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2006.04.13

台湾女流画家、陳進展

360美術館で展示された作品を見たあとは必ず、他館で開催中の企画展のポスターをながめたり、置いてあるチラシを持ち帰るようにしている。この情報が大変役に立つ。

館のHPや美術関連の雑誌(例えば、芸術新潮など)を定点チェックし、展覧会情報を集めているが、美術館は沢山あるので、こぼれ落ちるのもある。これを美術館にあるPR媒体が時々リカバリーしてくれる。

今回は東博の地下1階で偶然目に入ったポスターに使われていたいい絵が渋谷の
松涛美術館で開かれている“陳進展”(5/14まで)に導いてくれた。ブログ仲間の
okiさんからこの展覧会をおしえてもらったが、陳進(ちんしん)という台湾の女流画家
のことはまったく知らなかった。が、ポスターで右の“合奏”という絵をみて、俄然
美術館に足を運びたくなった。

陳進(1907~1998)は若い頃日本に住み、美人画家の鏑木清方や伊東深水から
日本画を学んでいる。27歳で描いた“合奏は”帝展に入選するなどその画才は高
く評価され、注目を集めた。戦後は台湾に戻り、1998年、91歳で亡くなるまで台湾
における女流画家の第一人者として活躍した。画家の生誕100年を記念するこの
回顧展では代表作80点あまりが出品されている。地下の展示コーナーにある絵を
2,3点みて、陳進が大変な画家であることがわかった。その画業は日本でいえば、
上村松園とか小倉遊亀クラスの画家である。現役のころは台湾画壇の重鎮だったの
ではないだろうか。

作品は人物画、花を描いたもの、風景画、現代風俗画、仏画があるがとくに人物画に
優れている。右の“合奏”は唯一日本的な美人画の匂いがする絵。笛を吹き、月琴
を奏でる二人の少女の顔は山川秀峰が描く女性の丸い顔立ちを思い出させ、手の
指先は浮世絵師、歌麿の美人画にでてくる女の手にそっくり。紫の中国服に施された
金の刺繍の描写は日本人画家の絵のように繊細極まりない。画題は中国のもの
だが、絵の印象は松園、清方、深水、秀峰らが描く美人画となんら変らない。素晴ら
しい近代日本画の一枚である。

人物画をみていて、小倉遊亀の画風が頭をよぎった。“爆音”や“花を持つ少女”など
は小倉遊亀の作品にでてくる女性や女の子と雰囲気がよく似ている。70歳以降に
制作した女性画に傑作が多い。黒の線で輪郭をとり、強い色調の赤や緑で彩色した
服装は美しい女性を一層引き立てており、子供と抱く母親の表情は慈愛に満ちて
いる。満足度150%の展覧会であった。陳進をMy好きな女流画家に即時登録。

なお、この展覧会は東京のあとは次の美術館を巡回する。
・兵庫県立美術館:6/3~7/23
・福岡アジア美術館:7/30~9/10

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コメント

こんばんは

兵庫県立美に来るのが楽しみです。
清方のお弟子さんには女の方も大変多かったようで、この絵を見た限りではそんな雰囲気がありますよね。
でも、小倉遊亀?
実物を見るのがますます楽しみになりました。

投稿: 遊行七恵 | 2006.04.13 23:31

to 遊行七恵さん
陳進という人は台湾では有名な女流画家なのだと思います。
大変感銘を受けました。日本に統治されてたためでしょうが、
台湾で日本画が受け継がれてきたとは知りませんでした。しかも
こんなに上手な画家がいたとは。是非ご覧になってください。

投稿: いづつや | 2006.04.14 07:35

松涛美術館はいつも渋めで通好みの展覧会をやりますね。
僕は企画展のたびに足を運びますがホームページが充実していないのが残念です。
陳進の絵画は僕は花鳥画にいいのが多いと感じました。
外国風景を描きつつそこに富士山を描きこむなど心象風景の画家かなとも感じました。
僕の情報がお役に立てたなら幸いです。
皆さん話題のブリヂストンにこれからいってきます。

