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2006.04.16

イサム・ノグチ展

363昨年9月、イサム・ノグチの展覧会(東京都現代美術館)をみたが、また回顧展がはじまった。今度は横浜美術館(6/25まで)。

この企画展の情報を得たとき二つの関係はどうなってるのか?だったが、MOTとダブルのが11点あった。出品数は72点なのでMOTの44点と較べれば多い。前回は作品が少なく、もっと観たいという気持ちが強かっただけに、イサム・ノグチの彫刻芸術を理解する上では、今回
のプラスαは有難い。半年前にこれくらいの数が見れたら申し分なかったのだが。

MOTのときはイサム・ノグチの彫刻をあまり見たことがなかったため、作品に目
を慣らす感じの鑑賞だったが、今回は4つに分けられたテーマ、“顔”、“神話・民
族”、“コミュニティーのために”、“太陽”の解説文をじっくり読み、会場をまわった。
作品のタイプや制作年代ではなくテーマで作品をくくっているので、ノグチの創作
の狙いや表現したかったことがよくわかる。

最初の“顔”のコーナーには若い頃の収入源である肖像彫刻が2点ある。画商の
夫人と日本の親戚の家にいたお手伝いさんの肖像。これらと“えらいやっちゃほい
(金太郎)”以外の作品はみんな抽象彫刻。薄板を直角に組み合わせてつくった“イ
ンターロッキング・スカルプチャー”の作品、“追憶”では、シュルレアリスト、ダリの
“記憶の固執”にでてくるくにゃっと曲がった時計をイメージさせる形体があった。

“神話・民族”で惹きつけられたのが“かぶと”。陶の作品で、青銅の銅鐸と鉄の兜
をミックスした造形がおもしろい。大理石の滑らかな質感が感じられる縦長の“ブラン
クーシへのオマージュ”も好きなタイプの抽象彫刻。モダンダンサー、マーサ・グラ
ハムのためにノグチが制作した舞台セット“暗い牧場”は日本ではじめて展示される
らしい。“青葉とオベリスク”とか“花咲く枝と歯”をみてると、素材は違うが、カルダー
のモビール作品を連想する。この舞台で踊るマーサの古い映像が流されていた
ので、彫刻家、イサム・ノグチはいろいろな芸術家と交流していたのだなと思いなが
らみていた。

“コニュニティーのために”では心がザワザワするのが2点ある。人種差別や戦争
への抗議を表現したと思われる“死(リンチされた人体)”と“英雄たちの記念碑”。とく
に首にロープがかかり、手や足がひどく折れ曲がった人体を4本の鉄の棒が囲む
“死”(ブロンズ)には強烈なインパクトがある。ノグチがこんな作品を制作していたこと
にちょっと衝撃を受けた。

ノグチの作品で一番惹きつけられるのが最後の“太陽”にある大型彫刻。右の“真夜
中の太陽”は横浜美術館を訪問するたびにながめているので、“エナジー・ヴォイド”
拙ブログ05/9/25)を見るまでは、この海ヘビを思わせる円環がノグチの作品の
イメージをつくっていた。同じ円環シリーズで環が切れて上下に交差している“下方へ
引く力”も存在感がある。

一通り見終わったあと、会場の一角で上映されていたノグチが作品を制作する過程
をカメラがとらえたドキュメンタリーフィルムを熱心に見た。ノグチ本人が語る、師匠ブラ
ンクーシの工房でやっていた仕事のこと、フラーとの対談、パリのユネスコ本部の庭
を造っている様子などが大変興味深かった。この映像も展示作品とともにこの展覧会
の大きな収穫。

なお、横浜展が終わると次の2箇所を巡回する。
・滋賀県立近代美術館:7/8~9/18
・高松市美術館:9/29~11/12

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コメント

大きな作品、話題になる作品、並べるという点では昨年の展覧会でしたが、今回の方が企画がまとまっていましたね
残念だったのは、所蔵作品が長谷川潔展の時にロビー?で観た方が素敵に見えた事です
映像のDVD買ってしまいました(^^) 

