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2006.02.02

東京ーベルリン展のグロス

2911/28から森美術館ではじまった“東京ーベルリン展”(5/7まで)をみた。

美術館のHPにでている出品リストには、ドイツと日本の作家が沢山出ている。が、名前ですぐわかるのは少ない。東京、ベルリンという二つの都市で花開いた美術、文化を振り返る企画展なので展示品は絵画、写真、建築、版画、ポップアート、オブジェと幅広く集めている。

日本の浮世絵などがドイツの画家に与えた影響やドイツで試みられた実験的な
運動を日本の作家がどのように吸収したかという視点も展示のコンセプトになって
いる。でも、知らない画家が多いので、狙いをあらかじめ決めておかないと足が向
かない。今回の期待はキルヒナーとグロスの2点買い。これにあと2,3点、いい絵
がみれれば申し分ないという気持ちで入館した。

入ってすぐのところにキルヒナーの大作、“ポツダム広場”が飾ってあった。地面
の薄緑と男性とひとりの女性が着る服装の黒が印象的。キルヒナーは濃密な色
と鋭角的な線が特徴の表現主義を代表する画家。顔の表情が描かれてない後ろの
男たちからは都会であじわう孤独感のようなものが伝わってくるが、真ん中の背
の高い細身の女性は顔だちも整い、強い緊張感は感じられない。過去みた濃い
原色で激しいタッチの作品と較べると少し柔らかさのみえる絵である。

これに対し、期待通りなのがリアリズム一杯でドキッとするグロスの風刺画。右の
題名は“社会の柱石”。非常に刺激的でインパクトがあり、一度見たら忘れようにも
忘れられない絵。手前にいる男たちの鼻のまわりには細かい血管が見え、顔はとて
も醜い。ビールを持ってるナチス派と後ろにいる男の頭半分はカットされ、そこに馬に
乗った男や火を噴く山が描かれている。このシュールなロボットのような人間はデ・キリ
コのマネキンの影響。真ん中で両手を前にだしてる神父は戦争の悲劇を嘆いている
のだろうか。一番奥には軍人が4,5人いる。グロスはこの絵に社会の柱となる実業
家、ジャーナリスト、宗教家、軍人を登場させ、悲惨な現状を痛烈に批判している。日
頃縁のないグロスのこんないい絵を見れたのは大きな収穫。

また、プラスαのいい現代絵画が最後のコーナーにあった。一つはフランツ・アッカー
マンの都市を描いた大きな絵。これらは日本人コレクターの所有。天性の色彩感覚と
ユニークな造形に目をつけ、買い入れたのであろう。また、ダニエル・リヒターの2つの
作品にも惹きつけられる。もう一点、リヒターの隣にある作品にびっくりした。どうやっ
てこれを制作したのか?そのことが頭から離れない。見てのお楽しみ。

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コメント

僕も期待を持って行ってきましたが、全体にそこが浅いというか、広くは展示してあるのですが、焦点が定まっていなくてどこに展示の中心があるのかという印象を受けました。
たとえば村上知義などこれ一つで大きな展覧会が開けるという感じで掘り下げ方に物足りない。
展示カタログがまだできていないというのも興をそぐことおびただしい。
どうも不満の残る展覧会でした。
カタログは2940円とか半端な金額なので、一般書店で求められるのでしょうね。

投稿: oki | 2006.02.03 23:52

to okiさん
この展覧会に出品されてる日本人、例えば村上知義などの絵は東近美
の平常展でいつもみますので、馴染みはありますが、特別観たいという
画家ではありませんから、関心はドイツの画家、キルヒナー、ノルデ、グロス、
ベックマンなどの作品にありました。

ですから、希望を言えば、こうした画家の数を多くして、ドイツの作家8割、
日本人2割にして欲しかったですね。気に入ってるモホイ=ナジなどもっと
多くみたかったです。でも、最後のところにあった、アッカーマンやリヒターの
いい現代絵画に出会えたので元はとれました。また、びっくりするような絵に
も遭遇しましたので。

投稿: いづつや | 2006.02.04 14:41

こんばんは。
私も先日行ってきました。
折角いい作品が来ているのに
散漫な印象を与えてしまっていて
もったいなく思いました。

もう少し説明があってもいいですよね。

投稿: Tak | 2006.03.14 22:20

to Takさん
はじめからキルヒナー、グロス、ベックマンの絵がみれればいいかなと
思ってましたので、大きなグロスの絵だけでもOKです。もう少し、分野と
作家を絞ってもいいですね。日本の画家が描くコピー画風には関心が
ないので、どんどんパスしました。ただ1点、東近美の図録にも載っ
てる津田青楓の“犠牲者”に足が止まりました。ドキッとする絵ですね。

投稿: いづつや | 2006.03.15 12:56

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森美術館で開催中の「東京‐ベルリン/ベルリン‐東京展」に行って来ました。 「日本におけるドイツ年」の最後を飾る大規模展と銘打っている割にはかなり不親切な展覧会です。 素っ気なく掴みどころがない展覧会だと既に行かれた方は感想を持たれているのではないでしょうか? 出展されている作品はそれぞれの時代を映し出している代表的なものばかりで、それを一度に時間軸に則って観られるのは嬉しいのですが、、、 いかんせん、あまりにも不親切。 例えば、岸田劉生の「フュウザン会展欄間装飾... [続きを読む]

受信: 2006.03.14 22:19

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