クロアチアの素朴絵画
原田泰治の絵と一緒に展示してあるクロアチア素朴派の画家が描いた絵を夢中になってみた(日本橋三越、1/29まで)。
クロアチアにも米国のモーゼスお婆さんと同じような絵描き物語があった。原田泰治は1973年、ユーゴスラビア(当時)の画家が描いた絵をみて以来、その絵の魅力にとりつかれ、5回も現地を訪問し、素朴派の画家と交流してきた。そして、知り合った二人と1987年、
日本でナイーブ3人展を開催する。2回目となる今回は、画家を8人に増やし、クロ
アチアの首都ザクレブにある国立美術館所蔵作品などから選りすぐりの26点を
展示している。
原田泰治の絵すら知らなかったのだから、クロアチア素朴派についての情報は
皆無。会場に飾ってある作品や解説パネルをみてるうちに、現在、その絵が多くの
人の心をとらえ、世界的な関心を集めている理由が分かってきた。画家たちは正規
の美術教育を受けたわけではなく、家具をつくったり、郵便配達をしながら、仕事
の合間に、自分が感じた村の自然や人々のイメージを子供が描くような作風で
絵にした。
1930年代、最初に描き始めた第一世代、その後の二世代、そして今では第一
世代の息子、第三世代の画家たちが活躍するようになっている。その中で、素朴派
画家の精神的支柱となっている第一世代のゲネラリッチの描くスタイルがひとつ
の流れをつくる。ベチェナイ、コバチッチ、ラツコビッチの絵もゲネラリッチと同じ雰
囲気をもっている。原田の友人であるラビシンの絵はこれとは違う画風。人物が
登場せず、スーラがはじめた点描風の草原、花、樹木、丘、雲がとても美しい。
右はコバチッチの“婦人のいる冬景色”(部分)。じっとみていると、すぐ思い浮かべ
る絵がある。それはブリューゲルの名画、“雪の中の狩人”(ウィーン美術史美術
館)。手前から下の雪が屋根に積もった家々を見下ろす俯瞰の構図がよく似て
いる。狩人を婦人に変えた感じ。が、中景や遠景の木々の描写は超繊細。右の
大きな木の横に、小枝が沢山ついた木が奥のほうに向かって何本も立っている。
その縦横にでた枝をみると、どうやってこれを描いたのかと思うくらい細かい。驚異
の描写力。また、画面に流れる空気はドイツロマン派、カスパー・ダーフィト・フリ
ードリヒの風景画を連想させる。いろいろなことがイメージされるので、みてて飽き
ない。クロアチアの素朴絵画、恐るべし。
<嬉しいニュース!!>
3年前、ウィーン美術史美術館から盗まれたチェッリーニの金細工“サリエラ(塩入れ)”
(拙ブログ05/1/14)が21日発見されたというニュースがとびこんできた。犯人は
この彫刻のモナリザといわれる“サリエラ”の価値(70億円)を知らなかったという。
無事戻ってきて本当に良かった。次回ウィーンを訪問するときは、お目にかかれそう。
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