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2006.02.21

東博地獄劇場 二幕

309東博で現在、かなり怖い仏画が飾られている。狩野一信(1815~1863)という幕末の絵師が描いた“五百羅漢図”。

拙ブログ05/12/12で勝手に名づけた東博地獄劇場の二幕が開幕した(3/26まで)。“十六羅漢像”(国宝)はここでよく展示されるので、目が慣れてるが、羅漢図の最大ヴァージョン、“五百羅漢図”は過去、みたことがない。

全国にいくつかある石像の五百羅漢は写真で知ってるが、仏画は一体何点ある
のだろうか?別冊太陽の“狩野派決定版”(平凡社)で狩野一信が描いた“五百羅
漢図”に強い衝撃を受け、昨年ここで展示があると聞いたとき、てっきり増上寺
所蔵の“五百羅漢図”をみせてくれるのかと跳びあがるほど喜んだ。が、これは
早とちりだった。今回展示されてるのは東博にある小型版の“五百羅漢図”。

狩野一信は2つ制作したようだ。どちらが先に描かれたかは確定してないが、増上
寺版の前の試作画という説もある。全部で50幅。一幅に2つの絵が描かれ、羅漢が
5人ずついる。もちろん地獄の絵で埋め尽くされているわけではない。竜宮城の
ような世界もあるのでご安心を。仏教の究極の悟りを得た在家の聖者である羅漢の
修行の様子や自慢の神通力を披露する場面が沢山でてくる。宗教話には悪鬼を
やっつけたり、人を助けたりするスーパーパワーの場面が必ずでてくる。やはり奇跡
が起こらないと、人々は目覚めない。

狩野一信は伝承された五百羅漢図や物語を下敷きにして、絵画化したのだろうが、
この表現力は尋常ではない。人物や動物の精緻な描写とオンリーワンの超想像力
で、観る者を惹き付けてやまない一信ワールドをつくった。このあたりまでは、“わー
おもしろい、大蛇の口の中で羅漢が座っている!”と体は自然に画面へ近づいていく。

が、“六道”あたりになると、体はちょっとずつ硬くなってくる。右はその“地獄”。左下
にいる火を吐く大蛇と獅子は迫力満点。浮世絵師、歌川国芳が得意とした武者絵の
世界にちょっと似ている。右のほうでは楽しそうに大釜を煮ている獄卒の鬼とは
対照的に、痩せこけて頭髪もバサバサの罪人が苦しみ、泣き叫んで救いを求めて
いる。“地獄二”、“鬼趣”の場面はもっと怖い。気の弱い人は見ないほうがいいかもし
れない。“六道”のほかでは、陰影法で表現した奇怪な暗さと羅漢の不気味な面貌に
ドキッとする“十二頭陀”もあまり長くはみれない。

狩野一信の“五百羅漢図”は伊藤若冲や曽我蕭白の画風の匂いもする怪しい仏画
である。一回の鑑賞ではとても済みそうにない。

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コメント

いづつやさん、こんにちは。
遅ればせながらTBさせていただきます。
まだまだ私の知らない世界があるようで、ここに一人新たな画家=狩野一信の名が加わりました。
それにしても今まで見たことのない凄さで驚くことしきりです。
あの心に不安な感情をもたらす画面構成はどうやって培われたのでしょう?興味はつきません。
府中市美術館でも展示があったとか。いやー、それは私も見たかったです。

投稿: アイレ | 2006.03.21 17:08

to アイレさん
狩野一信に今鑑賞のエネルギーを相当注ぎ込んでます。面白いもので
京博の平常展に出かけたとき、明兆の描いた“五百羅漢図”(1358、
東福寺蔵)がありました。そこに東博の30幅(神通)と同じ大蛇の口に羅漢
が座る1幅がありました。明兆のは大蛇の口につっかえ棒がしてありました。

その画風は一信のように不安な感じや不気味なイメージをいだかせるもの
ではありません。異様な雰囲気をもったこの五百羅漢図を地獄絵の
カテゴリーとしてみてるのですが、描法は浮世絵師、歌川国芳の武者絵の
感じです。不安な感じを出すためには、西洋画の陰影法がもってこいと思った
のでしょうか?まだまだ謎の部分が多いですね。府中市美術館で3/28から
もう1幅(東博の25幅)が展示されますので、楽しみにしてます。

投稿: いづつや | 2006.03.21 22:35

こんにちは、いつも楽しく読ませてもらってます。
先日ハイビジョンの特集で狩野一信の五百羅漢図をやっていました。
2011年に100幅そろって展示される企画が進行中とのこと。
自分もいづつやさんのサイトで五百羅漢図のことを知ったので、情報まで。

投稿: 蛙旅団 | 2008.10.17 09:26

to 蛙旅団さん
はじめまして。2011年に一信の五百羅漢図が
全部展示されるのですか!それはビッグ・ニュース
ですね。教えていただいて心より御礼申し上げます。

東博に2点ほど展示されてましたが、あの大きな
掛け軸がどどっと飾られるのを想像しただけで興奮
します。待ち遠しいですね。有難うございました。

展覧会のときは五百羅漢図ネットワークをつくりたい
ですね。これからもよろしくお願いします。

投稿: いづつや | 2008.10.17 22:14

度々すいません。。
港区立港郷土資料館からDM届きました。
特別展「悠久の旅人3過去から、そして未来へ港区指定文化財30年の軌跡」で増上寺の五百羅漢図が出品されてるようです(まだ見れてません)
でも、主な出展予定資料を見ると、すごいレパートリーのようです。
http://www.lib.city.minato.tokyo.jp/muse/j/muse_news.cgi?id=74
これが無料とは信じられません!
もし見学されたら、報告よろしくお願いします。

投稿: 蛙旅団 | 2008.10.21 15:23

to 蛙旅団さん
港区立港郷土資料館へは一度浮世絵をみに行き
ました。ここで五百羅漢が出てたとはNOマーク
でした。重ね重ね情報有難うございます。
美術館の訪問日程をちょっと組み替えてみます。

投稿: いづつや | 2008.10.21 22:51

今日行ってきました。
五百羅漢図、2幅とその下図(これは大松寺所蔵)が展示されてました。
下図もちゃんと残っているんですね。
2011年の展示の時にはこれも合わせて展示して欲しい、と切に思いました。
その隣にあった、阿弥陀三尊図も良かったです。
あと長沢芦雪の屏風もあったりして、穴場だ、コレは!と思いました。
五百羅漢図の展示は11/3までです。

投稿: 蛙旅団 | 2008.10.24 18:37

to 蛙旅団さん
行ってこられましたか。五百羅漢図、見たい
ですね。来週訪問することにしてます。記念展
のときはどこでもいいのを出品しますから、
見逃せませんね。情報有難うございます。

投稿: いづつや | 2008.10.25 14:28

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特集陳列「幕末の怪しき仏画−狩野一信の五百羅漢図」 2月26日 東京国立博物館(〜3月26日)  実は3月3日の記事「お雛様と日本の人形」と同じ日に観覧してきました。記事にしなかったのは、今まで見たことのない種の絵画だったため、どう説明すべきか言葉が見つからな....... [続きを読む]

受信: 2006.03.21 16:26

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