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2006.02.19

よみがえる源氏物語絵巻展

307昨年11月、名古屋の徳川美術館で大変感動した“源氏物語絵巻復元模写”を全点みせてくれる展覧会が五島美術館ではじまった。

徳川美では展示替えで19点の模写のうち半分しかみれなかったので、この“よみがえる源氏物語絵巻展”(2/18~3/26)の開幕を心待ちにしていた。初日の10時ちょっとすぎに着いたのに、すでに大勢の人が来場し、鑑賞は牛歩スタイルになっていた。

名古屋で原画と模写をじっくりみて(拙ブログ05/11/14)、復元模写の素晴らし
さがわかってるので、今回は現在の絵師たちが再現した鮮やかな色彩、衣装の細か
い文様、そして登場人物の微妙な恋愛感情を表現した顔の表情や全体の構図を
前回よりも深く摑みとろうと目に力を入れて見た。五島美が所蔵する4点の原画が
併せて展示されるものと期待していたが、残念ながら復元模写だけだった。現在、
“美の伝統展”(東京美術倶楽部、2/26まで)に“夕霧”がでている。原画は“春の
優品展”(4/29~5/7)にでてくるようだ。

絵巻の展示が徳川美と異なっており、まず、詞書を省いた原画のデジタル画像が
あり、その横に1958~63年にかけて描かれた最初の復元模写、最後に出来る限
り原画と同じ素材、同じ技法で制作された平成の復元模写がある。剥落、褪色が
かなりある原画をこの絵巻が描かれた12世紀前半の状態に復元するというのはと
てつもなく難しく、シンドイ作業だと思うが、6年がかりで復元チームは完成させた。

45年くらい前に描かれた模写と較べると、今回の模写がいかに優れているかがわか
る。色の違いもあるが、衣装の文様などを精緻に描いてるところが大きな進歩。これに
は肉眼では無地にみえる衣装に、特定の波長の光をあて蛍光の形で鮮やかな文様
を浮かびあがらせる最新のデジタル画像が威力を発揮した。こうした最新の科学
技術を使って得られた色や形の情報を充分に消化し、なおかつ実際に絵巻を描いた
平安時代の絵師の想像力や表現力を汲み取るかたちで日本画の修復家は絵を再現
していった。

右は“竹河(二)”。女房や男性貴族が真ん中に咲き誇る桜をとりかこむ構図が秀逸。
右の御簾の前にいるのは左端で妹の中君と碁の勝負に興じてる大君に恋する蔵人少
将。原画では、正面右にいる女房の着ている装束の柑子色(こうじいろ、黄みオレンジ
色)がよく残っている。また、裳にみえる糸巻き文様の青線と手前にいる女房のうす
ねずみ色の地に流れる青が印象的。

19枚の絵には平安の洗練されたファッションセンスが表れた衣装の文様だけでなく
興味深い描写がいくつもある。季節によって変る道端、庭や垣根に咲く草花もそのひ
とつ。草花は画面を構成する大事な要素だけでなく、描かれている人物の恋に悩む心
情を代弁したり、運命を暗示する役目も担っている。“蓬生”の藤の花、“御法”の風
に揺れる萩、“竹河(一)”の凛として垂直にのびる紅梅、“宿木(三)”の秋を感じさせ
る薄など。

物語のことをイメージしながらこの絵をみてると何時間たってもこの場を離れられなくな
るので、ほどほどで引き上げた。王朝の美意識がつまった華麗な源氏物語絵巻の復
元模写に再度拍手々。

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コメント

初めまして。
ときどき読ませて頂いています。

内容と関係ないことでお訊ねしたいことがあります。
わたしのブラウザで読むと、文章が途中で行替えになってとても読みにくいのですが、文章の途中で行替えを入れていらっしゃるのでしょうか?

内容が読み応えあっておもしろいので、うまい具合に読めるといいなと思い、書き込みました。

投稿: ぱぐ | 2006.02.19 22:27

to ばぐさん
はじめまして。書き込み有難うございます。右にびっちりつめて書くのが
嫌なものですから、自動的に行が替る前に行替えをしてます。そうすると、
行がころころ替ることになる?そのあたり、よく分かりません。

投稿: いづつや | 2006.02.20 00:36

いつも楽しく拝見させていただいております。このたび、『名画のぬり絵』という本を出版しましたので、謹呈させていただきたいと存じます。宛先等をお知らせ願えれば、幸いです。

投稿: 内田勝晴 | 2006.02.20 16:00

to 内田勝晴さん
はじめまして。書き込み有難うございます。出版された本を謹呈していた
だけるという誠に有難いお話しなのですが、折角のおきづかいに対し、
非礼を申しようですが、お気持ちだけをいただこうと思います。

投稿: いづつや | 2006.02.20 17:02

“美の伝統展”で“夕霧”を観ました
五島美術館いくのが楽しみです

ところで、静嘉堂美術館というのをここにあったパンフレット初めて知りました
http://www.seikado.or.jp/sub0202.htm
4月8からの展覧会に尾形光琳の紅白梅図まであるのには、
MOA美術館になかなかいけない私には嬉しくなりました

投稿: えみ丸 | 2006.02.23 12:27

to えみ丸さん
五島美術館所蔵の原画も展示してあれば最高だったのですが、今回は
復元模写だけでした。静嘉堂文庫にでてくる光琳の“紅白梅図”は
MOA所蔵の国宝ではありません。光琳の紅白梅図は出光美術館にも1点
ありますから、これも別ヴァージョンではないでしょうか。

投稿: いづつや | 2006.02.23 18:06

>MOA所蔵の国宝ではありません

それは期待しただけに残念です
いろいろあるのですね、教えてくださりありがとう
でも、昔写真で観てはっとした
ふっくらした綺麗な硯箱が出ているので行ってみます
娘の下宿先から自転車でもいけそうな距離ですし・・(^^)

投稿: えみ丸 | 2006.02.23 20:38

to えみ丸さん
3年ぶりに宗達の国宝が出品されますから、鑑賞が楽しみです。それに待っ
てた“平治物語・信西巻”(重文)もでますので、ワクワクしてます。

投稿: いづつや | 2006.02.23 23:07

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» 「よみがえる源氏物語絵巻展」 [弐代目・青い日記帳]
五島美術館で開催されている 「特別展 よみがえる源氏物語絵巻−平成復元絵巻のすべて−」展に 行って来ました。 近年開発されたポータブル蛍光X線分析装置によって鉛、水銀、カルシウム、鉄、銅、銀、金などを調べる最新の科学分析調査に基づく復元模写が今回展示公開されている作品だそうです。 更に図録によると「可視域内励起光による蛍光撮影法」も取り入れ褪色、剥落などにより肉眼では見ることの出来ない着物の模様なども読み取ることができたそうです。 なんて難しい説明をされてもさっぱり分か... [続きを読む]

受信: 2006.03.11 10:57

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