出光美術館の風俗画展
日本の古い歴史を理解するのに絵画が貴重な情報媒体であることを再認識させてくれるのが4日から出光美術館ではじまった“風俗画展”(4/23まで)。
この美術館では一度、菱川師宣やその弟子が描いた肉筆浮世絵をみたことはあるが、所蔵の風俗画に接するのははじめて。
桃山時代から江戸初期にかけて制作された“洛中洛外図”やこのなかに出てくる
女歌舞伎、踊りなどだけを単独に描いたものを総称して風俗画と呼んでいる。この
あと、菱川師宣の“見返り美人”、浮世絵版画へと続いていく。京都・江戸の都市
景観、商売の様子、そして踊り、遊興を楽しむ人々の当世風俗が活写された風俗画
をみる楽しさを一度味わってしまうと、その魅力から逃れられなくなる。が、これを
観る機会があまりないので、目が慣れるにはすこし時間がかかる。
日本画における人気ジャンル、絵巻は絵画で物語を楽しむものだが、風俗画の
魅力は、描かれている場面の臨場感と艶っぽさ。熱気溢れる寺社の祭礼行事、狂っ
たように男女が舞う風流踊り、阿国や遊女が演じる歌舞伎に見入る観客、遊里と
いう“悪所”の情景など一つ々のワンショットが実に面白い。今回の作品でこれらが
味わえる。
狩野永徳風の“洛中洛外図扇面貼付屏風”、大和絵の“扇面風俗画”、踊りの
場面が出てくる“邸内遊楽図屏風”、出雲阿国が舞台の中心で踊っている“阿国歌
舞伎図屏風”、“遊女歌舞伎図”。風俗画は描く対象が広大な都市空間から邸内
情景、数人の群像表現へとだんだん絞り込まれてくる。菱川師平の“春秋遊楽図屏風”
は肉筆の浮世絵で、右の“桜下弾弦図屏風”は浮世絵の前の風俗群像図。
女性のふっくらとした顔にほんわかとなる。右手前に藤、画面全体に満開の桜を配
する構図がいい。女性が着ている小袖は桜と美しさを競うかのように色鮮やか。三味線
をひいてる女の柄は緑色の銅銭模様。立ってる女性はかぶき者ファッションには欠
かせない長煙管(キセル)を持っている。今年は風俗画を日本画鑑賞のターゲットに
しているが、出足は好調。
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コメント
こんばんは
わたしはなんと言いましても風俗画、特に遊楽図と洛中洛外図が大好きなのです。
ですからこの展覧会も今からわくわくしてるのですよ~~~
遠いのですが、出雲文化博物館というようなところが割りとよくこうした展覧会をしてくれます。それからたばこと塩の博物館にも良いのが沢山収蔵されてますけど、なかなか展覧会してくれませんね(涙)
来週に見てきます。
投稿: 遊行七恵 | 2006.03.07 22:29
to 遊行七恵さん
サントリー美術館の風俗画は結構見てるのですが、出光のははじめてです。
チラシにも載ってるこの“桜下弾弦図屏風”はいいですね。綺麗な色使い、
構図に見蕩れました。昨年、京博にはよく通ったのですが、迂闊にも徳川
美術館で展示された“本多平八郎姿絵屏風”とか“豊国祭礼図屏風”を
見逃したんです。悔やまれてなりません。
たばこと塩の博物館は一度しか訪ねたことがないのですが、風俗画が
あるならいつか見てみたいですね。また、教えてください。
投稿: いづつや | 2006.03.08 17:58
こんばんは。
今年は風俗画を沢山見るぞ~と言挙げなさってますものね。
わたしは大阪に出光があった頃よく風俗画を見ました。どうも関西での方が遊楽図の展覧が多いようです。京博には狩野博幸せんせがいらっしゃるから、当然ながら風俗図の良いのを沢山みせてくれますしね。淡交社から狩野センセが近世風俗画と言う五巻の凄い本を出版されてまして、わたしは溺愛しています。
たばこと塩ですが、煙管の関連で浮世絵と風俗画はちょっとやそっとやないレベルの高いものをかなり沢山所蔵しています。
しかし建物の工事があるのでしばらく予定が狂うみたいです。
あと奈良ですが大和文華館、奈良県立美が色々と。風俗研究家の吉川観方が奈良県美に沢山寄贈しているので、師宣とかも多いのですが、凄いです。
四月から京博では大絵巻展が始まりますよ。
とても楽しみです。
投稿: 遊行七恵 | 2006.03.09 00:20
to 遊行七恵さん
ココログのメンテナンスが長引き、返事が遅れて、すいません。たばこと塩の
博物館で歌麿のいい絵を観たので、その後HPでチェックしているのですが、
期待の展覧会がありません。
京博の“大絵巻展”は見逃せませんね。“18世紀京都画壇展”、京近美の
“フンデルトヴァッサー展”も見たいので4月上旬、出かけるつもりです。
投稿: いづつや | 2006.03.10 16:48
こんばんは
やっと出光にゆけました。
TBも通りました。なんとなく嬉しいです。
いよいよお花見のシーズンですね。
わたしもあの遊楽図のように楽しみたいものだと思っております。
投稿: 遊行七恵 | 2006.03.22 22:46
to 遊行七恵さん
出光の風俗画展を楽しまれてなによりです。“桜下弾弦図屏風”にでて
くる女性のふっくらした顔、衣装、そして満開の桜にますます惹きつけられ
ます。いい絵にめぐり会え、大変喜んでます。これが日本の春の楽しみ
かたですね。
投稿: いづつや | 2006.03.23 10:01
いづつやさん、こんばんは
出光の記事がようやくできましたのでTBさせていただきました。
一言で「風俗画」と言っても様々なジャンルがありますが、やはり華やかな遊興の絵のほうに惹かれますね。
今回出展されていた“やまと絵”による洛中洛外図は細かい描写ながらとても興味深かったです。あのような繊細な感覚はやはり扇面の画面だからこそ生きているのでしょうか?
屏風絵のものがあったら、さらに面白い画面になったかも、とも思いましたが、いやはや興味は尽きませんね。
投稿: アイレ | 2006.04.15 21:13
to アイレさん
洛中名所図扇面貼付屏風を制作したのは永徳の8歳年下の弟、宗秀ですが、
その細かい描写は永徳の“洛中洛外図屏風”(国宝、上杉本)とよく似てます。
昨年、米沢市博物館で上杉本をじっくりみましたので、このあたりはすぐ
連想できます。
宗秀は兄の描いた屏風の場面々をいただいて手軽に楽しめる扇面に仕立てた
のではないでしょうか。洛中洛外図には昔の人がどんな仕事をし、どんな日常
生活を送ってたかがしっかり描かれてますから、観てて楽しいです。
投稿: いづつや | 2006.04.16 08:13