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2006.02.15

歌川広重の高輪之明月

303太田記念美術館の開館25周年を記念して昨年1月からはじまった企画展は今回の名品展後期(2/1~26)で終了。

浮世絵の専門館だけあって作品のレベルは高く、画集に載ってる北斎、広重、歌麿などの風景画や美人画をたっぷりみせてもらった。

巧みな構図や細かな人物表現など絵自体が素晴らしいだけでなく、初摺りの版画
が多いので、色が鮮やか。よくでた青や朱に感激する。浮世絵というのは面白い
もので、北斎展に出品されたギメ、メトロポリタン蔵や東博、太田記念館、MOAに
ある摺りの状態のいい版画を一度観てしまうと、色の少し落ちたものでは満足でき
なくなる。たとえ広重の名画でもそういう気分になる。

後期に展示されてるのは71点。前期になかった広重のいい風景画が3点ある。
東都名所から右の“高輪之明月”と“日本橋雪中”。そして、名所江戸百景の“深川
州崎十万坪”。“東都名所”は広重が風景画に目覚めるきっかけとなったシリーズ
で、広重35歳のときの作。2年後に出世作“東海道五十三次”を刊行する。“東都
名所”と同じ年に北斎の“富岳三十六景”がでており、その奇抜な構図や鮮やか
な色彩に広重は刺激を受けたと思われる。

“高輪之明月”は広重の風景画のなかではお気に入りの一枚。前面に飛翔する9羽
の雁と左へ大きく湾曲する海岸線を対比させ、奥行きのある画面をつくっている。
この大胆な構図にしびれる。雁が一羽、大きな月にかかるところも憎いほど上手い。
こういう前景の対象をクローズアップして、遠景の広がりを強調する広重独自の
画風がその斬新さを一段とますのが最晩年に制作された“名所江戸百景”。ハット
する絵が何枚もあるなかで、意表をつく構図で目を惹くのが“深川州崎十万坪”。
縦絵の上のほうで巨大な鷲(わし)が羽を広げて下の海面を見ている。絵に近づいて
観てると、自分が鷲になって空を飛んでるのではないかと錯覚する。

広重の名作だけでなく、歌川国芳の銅版画を思わせる風景画にも魅せられる。とく
に荒れくるう馬の端綱(はづな)を足で踏みとどめて鎮めたという怪力の遊女お金を描
いた“近江の国の勇婦お兼”が面白い。

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コメント

昨年見た時、同じ絵に注目しました。このような視点をもっていた江戸の人たちがいたからこそ、明治に入った日本に飛行機を飛ばそうという意欲が生まれたのではないかとも思いました。

投稿: | 2006.02.16 20:29

to 郁さん
広重の“高輪之明月”は傑作ですね。飛翔する雁の描写に参ります。
郁さんがおっしゃるように自分がまさに上空をとんでる感じになりますね。

前景の対象物を大きく描く構図がより効果的なのは“名所江戸百景”の
ような縦絵ですが、こちらはワンショットの楽しさなのに対して、“高輪之明月”
は動きが入った映画の一シーンをみるようです。

投稿: いづつや | 2006.02.17 10:33

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» 広重というドキュメンタリー作家 [日本の美術・アジアの美術]
 ゴッホ展を見る時「やはり、浮世絵を見なくては」と思ったので、原宿の大田美術館 [続きを読む]

受信: 2006.02.16 20:19

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