投稿: oki | 2006.04.14 12:31

to okiさん
陳進についてはokiさんから事前に情報を入れてもらってたお陰で、絵をみて
ピンときました。で、いい絵がでている予感がしましたので出かけました。
まったく凄い女流画家でした。人物画に大満足ですが、蓮の絵や墨と淡彩
で描いた葡萄の絵も気に入りました。情報有難うございました。いい画家に
めぐり会えて本当に喜んでいます。

投稿: いづつや | 2006.04.14 13:54

貴ブログ1/18へ コメント、TBできません。
ここに書かせて下さい。
福島県立美術館へ須田国太郎展へ行ってきました。
http://blog.goo.ne.jp/tbinterface.php/9cf5ab93b2036a6aba7c1690e669b7b9/1a
偉大な画家を知ってよかったです。これからも貴ブログでいろいろな美術作品を学びたいと思っています。
ありがとうございました。

投稿: 会津マッチャン | 2006.04.14 21:56

ちょっと前にあった東京ステーションギャラリーで
「ベトナム近代美術展」を見て以来、アジアの画家や
作風に興味を持ちました。
この美術展も見てみたいです。
兵庫か福岡、どちらかに行ってみたいです。

投稿: リセ | 2006.04.15 00:18

to 会津マッチャンさん
須田国太郎の作品をお楽しみになられてなによりです。日本人洋画家のなかには、
シュルレアリストの画風だけを真似てオリジナリテイのないひとが沢山いますが、
須田国太郎はこれとは違い、黒を使った須田独自の描き方がありますから、大変
惹きつけられます。

投稿: いづつや | 2006.04.15 18:01

to リセさん
少し前までまったく情報がなかったのに、偶然みつけたポスターが陳進という
台湾の大物女流画家にひきあわせてくれました。台湾のひとですが、日本に住
んで絵を描いていた人ですから、とても上手な日本画家を見つけたという感じ
です。晩年に制作した人物画がとくに素晴らしいです。どうかお楽しみ下さい。

投稿: いづつや | 2006.04.15 18:12

陳進展について、わたしも感想を書いたのでトラックバックさせていただきました。

万年美術部のわりに知識の少ないまま(特に日本画)なので、さいきん、生に触れていこうと思っているところです。

わたしはこの陳進展、たまたま入った渋谷区役所のチラシ置き場で目に留まったのがきっかけです。『合奏』にクラっときてしまいました。実物もすごかったですね。

投稿: Chie | 2006.05.02 02:00

to Chieさん
はじめまして。書き込み、TB有難うございます。これまで陳進という女流画家
全く知りませんでしたが、偶然にもすごい画家に出会いました。女性画が
とても魅力的です。私も“合奏”の素晴らしさにびっくりしました。また、いつ
か別の作品を見てみたいですね。これからもよろしくお願いします。

投稿: いづつや | 2006.05.02 22:36

こんばんは。
久しぶりにTBが出来ました。うそみたい。
兵庫で見てきました。そちらで出ていない作品が一枚ありました。と言いますのは、松涛での開催時、「我が家に陳進さんの絵がある」と申し出てこられた方がおられて、その作品『菊花図』がこちらに来たのです。
良い展覧会でした。併設の他の日本画家の作品だけでも『凄い』展覧会になりうるなと思いました。

投稿: 遊行七恵 | 2006.06.24 23:42

to 遊行七恵さん
陳進の絵をもってると申し出たひとの作品をまた、飾るというのは
臨機応変でいいですね。陳進をはじめ日本で学んだ画家が台湾で
また画業を発展させ、愛好家の目を楽しませているのですね。
これからも定期的に台湾画家の絵をみてみたいです。

投稿: いづつや | 2006.06.25 11:26

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