこんな風になるのですね。上から落ちてくる炎の塊が面白いです。

投稿: いづつや | 2006.04.10 23:22

to Takさん
京都、名古屋、東京の三箇所で芦雪の絵を見ましたが、構図が冴えてたのは
“千羽鶴図”と“蓬莱山図”(18世紀京都画壇展)です。スケールの大きい
“千羽鶴図”には声が出ません。

投稿: いづつや | 2006.04.11 07:39

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受信: 2006.04.10 20:54

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