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2006.02.04

ハインリヒ・フォーゲラー

227神奈川県近美・葉山館で行われている“パウラ・モーダーゾーン=ベッカー展”でパウラの自画像に感動したが、もう一点非常に魅せられた絵がある。

ハインリヒ・フォーゲラーが描いた右の“マルタ・フォン・ヘンバルク”。ドイツにおけるユーゲントシュティール(アール・ヌーボー)絵画を代表する一人であるフォーゲラーの絵が出品されてたとはまったく想定外。

00年末、新日曜美術館で取り上げられたフォーゲラーの優美な曲線で描かれたロマ
ンティックな絵をいつか見てみたいと思っていたが、意外な形で実現した。今回の
作品はTVにでてきたような花が咲き、鳥がでてくる中世の伝説や聖書の話を題材に
した作品とは違うが、この横向きの女性肖像画からも生きる喜びや甘美な夢の世界
が伝わってくる。

この絵のモデルは後にフォーゲラーの妻となるマルタ。制作時期は22歳のフォーゲラー
がブレーメンの北東25kmのところにあるヴォルプスヴェーデに移り住んだ1894年。
背景の緑と若々しい顔の肌つや、頭につけた紫の花飾りが絶妙に溶け合い、画面
一杯に広がる緑がマルタをより一層美しくみせている。しばらくぽかんとしてこの絵を
眺めていた。マルタの絵をもう一枚、フォーゲラーは3年後、制作する。“春”と名づけら
れた傑作。白樺の木の中にマルタが立っており、足元にアネモネの花が咲く、柔らか
い色調と流れるような曲線で表現されたアール・ヌーボーらしい絵である。

アール・ヌーボーの作家は多芸。フォーゲラーは絵画だけでなく、生活空間全体に装飾
芸術を繰り広げ、ヴォルプスヴェーデ駅舎の設計、陶器、家具、ナイフ、フォークなど
銀製品のデザインに新しいアール・ヌーボーの図案を使っていく。創作活動の拠点と
なったアトリエ、“バルケンホーフ”(白樺館と呼ばれた)は同じ志をもって芸術村にやっ
てきた画家、詩人リルケたちの溜まり場でもあった。この村に自分のアトリエがあった
パウラもフォーゲラーの新しい装飾的な作風に刺激をうけており、銅版画のプレス機
をかりて版画を制作している。

パウラ展にはフォーゲラーの版画集“春に寄せる”があり、白樺の木やコウノトリ、ツグミ
の精緻な描写に魅了される。前々から観たかったフォーゲラーの作品に接することが
できたのは望外の喜び。

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コメント

いづつや さん

久し振りにフォーゲラーの画を見せてもらいました。2000年12月から2001年3月に東京と大阪で開かれた「ハインリッヒ・フォーゲラー展」に、《マルタ・フォン・ヘンバルグ》と《春》が並んで展示されていたことを思い出します。
その時に家内(t)が書いた短いレポは↓です。
http://cardiacsurgery.hp.infoseek.co.jp/Children3.htm#Vogeler

投稿: とら | 2006.02.05 13:25

to とらさん
こんにちは。フォーゲラーのこの絵と“春”が一緒にでてたんですか。観た
かったですね。残念ながらこの頃、東京を離れてました。今回、フォーゲラー
の銅版画も展示してありました。強靭な集中力で作業したと思われる白樺
の木や草花の細かい描写に見蕩れてました。

投稿: いづつや | 2006.02.05 16:22

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