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2006.02.14

谷内六郎展

302今、横浜そごうで開かれている“谷内六郎展”(2/26迄)で懐かしい週刊新潮の表紙絵を沢山みた。

表紙絵には愛着を覚えるのに、これを描いた画家はこの展覧会の情報を入手するまで知らなかった。日本の画家のことは恥ずかしいくらい弱い。

谷内六郎がこれを手がけていたのは1981年までだから、電車の中吊りからこの絵が消えてもう25年になる。記憶に
残ってる表紙絵のイメージは最近みた原田泰治が描いたような日本の原風景。で、
可愛い子供が出てくるノスタルジックな風景画に再度浸ろうと1点々ふだんより
時間をかけてみた。

そのうち、この画家はシャガールのような幻想画家で、ダリやマグリッドのような
シュルレアリストではないかと思えてきた。目の前に面白い絵が何点も現れる。
子供の頃、同じようなことを感じたなと共感する場面では思わず笑ってしまう。
幼いころ持っていた豊かなイマジネーション力を大人になっても発揮できるのは特
別な才能ではなかろうか。谷内六郎は子供が夢にみることや想像することをドキリ
とするような画面構成でみせてくれる。

登場する子供の表情はあくまで純真で、場面設定はサザエさんにでてくるような
普通の家庭の光景であったり、メルヘンティックな夢の世界であったりするので、
さらっと見てしまいそうだが、ダリやマグリッドが真っ青になりそうな絵もある。感心
したのは、まず“人買いの話”。画面の上にある長い影がでた一本の黒い木で
恐ろしい人買いを象徴し、木の隣に子供が履いていた赤いサンダルだけがある。
のっけから谷内六郎はこんなシュールな絵を描いてたの?とあっけにとられた。

ほかに面白かったのは“髪の毛のスキーヤー”。床屋で散髪中の女の子がかけて
る白い布の上を大勢のスキーヤーが滑っている。画家は髪の毛が落ちるのを見
てゲレンデを想像した。“湯気に音”では火鉢にのっかってるやかんの注ぎ口の先に
煙をだして走る蒸気機関車が描かれている。シャガールの絵のよう。

右の絵の題名は“ラッシュアワー”。ダリの“記憶の固執”にでてくるアリをすぐ連想
した。混雑している情景が一目でわかる。ユーモアあふれる絵やああーこんな光景が
昔あったなと思い起こさせてくれる絵のなかにまじって、びっくりするようなシュール
な絵が出てくると嬉しくなる。子供のような想像力から生み出された谷内六郎の
心温まる作品を十二分に堪能した。

なお、横浜展が終了すると次の会場を巡回する。
・北海道立旭川美術館:4/8~5/14
・名古屋松坂屋:07/1/2~1/23

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コメント

昔雑誌の表紙や何かで思わず微笑むような絵を拝見していたものですが、一度この様にまとまったもの見てみたい気持ちになりました。

投稿: seedsbook | 2006.02.15 15:25

to seedsbookさん
週刊新潮の表紙を飾ってた絵は、戦後の復興期から高度成長期のころ
子供たちが抱いた夢や感情を(谷内六郎の視点でもある)見事に表現し
てます。今、こういう絵をじっくりみる機会にめぐまれたことを喜んでいます。

写実的な絵ばかりがインプットされてたのは、単純に昔はシュールさが
わかる絵心がなかったという証でもあります。今回展示されてた鮮やかな
色彩で描かれた幻想的な絵や、柔らかい頭をしてるなと感服させられる
作品にはシャガールやダリ、マグリッドの絵と変らぬ美しさや楽しさが
ありました。

一級の芸術家といわれる人は皆年を重ねても子供のような想像力を
持ち続けていますね。創造の源は幼い頃の豊かなイマジネーションにあ
るような気がします。

投稿: いづつや | 2006.02.15 16:49

僕も観にいってきました。
ちょうど「週刊新潮」が創刊五十周年ということで、谷内の未発表の表紙絵を載せてますね。
僕は初期のこの人の作品にムンク的なものを感じましたが、「ノイローゼで皿を破る」など、確かに通ずるものがあるのかなと。新潮社は無名の画家を表紙に起用したのですからたいしたものです。

投稿: oki | 2006.02.16 23:00

to okiさん
原田泰治の情趣豊かな画風と谷内六郎の絵が重なって見えたものです
から、日本の懐かしい風景パート2に期待してました。この思いを充分に
満たしてくれただけでなく、随分シュールな世界を見せてくれました。

ダリやマグリッドも驚嘆するのではないかと思われるほどの谷内六郎の柔ら
かい発想に拍手々です。同じシュールな絵でも、ドキリとするのは日本のシュル
レアリスト、三岸好太郎、北脇昇、浜田浜雄らの絵より谷内六郎のほうですね。

ぜんそくで体調が悪かったときは、思うように絵が描けず、精神が不安定
だったのでしょうね。okiさんがおっしゃるようにムンク風な絵になってますね。
週刊新潮の表紙絵を描いてるときの体調は良かったのでしょうか?ユーモア
全開ですね。“鉄道員”の前では思わず“鉄道員、ちっちぇーの!”と大笑いし
てしまいました。画題に共感するところが多く、心が洗われました。

投稿: いづつや | 2006.02.17 11:52

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