美の伝統展の玳玻天目茶碗
“美の伝統展”(東京美術倶楽部)の後期(2/26まで)にでかけた。
近代日本画、洋画、屏風、中国陶磁器は通期で出品されてるが、近代陶芸家の作品と国宝室の展示に一部入れ替えがあった。NHKが新日曜美術館でとりあげたためか、会場はかなり混んでいる。
近代の陶芸家では荒川豊蔵、楠部彌弌と民芸派の河井寛次郎、濱田庄司の
優品が後期にでている。なかでも白地に黒の釉薬で太い縦線をさっさと流し掛け
た濱田庄司の大鉢が目を惹く。国宝室には東博の特別展ではないかと錯覚す
るほどの贅沢な美術品がずらっと飾られている。前期の雪舟の代表作、“秋冬山
水図”(東博)に替わり、今でているのは中国南宋時代の花卉図、“林檎花図”
(畠山美術館)。これは待望の絵。左斜め上にのびる枝に咲く白の花がとて
も美しい。
根津美術館所蔵の名品、“鶉図”と“布袋図”もある。今にも動き出すのではないか
と思わせるほどこの鶉はリアルに表現されている。“布袋図”ははじめてみた。
口を大きく開けて笑う様は見てて気持ちがいい。こういう絵なら何時間でもつきあい
たい。が、混んでるので、係員の“間隔をあけずに前へお進みください”という案内
を聞き流すわけにはいかない。
で、お目当ての右の“玳玻天目茶碗”(たいひてんもく、南宋、吉州窯)をじっくり
見たいがために狭い部屋を3回まわった。長らくこの天目茶碗に会えるのを待った。
図録でみるより本物は意外に小ぶり。玳玻とは鼈甲(べっこう)のこと。外側が
黒地にかける釉が黄斑に発色し、あたかも鼈甲に似てることからこの名がうまれ
た。見込みには綺麗に散花紋様が描かれている。多くの人がこれを賞賛する
のがわかる。200%堪能した。この先、相国寺承天閣美術館で定期的に展示さ
れるようなので、また見る機会があるかもしれない。こんな名碗には何度でもお目
にかかりたい。
コメントをいただいたあかねさんの疑問、鏑木清方の“いでゆの春雨”に描かれた
女性が頭に白い紐をまいてる理由がわかった。倶楽部の人の話だと、この絵は
温泉からでてきた女性が橋の上でちょっと休んでいるところを描いたもので、白い
紐をまいてるのは髪につけた鬢が流れないようにするため。この絵は展覧会にでる
のははじめてらしい。代表作、“築地明石町”に負けず劣らずの名品と高く評価
されてた。そんな感じがする。
ついでに“築地明石町”の所在を尋ねてみると、過去、横浜美術館であった鏑木
清方展に出品されたのこと。行方知れずということではないようだ。いつ会え
るかわからないが、希望がもててきた。concernして、気長に待つことにしよう。
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コメント
こんばんは。
昨日の朝イチに行って来ました。
二時間後、外に出たら入場制限してました
後日TBさせてもらおうと思います。
写真の玳玻天目茶碗は元は私の地元・萬野美術館にありましたが、今は全て承天閣にゆき、数年ぶりの再会になりました。
懐かしく思いました。
本当によいものを見せてもらったと思います。
投稿: 遊行七恵 | 2006.02.20 21:04
to 遊行七重さん
日本美術の名品を一度にこれくらい沢山観れる展覧会はめったに無いですね。
大阪からお出かけになる気持ち、よくわかります。“玳玻天目茶碗”は承天閣
に移ってから、はじめての公開らしいですね。やっとこの名碗に会えました。
また、京都で観れればいいのですが。感想記を楽しみにしてます。
投稿: いづつや | 2006.02.20 23:00
いづつやさん、こんばんは。
私も前期と後期を観てきました。いづつやさんも満足されたように、やはり「玳玻天目茶碗」はお洒落な茶碗でしたね!唐物のオーラを感じてしまいました。それから、畠山記念館の「林檎花図」にも、こんなに早く合えるとは思ってもみませんでした。前期、後期とも、、私的にしっかり楽しめた展覧会でした。で、TBさせていただきますね(^^ゞ
投稿: June | 2006.02.24 00:25
to Juneさん
期待の“玳玻天目茶碗”に大変魅せられました。これで国宝に指定され
てる茶碗8点のうち、7点まできました。残るは京都、龍光院所蔵の
“曜変天目茶碗”。何年後に会えるでしょうか?
とにかく頭の隅っこでもいいから、念じることが大事なんです。美術品て
おもしろいです。こちらの観たい気持ちが薄くなると、だんだん遠くなり
ます。不思議ですね。ですから、思いを切らないようにしてます。
投稿: いづつや | 2006.02.24 13:38