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2006.03.16

亜欧堂田善展の狩野一信

332府中市美術館は東京都現代美術館とともに現代アートのメッカと思っていたが、それだけでないことがわかった。

現在開催中の企画展は江戸時代の洋風画家、亜欧堂田善(あおうどうでんでん)の回顧展(4/16まで)。

司馬江漢なら名前を知っているし、洋風の銅版画を何点か観たことがある。だが、亜欧堂田善の作品はこれまで見た記憶がない。江漢より1歳下という。

知らない絵師の展覧会を見に行くのはかなりリスクがあるので、いつもなら足を運
ばないが、今回はちょっと事情が異なった。開幕する前に館のHPで出品作を眺め
ていて、とても気になる作品を発見した。もちろん亜欧堂の作品90点がメインの
売りではあるが、このほかに風景画や風俗画のなかに程度の差はあるが、洋風表現
を取り入れた絵師たちの絵が50点ばかりある。主催者には申し訳ないが、このサブ
の絵に是非見たいのがあり、ちょっと遠い府中まで出かけることになった。

その絵とは渡辺崋山作、“千山万水図”(重文)と今、東博でホットな絵、狩野一信
の“五百羅漢図”、そしてこれはオマケだが広重と国芳の浮世絵。“千山万水図”は
縦長の大きな着色山水画。S字を何回も書くように、山々、河、海が上に連なっていく。
俯瞰の視点なので雄大な空間表現は見ごたえあるが、画面下に大きな瀑布があり、
真ん中当たりに舟が行き交うのをみると、こんな光景は実際存在するのかな?と
頭の中が混乱する。何かの本に渡辺崋山の代表作としてこの絵がたしか載っていた。
思いもかけぬところで出会った。これは大収穫。

亜欧堂田善を横におき続けて悪いのだが、右の“五百羅漢図”をなんとしても目に
焼くつけたかった。これは増上寺が所蔵する大きな“五百羅漢図”の1幅で、“45幅
十二頭陀節食之分”(部分)。3/28~4/16にもう1幅、“50幅十二頭陀露地常座”が
展示される。なぜこれが、この展覧会にあるかというのは羅漢や童子の姿の描き方を
みればわかる。西洋画法の陰影が用いられている。手前で向かいあってる童子の
足元の影と童子の掲げる炎に照らされた赤い衣装のコントラストがすごい。東博のほう
に見られる陰影はこれほど強くはないので、異様な感じはそれほど伝わってこなかっ
たが、炎の影のなかにすっぽり入った大人のよう顔をした童子の視線がなんとも
不気味。

レンブラントやカラヴァッジョを彷彿させる光や影の描写が“五百羅漢図”で見られる
なんて夢にも思わなかった。狩野一信、恐るべし。

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コメント

僕も日曜日に観てきました。
狩野派の作品に影の表現があるなんて知らなかったです!
ところで講談社学術文庫の新刊「近代日本「美学」の誕生」という本を買ってきました。
岡倉天心の美学には足利時代を日本の美学の絶頂と見て、後はそれからの退廃とする考えが日本の美意識の原型を占めるようになったことが書かれています、侘びさびの時代ですね。
狩野派が陰影を取り入れていたことはそういう時代意識への反論とも考えられるのではと。

投稿: oki | 2006.03.16 22:40

to okiさん
亜欧堂田善の画風が好みか?と問われると、そうでもないですね。ただ、4/4
から展示される油彩画、“浅間山図屏風”(東博蔵)は是非見たいですね。
この絵で評価が変るかもしれません。

狩野一信の“五百羅漢図”に会ったのは、エポック的な出来事のようにおも
ってますので、今、この絵に集中してます。とくにこの絵の強烈な陰影に
驚いてます。一信の頭にはまだちょんまげがついてますが、絵にたいする
考え方はもう近代人ですね。こんなキツイ明暗で画面を構成するのですから、
うなってしまいます。相当な画家ではないでしょうか。
ご案内の“近代日本・美学の誕生”を本屋で探してみます。

投稿: いづつや | 2006.03.17 15:17

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