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2006.03.17

東博地獄劇場 三幕

333東博地獄劇場の三幕は現在、本館2階の国宝室に展示してある“地獄草紙”(4/9まで)。

これをはじめてみたのは14年前なので、罪人が真っ赤な炎につつまれて苦しむ様子しか覚えていない。地獄絵というとすぐ、怖い獄卒の鬼が罪人を容赦なく責めたてる場面をイメージするが、この絵巻では鬼の残虐性が強く印象づけられるような画面構成にはなっていない。

四つの場面のうち鬼がでてくるのはひとつだけ。が、鬼はそんなに沢山でてこなく
ても、この地獄の様はおぞましく、恐ろしい。とくに最初の二画面はかなりグロテス
ク。“髪火流地獄”(はっかる)は剥落してる部分があり、注意してみないとこの
罪人は誰に何をされてるのかがわからない。裸の男の頭に食いついてるのは鷲で、
頭蓋から脳髄を吸い取っている。地塗りの墨にしたたり落ちる赤い血が痛々しい。
足も犬に食いちぎられ、地面に血がべっとり。この男が生前に犯した罪業は酒を
与えたこと。

隣の“火末虫地獄”(かまつちゅう)もあまり正視できない。画面中央に横たわる
男女の体は大きな血の斑点だらけ。体からわいた虫に食われ、苦しみ、もだえる
場面である。昔、酒に水をまして売ったのがいけなかった。画面いっぱいに燃え
上がる炎が目をひくのは“雲火霧地獄”(うんかむ)。炎の端に鬼が2人いて、罪人
を火の中に追い立てている。やがて、足から頭まですっかりとけてなくなるが、
火の中から罪人をひきあげると、再び生きかえる。この責め苦が10万年も続く。
どんな悪いことをしたのか?他人に酒をすすめて酔わせたうえ、からかったり、
ふざけたり、おもちゃにして笑いものにしたから。やはり連続したイジメは刑が加算
される。

右は最後にでてくる“雨炎火石地獄”(うえんかせき)。上半分は炎が吹き出す
焼け石が天から降り注ぎ、罪人を打ちのめすところ。これだけをみると浅間山の
大噴火か空から隕石が落ちてきた場面のよう。下の赤い部分は煮えたぎる金属
と血の入り混じった河。罪人はこの熱沸河(ねつふつが)でつねに泳ぎつづけ
なくてはいけない。ここにいる罪人は、酒でもって旅人を酔わせ、宝物を奪い、時
には命をもとったため、地獄に落とされた。

人々をすばらしい楽園である浄土に行かせるため(欣求浄土)には、汚くて恐ろ
しい穢土(えど)には行かないぞ(厭離穢土)ということを決心させるのが先。で、
地獄の恐怖、獄卒の非情さ、罪人の悲惨さを見せつける怖い地獄絵が描かれた。
一幕は(拙ブログ05/12/12)、二幕は(06/2/21)。

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コメント

いづつやさん、地獄草紙と五百羅漢見てきました。日本人の遺伝子の奥に潜む怖さでしょうか。
http://cardiacsurgery.hp.infoseek.co.jp/JA06.htm#060317

投稿: とら | 2006.03.19 21:52

to とらさん
地獄草紙を久しぶりに観ました。現世で悪行をなすと、地獄に落ち悲惨な
目にあうことをわからせるために、絵師たちは想像力を研ぎすましてこんな
凄惨な場面を描いたのでしょうね。それでも悪い癖が直らない人間も多かった
でしょうが。

投稿: いづつや | 2006.03.20 16:42

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