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2006.01.14

書の至宝展

273開幕初日に出かけた“書の至宝展”(東博、1/11~2/19)の人気が徐々に高まっている。

当日も午前中にもかかわらず、書道の先生風の人や宗教関係の方が大勢いて、最初にある王義之(おうぎし)のコーナーから混雑し、列の進み具合が遅く、全部見終わるのに2時間以上かかった。

日本史や中国史の教科書に出てくる書の大家の名筆がこれだけ揃えば、書道家
や古美術関係の専門家のみならず、一般の美術ファンでも興味が涌いてくる。
中国の書を見る機会は少ない。東博東洋館の平常展で定期的に鑑賞する中国
絵画のあと、すぐ隣に展示してある書をさっとみる程度。目は多少慣れているがキャ
プションを覚えているわけではない。直近では、昨年10月にあった三井記念館の
名宝展に李斯筆の“泰山刻石”などがでていた(至宝展にも出品)。

展覧会で絵画をみる場合、説明書きは読まないが、今回は中国の書の歴史につ
いて、まとまった知識を得ようと、章のはじめにある文章を熱心に読んだ。そのあと、
古い王義之(303~361)や欧陽詢(557~641)らの書を食い入るように見、
書体の特徴を素人なりに読み取ろうとしてみた。草書、行書、楷書は知っているが
実際、筆で書いたことがないので、字と字の続きかた、墨の濃さやかすれ具合は
つかめても、字そのものの達筆さのレベルはわからない。

漢字を書く技量についての知識はないが、書は人を表すの言葉通り、大家の性格
や美意識といったものはなんとなくその書から伝わってくる。あくまでも先人の書風
を踏襲しようとする人、長い文章を楷書で一字々丁寧にきっちり書いていく人がい
るかと思うと、一方で自由奔放な筆使いで個性的な書のかたちをつくりだした書家も
いる。紀元前12世紀から清朝末までの作品のなかには、絵画同様、美しさを感じ
る書もあり、また見てると元気がでてくるような自由ではつらつとしたものもある。
じっくりみると、書は奥が深く、高い芸術性を秘めていることに気づく。

中国の書に較べると、日本の書は三筆と呼ばれる人の書や写経を過去、みたこと
があるので身近な感じがする。とくに、三筆の一人、空海の本展にでている書は、
空海展(03年、京博)のとき熱心に観た。今回の一番の収穫は、和様の書をつくりだ
した三蹟、小野道風、藤原佐理、藤原行成の本物と、美しい料紙に和歌が繊細
な書体で書かれた右の“古今和歌集(元永本)”(国宝、東博)に出会ったこと。

“古今和歌集”のなんと華麗なこと。薄紫の料紙に撒かれた金銀の切箔、砂子を
みると、源氏物語絵巻の詞書の部分を連想する。中国の書体から離れ、日本の風土
から独自のひらがなを生み出した日本の書は、さらに装飾的な工芸品と一体に
なり、柔らかくて、優美な書の世界に発展していった。これは日本美の極みかも
しれない。今回の展覧会で書の魅力を十二分に感じることが出来た。もう一度見に
行こうと思う。

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コメント

朝日が大々的に宣伝していますから混むと思っていました、やはりですね。
昨日の小田急でも分厚い図録を抱えた中年夫婦を見ました。
僕は興味あまりないですが、今日五島美術館に行って「やまとうた1000年」の図録を購入しました。
いづつやさんの書かれている古今和歌集の国宝も図録には載っています。
いづつやさんはいかれましたか、世田谷は遠いのかな?
僕はやはり「やまとうた」も混むと思ってパスしました、今やっているのは茶の湯です。

投稿: oki | 2006.01.14 23:07

to okiさん
日本の書では、本阿弥光悦や今回でている古今和歌集のような書
と絵や文様がコラボレーションしているのに惹きつけられます。私はかたち
より色彩のほうが好きなので、こういう装飾的な書にまず、関心がいきます。

五島美術館の“やまとうた1000年展”はここの書はかなりみている
のでパスしました。東博の古今和歌集が出てたのですね。うかつでした。

漢字ばかりの写経本や平家納経なども夢中になってみます。
空海の書は空海展や神護寺で代表作を観る機会がありました。
この至宝展で中国の名筆を沢山観て、書の魅力を再認識しました。
書にはまりそうです。本格的に筆をもってみようとも考えてます。

投稿: いづつや | 2006.01.15 07:57

この展覧会、書に慣れないにもかかわらず、空海や聖徳太子といった名前を見て、
ちょっと気になってたのですが、やはり相当な内容なのですね~
中国だと絵よりも書を書ける人のほうが一目置かれるという話を聞いた事があります。
見た目華やかな絵よりも、書のほうが審美眼をより問われるのかもしれませんね・

投稿: gem | 2006.01.16 12:45

to gemさん
あけまして おめでとうございます。今年もよろしくお願いします。過去、
空海の書、平家納経などの装飾経、本願寺本三十六人家集、本阿弥
光悦、俵屋宗達の書&絵画を追っかけてきましたので、日本の書に
はすこしは馴染みがあるのですが、まだまだ知らないことが多いです。

この至宝展は書という芸術をまとまった形で知るいい機会なので、しっか
り観ようと思ってます。小さいころは別にして、筆をもったことがないので、
目の前にある漢字や仮名をいくつか較べてどれが一番上手かというのが
ピントきません。ですが、美しい書だなとか、書家の心が表われてるな
というのはわかりますので、これを頼りに自分好みの書体にたどりつ
ければいいのですが。中国では、彩色絵画より水墨画、水墨画より書と
言われますね。書は奥が深いです。

投稿: いづつや | 2006.01.16 15:21

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» 書の至宝−日本と中国 [徒然なるまままに]
書の至宝−日本と中国 王羲之、欧陽詢、蘇軾、空海、小野道風、本阿弥光悦、良寛― 名筆、時空を超えて一堂に。 東京国立博物館 2006年1月11日(水)〜2月19日(日) 巡回予定 中日書法名品展(仮称) 上海博物館 2006年3月11日(土)〜4月23日(日) 展覧会の構成  1.文字の始まり〜字体の変遷〜  2.王羲之とその周辺  3.楷書表現の完成〜中国・唐時代〜  4.主観主義の確立〜中国・宋元時代〜  5.中国書法の受容〜飛鳥時代〜  6.奈良時代の写経と三筆〜奈良... [続きを読む]

受信: 2006.01.17 11:14

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