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2006.01.15

長谷川等伯の烏鷺図屏風

274五浦美術館の“川端龍子展”を見た帰り路、川村記念美術館に寄った。現在、開催中のゲルハルト・リヒター展をまた、観るためではない。

HPの展示案内を見て以来、頭の中をぐるぐるまわっていたのが平常展の日本画コーナーに展示してある長谷川等伯の“烏鷺図屏風”と加山又造の“円舞(鶴舞)”の2点(展示は1/22まで)。

当然、平常展だけなので500円くらいかなと思っていたら、平常展だけの料金設定は
なく、いつも企画展&平常展の入場料(1300円)になってるという。西洋画の作品
に変りはないが、日本画はあまり長く展示できないので別の絵に替えるのだろう。ここ
の平常展は印象派のモネやステラ、ロスコーが売りだから、長谷川等伯だけをみたい
というレアケースは想定してないのかもしれない。

この美術館に等伯の“烏鷺図”(うろず)があることは前から知っていたが、観たいとい
う思いが強くなったのは昨年3月、出光美術館で“新発見・長谷川等伯の美展”をみ
たから。出光にも烏と鷺の絵があり、この絵の隣に参考として、川村美蔵の烏鷺図
(重文)の写真が飾ってあった。この絵には図録では気づかないことで、非常に印象
深いところがある。

それは右の左隻に描かれているカラスの色。カラスが黒い鳥ということは百も承知だが
、このような黒ベタのカラスはあまりみない。この黒いフォルムが空中での争いに凄味
を与えている。これは水墨画の伝統からすれば、異常な描き方である。もともと、日本
では古来忌み嫌われるカラスを避け、白いサギとの対比で選ばれる黒い鳥は叭々鳥
(ははちょう)という中国の南部でしか見ることの出来ない鳥が描かれてきた。等伯
はこれを踏襲せず、日本にいるカラスを、しかも黒ベタで表現し、新しい解釈の烏鷺図
をつくりだした。

右隻には大きな幹の柳の老木とその周りに思いおもいの姿をした12羽のサギが描か
れている。飛び上がろうとして羽を広げたサギはちょっと不恰好。こういう面白さは
狩野派の水墨画では味わえない。一方、空を飛ぶ3羽は様式化され、デザイン的な
図様になっている。この絵は最高傑作、“松林図屏風”(国宝、1/29まで東博で展示)
の後に描かれた。松林図を完成させ、晩年、独自の画境に達していた等伯は、伝統の
様式に縛られることなく思いついたアイデアを自在に絵のなかに取り入れたのであろ
う。黒いカラスと白いサギの対照の妙を楽しめる名品である。

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コメント

いづつやさん、こんばんは。
先日私もリヒター展のおり、この作品を見てきました。
仰られる通り、黒カラスは一種異様な存在感がありますよね。
じっと見入ってしまいました。

拙いですが記事にしたのでTBさせていただきました。
また記事中にていづづやさんの文を一部引用させていただきました。
もし問題があるようでしたら削除致します。
どうぞよろしくお願いします。

投稿: はろるど | 2006.01.27 00:02

to はろるどさん
川村記念美術館の烏鷺図はもっと先の展示かと思ってましたら、意外
に早く出てきました。この絵をみると、長谷川等伯が水墨画の表現方
法を死ぬまで模索していたことがわかります。

黒光りのするカラスは不気味ですね。右の鷺が薄い墨で穏やかに描かれている
のに対し、カラスの戦いは真に迫ってます。インパクトがありすぎて、記憶から
消えそうにない絵です。拙文を参考にしていただいて恐縮してます。

はろるどさんが喜びそうな情報をひとつ。東近美の平常展に今、伊東
深水のあっと驚くようないい絵がでてます。“雪の宵”という大作です。いままで
みた深水の絵のなかで一番感動しました。こんないい絵が山種美でなく、
ここにあったとは。。是非ご覧になってください。3/5まで展示してます。

投稿: いづつや | 2006.01.27 17:07

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川村記念美術館(佐倉市坂戸631) 常設展示 「長谷川等伯 -烏鷺図- 」 常設展の日本画の展示室で見ることの出来る、長谷川等伯(1593-1610)の「烏鷺図」(1605年以降)です。等伯の晩年の傑作としても名高く、全長約3.5メートルにも及ぶ大きな画面に、鷺と鴉が巧みに配されています。実に雄大で、また伸びやかな大作です。 いづつやさん(いづつやの文化記号)によれば、この作品で「非常に印象深い点」は、「水墨画の伝統からすれば�... [続きを読む]

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