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2006.02.16

鏑木清方の美人画

304いつものことだが東近美の平常展(後期3/5まで)に出品されてる日本画は見ごたえがある。

東京ではここと東博、山種美に出かければ、近代日本画が楽しめること請け合いだ。東近美は展示のスペースが広いので、作品をゆったりした気分で鑑賞できるのがいい。

沢山ある名画のなかからどの作品を展示するかについては、学芸員も頭を悩ま
すところだろうが、ここは人気のある絵を頻繁に飾ってる感じがする。昨年もこれ
見たよ、というのが安田靫彦が晩年の豊臣秀吉を描いた“伏見の茶亭”。安田は
若い頃から秀吉に興味を持っていたようで、現在、山種美で開催中の歴史画展
にも“豊太閤”がでている。もう一点、昨年、永青文庫で“聚楽茶亭”をみた。
3点のなかではこの“伏見の茶亭”が一番いい。白の羽織につつまれた薄茶の
衣装の文様がとても華やか。左手に紅梅をもつ秀吉の顔は穏やかで、わび、さび
の精神を会得した茶人の姿になっている。

はじめてみる絵ですごいのがあった。東京美術倶楽部で伊東深水作の惚れ惚
れするような美人画を観たが、今回でている大作、“雪の宵”に200%ノックアウト
された。伊東深水の絵でこれほど感動したことはない。積もった雪の質感、傘を
さした二人の女性の美しい姿、灯籠の薄明かり、もう言葉がでないくらい素晴ら
しい美人画である。こんないい絵があるのなら、もっと早く見せて欲しかった。

鏑木清方の“明治風俗十二ヶ月”は季節にあわせて展示される。この時期は1~
4月の4点。縦長の絵のなかでは4月の“花見”が目を惹く。花見を楽しむ女は目
の覚めるような赤の着物を着ている。鏑木清方の美人画によせる気持ちが美の
女神に通じたのか最近、たて続けにいい絵に出会った。鏑木清方の画集を買った
一週間後に、これに載ってた“春雪”を鎌倉の鏑木清方記念館でみた(展示は
2/5で終了)。

次が“美の伝統展”(東京美術倶楽部、2/26まで)に展示してあった右の“いでゆの
春雨”。この絵は昭和18年の作で、“春雪”が描かれたのはその3年後。女性の
顔は良く似ている。大正期に描かれた女性の顔は少しぽっちゃりしているのに対し、
昭和に入ると面長の美人になってくる。描きたい女性の好みが時代の移り変わり
とともに変ってくるのだろう。それにしてもこの“いでゆの春雨”は名作。感激度はか
なり高い。

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コメント

油絵にはない日本美人画のしっとり感、素敵ですね。

機会がありましたら是非、伊東深水の「雪の宵」と鏑木清方の「花見」もアップして見せてください。

それにしてもこの「いでゆの春雨」、どうして頭に白い紐をまいているんでしょうか。なにか意味があるんでしょうか。

投稿: あかね | 2006.02.16 22:34

いづつやさま、お久しぶりです。まずは、クレー展についてTBを送らせていただきましたのでご報告です。クレーの絵が茶室に入るという設定で書いてみました。時間がありましたらお寄りください。

鏑木清方、よいですよね ^^ 最近、岩波文庫の『鏑木清方随筆集 東京の四季』を読み、清方の随筆の才にも惚れこみました。生まれ育った東京下町の風俗と文学をこよなく愛した清方の、四季折々の江戸の風物への思いを綴った59篇と、自筆の挿絵も多数添えられており、清方ファン必携の一冊です。精選された言葉も美しく、清雅な絵巻を見る思いです。

東博にもぜひ出かけてみたいと思います。有難うございました。

投稿: 雪月花 | 2006.02.17 08:16

to あかねさん
鏑木清方の美人画にぞっこんなのです。代表作中の代表作“築地明石町”と
いう名画を追っかけているのですが、何年たっても会えません。同じ願い
をもってる鏑木ファンは多いのではないでしょうか。所蔵してる個人が
出品を拒み続けてるのか、そもそも行方がしれないのかわかりませんが、
行方知れずという人もいます。このあたりはわかりません。

“築地明石町”の美しい女性に会えませんが、“いでゆの春雨”や“春雪”
を観れましたので喜んでいます。白い紐をどうしてまいてるのでしょうか?
東京美術倶楽部にまた行きますので,聞いてみようと思います。“雪の宵”
の図版が東近美にないので、いま伊東深水の画集を探してるところです。
“花見”は桜が開花するころまでお待ちください。

投稿: いづつや | 2006.02.17 11:11

to 雪月花さん
鎌倉の鏑木清方記念館や東近美で鏑木清方の美人画を定期的に楽しんで
おります。今年は出だしからいい絵にめぐり会い、清方の絵にたいする愛着
が一段と深まってます。

画集を買うとすぐ“春雪”が記念館で待っていてくれ、さらに東京美術倶楽部
の“いでゆの春雨”に導いてくれました。こういう予想してないいいことがさら
にまた次のいいことをよび込んでくれるとき、私は勝手に“幸運の連鎖”と
名づけてるのですが、好きな鏑木清方で起こりました。

岩波文庫の“随筆集”を読んでいます。鏑木は文章も上手いですね。鏑木清方
がどんな気持ちで絵を制作してたかが窺がえる貴重な本ですね。

投稿: いづつや | 2006.02.17 12:54

こんばんは。

わたしも清方の美人画が大好きです。
最愛、と言ってはばかりません。
随筆も好きで、色々と集めました。

深水の雪の絵は多いですね。
雪に傘を差すおんなは色んなバージョンで見てきました。
明後日『美術商の百年』見てきます。
どきどきしています。

野間記念館には色紙ですが、清方一門のよい絵がたくさんあります。
今開催している展にも清方と深水と秀峰の秀作が並んでおります。

それからわたしも長い間『築地明石町』の原画を見てみたい思うのですが、複製ばかりです。先日の鏡花本の番組でもそうでした。

ブログの中で東近と山種に出かければ、とお書きになられてますがほんとにその通りだと思います。
でも、野間にも隠れた名品がたいへん沢山あります。わたしは野間でそうした発見をする喜びを愛しています。

ちょっとだけ書いたものですが、TBさせていただきます。

投稿: 遊行七恵 | 2006.02.18 00:38

to 遊行七恵さん
近代日本画もお好きなのですね。鏑木清方が最愛とは、これから話しが
弾みそうです。“築地明石町”を早くみたいですね。これをみたら鏑木は
一休みできるのですが。

伊東深水は昨年あたりからMOA、ホテルオークラで名作に会うようになり、
すごく近くなってます。今年も絶好調で、東博と美術倶楽部で心を揺さぶられ
る作品を見ました。

目白にある永青文庫を定期的に訪問しますので、近くの野間記念館
の展示はいつもチェックしてます。2年前、清方、松園、深水の絵を観ま
した。なかなか魅力的なのがありますね。

投稿: いづつや | 2006.02.18 19:49

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