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2006.01.06

溪斎英泉の風景画

265昨年の今頃、開館25年を記念した館蔵の浮世絵名品展で愛好家を楽しませてくれた太田記念美術館では、そのパート2を行っている。

前期が1/3~26、後期が2/1~26。ここには約1万2千点の版画、肉筆画があるという。そのなかから名品を取り出してきても、一度では展示しきれず、昨年出なかった残りの作品がでている。準名品というのではない。前期の71点も見ごたえ充分。

この美術館は入ってすぐの畳のところで座って作品をみれるのがいい。自分が
所蔵する掛け軸を見るような気分になる。朱がよく残っている菱川師宣の“遊女
物思いの図”と宮川一笑作、“楼上遊宴図”に魅了される。楼上遊宴図は大
きな肉筆画で、海が見える二階で繰り広げられる賑やかな宴席の場面を描い
ている。酒を飲む男と、男たちをもてなす芸者衆が大勢いる傍らで、旗本風の男
が横になりひじをついている。これほどリラックスした様を描いた風俗画はあまり
お目にかからない。

2階には鈴木春信が4点ある。とくに空摺りの技法で雪と鷺の白を表現した“雪中
鷺”がいい。歌麿の美人画、“北国五色墨 おいらん”、“青楼七小町 大文字屋
内多賀袖”はいずれも魅力的。東博、MOA、千葉市美、そしてここで歌麿の美人
画をかなり見たので、遊女など女性の顔、髪の毛、手の指の描き方の特徴や
作品ごとの違いに目が慣れてきた。あとは描かれる女性の心の内面にどれだけ
入っていけるかだ。もっともっと歌麿に近づきたい。

今回は風景画が少ない。広重は一枚も無い。後期に展示?目を惹くのは北斎の
名作“雪月花 隅田”と溪斎英泉(けいさいえいせん)の風景画2点。右は英泉作、
“江戸両国橋ヨリ立川ヲ見ル図”。広重より六歳年上の溪斎英泉の絵ですぐイメージ
するのは退廃的で妖艶な女性の絵。英泉はこの美人大首絵で人気絵師になる。
女郎屋の亭主をやり、淫乱斎とも号した英泉にしてみれば、崩れた女はすらすら描
けたのかもしれない。

だが、英泉はただの美人画絵師では終わらない。“江戸八景”や“木曽街道六捨
九次”など風景画の名品を沢山残している。このあたりが並みの絵師とは絵心、
技量が違う。右の両国橋では漢画風の強い筆致と洋画の陰影法を使い、舟が何艘
も行き交う隅田川の光景を描いている。手前をトリミングし、左端に両国橋を大き
くみせる構図のとりかたが実に上手い。英泉には北斎を思わせる大胆な画面構成
で観る者をあっといわせる“木曽路駅 野尻・伊奈川橋遠景”という傑作がある。
いつかこの絵にめぐり会いたい。

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