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2006.02.13

森田曠平の出雲阿国

301山種美術館で行われている“歴史画展”(3/5まで)は作品数は少ないものの、品格のある絵が揃っている。

過去にみた絵が何点かあったので、今回はパスの気分が半分くらいあったが、東近美・平常展からの流れで自然に足が山種美に向かった。これが大正解。人気の画家の名作に出会え、大きな満足が得られた。

歴史画の巨匠、前田青邨(6点)、安田靫彦(6点)の作品が圧巻。館自慢の名品
をずらっと展示している。なかでも前田青邨の“大物浦”、“異装行列の信長”、
“腑分”、安田靫彦の“出陣の舞”、“平泉の義経”は歴史画といえば必ず思い浮か
べる作品。青邨が描いた信長はまわりに小姓や従者を大勢従えた群像表現に
なってるのに対し、靫彦は出陣の前、信長が厳しい顔つきで舞う場面を描いている。
信長が着ている衣装がとても綺麗で、白と黄色の地に描かれた飛翔する鳥の
シルエット的な文様はぴりっとはりつめた空気を和らげている。

今回の展示でびっくりしたのが、好きな女流画家、片岡球子の面構シリーズ4点。
昨年あった大回顧展(神奈川県立近美・葉山館)に北斎などを描いた面構作品が多
く出品されてたが、山種美所蔵のものは1点もなかった。でも、ここはちゃんとい
い面構をもっている。とくに“北斎と馬琴がゆく”と“天龍寺開山夢窓国師”に足が
止まる。隅から隅まで眺めていたら面白いことに気づいた。北斎や馬琴の眉毛の
描き方が左右でちがっている。右はシダの葉のようで、左は格子のよう。ええっと
いう感じ。また、馬琴がまとっている着物の襟元の文様も左右で形が異なる。
片岡球子は同じ文様を丁寧に描くのがしんどかったのかもしれない?このアバウト
で自由奔放な表現のほうがかえって片岡らしくていい。

この歴史画展に足を向かわせたのは実は右の森田曠平作、“出雲阿国”。6年ぶり
に会った。江戸時代の初期に描かれた風俗画と較べても見劣りしない、傑作である。
本物を見て以来、この絵にメロメロ。二曲一双の屏風で男装の阿国(右)と一座
4人(左)の舞姿が描かれている。阿国の服装は有職故実の確かな知識に基づ
いているので、江戸のはじめごろ一世を風靡した出雲阿国の“かぶき踊り”はこの
絵のようなものだったのだろう。

金地に映える濃い紫の袖なし胴服とその下の豪奢な衣装に釘付けになる。とにかく
尋常でない異様な格好をするのが“かぶき者”の心意気だから、男装した阿国は思い
っきりファッショナブルにきめている。首から下げてるロザリオは信仰とは関係なく、
かぶき者が身につける定番のアクセサリー。帯にはひょうたんや南蛮人蒔絵が施さ
れた印籠をさげる。“さあ、阿国さんやりましょうか”と一座の者が紅白の蛭巻の大小
(刀)を渡せば、かぶき踊りがはじまる。じっとみていると、1603年の頃にタイムスリッ
プし、阿国一座が踊りを披露している北野天満宮境内に駆けつけたくなった。

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コメント

はじめまして。
今年初めの「東博はつもうで展」のころから、拝見しています。毎日のように精力的に各地の美術展をご覧になり記事にしているので、美術評論の専門家かと思いましたが…見当も付きません。
お陰でいくつかの展覧会を楽しむことができました。
今日も、九段のイタリヤ文化会館へ行ったところ、2時まで昼休みでドアが開きません。どうしようかと思いましたが、山種美術館の記事を思い出して歴史画展をゆっくりと鑑賞出来ました。
二人の信長がよく似ていて同じ方向を向いているが、若いときは口ひげがなかったのかなどと考えてみると面白いですね。
今後も楽しみに記事を拝見しますのでよろしく。
明日は上野でバーク・コレクション展を仲間と見る予定ですが、シルバーデイで無料です。

投稿: 淡々 | 2006.02.14 23:00

to 淡々さん
はじめまして。書き込みありがとうございます。美術鑑賞が好きで美術館
通いをしております。美術評論の専門家になれるほどの知識も見識も
ありません。好奇心に衝き動かされて、色々みてるだけです。

美術館がもってるHPや他の方のブログのお陰で展覧会情報が昔と比べ
格段に効率よく入ってきます。美術鑑賞にかぎらず、コミュニケーション
ツールとしてのインターネットの価値は計り知れないですね。これからも
感動を与えてくれた美しいあるいは面白い美術品をできるだけ多くUPし
ようと思ってます。これからもよろしくお願いします。

投稿: いづつや | 2006.02.15 13:29

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