投稿: えみ丸 | 2006.04.22 22:02

to えみ丸さん
イタリアに旅行してたため、返事が遅れました。すいません。イサム・ノグチ
の作品をみる機会が半年の間に2回もあり、喜んでいます。実は私もDVDに手
がかかりましたが、ドキュメンタリーのフィルムを一生懸命みましたので、やめ
ました。

投稿: いづつや | 2006.05.01 17:17

イタリアにご旅行でしたか・・
何を観てきたのか記事のupが楽しみです

ノグチのDVD、私には内容以外に彼の頭の形や骨格に関心があり、しっかり見たかったの これは人物彫刻やる人間の好奇心だと思います(笑)

それにしても、昨年の展覧会観た人は彼が好きにならなかったのかしら? 話題性のなさに驚いています

投稿: えみ丸 | 2006.05.01 21:22

to えみ丸さん
横浜美術館のイサム・ノグチ展はテーマの設定がよかったですね。
企画した学芸員はなかなかセンスがいいのではないでしょうか。
フィルムでノグチの生の声や制作の意図が聞けたのも貴重でした。

投稿: いづつや | 2006.05.02 22:28

今頃になって買ってきたDVD観ました
ビデオと同じと聞いたのですが違いました
初めは声が吹き替えになっているのが気になりましたが、
字幕観ないので映像がしっかり観られ、字幕ないぶん映像も邪魔がなくてキレイでした
ビデオより、こちらはもっと良かったです お見せしたい位です

横浜美術館、やっぱり学芸員にセンスある人が居る気がしますね(笑)

投稿: えみ丸 | 2006.05.03 22:48

to えみ丸さん
横浜美術館にはいつもイサム・ノグチの“真夜中の太陽”と“下方
へ引く力”がでんと展示してありますから、ノグチは身近な感じがします。
2回も回顧展をみてこの彫刻家との距離がさらに狭まりました。

投稿: いづつや | 2006.05.04 12:55

お久しぶりです。
イサム・ノグチ観てきました。
NHK横浜開局八十周年記念というのに話題になりませんね。
「死ーリンチされた人体」は僕も驚きましたが一方「霊的理解の石」とか何を言わんとするのか不明なものも見受けられまして、作品解説をもう少し充実してほしいと思いました。

投稿: oki | 2006.05.22 22:40

to okiさん
4月中旬からはじまって2ヶ月もやるのに、たしかにこの展覧会のことは
マスメディアであまり取り上げられませんね。私にとっては、会場で上映
されてたドキュメンタリーフィルムをふくめてイサム・ノグチの作品群を
知るとても有難い展覧会でしたが。

昨年MOTであった展覧会をみた人はもういいやという気持ちなんでしょうか?
“死ーリンチされた人体”のような衝撃的な作品があるのですが。

投稿: いづつや | 2006.05.22 23:46

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» イサム・ノグチ展 [冬の虹]
    観終わった後、幸せになる展覧会でした 作品は、昨年の東京都現代美術館や1992年の近代美術館の時と比べたら代表作は多いとは言えないでしょう でも、今までノグチの展覧会は何度も観てきていますが、あまり好きではなった作品も、こんなにキレイだったのか、こんな素敵だったのか、と新しい発見に喜びました 印象的なだったのは、影の美しさです  真っ白の壁に、彫刻の影がクッキリと浮かび上がります ゆったりと配置してあるので、作品の影も後ろにゆったり見えました 観る方向変えると影の形が変わります... [続きを読む]

受信: 2006.04.22 21:52

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画像・エムエムインテリアスペース さん。 我が家の家宝であります。 結婚した時に友人がプレゼントしてくれました。 とても和みますねこれは。 彼は県外にいるので、しょっちゅうは会えません。 今日久しぶりに話しました。 彼は今とても忙しいそうで、GWも休みがとれな... [続きを読む]

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