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2006.01.31

佐竹本三十六歌仙絵・斎宮女御

289出光美術館で開催中の“歌仙の饗宴展”に今日から佐竹本三十六歌仙絵の一番人気、“斎宮女御”(さうぐうのにょうご)が登場した。

この絵の一般公開は十何年ぶりという。今回出ている9点のうち“斎宮女御”と“紀友則”は後期(1/31~2/12)だけの展示。前期にでかけ佐竹本を含め、歌仙絵の数々をしっかり観た(拙ブログ1/12)ので、今回の鑑賞は2点のみ。

歌仙絵は背景が一切描かれないのが普通だが、“斎宮女御”の場合、だだ一人
皇族であるため、畳の上に描かれている。別格扱いは畳だけでなく、几帳がお
かれ、斎宮女御の背後には洲浜と赤い梅の花が描かれた障子が添えられる。
こういうセッティングはもう源氏物語絵巻となんら変わりない。

右でわかる通り、衣装の部分では緑青のところに剥落が多い。髪の毛の細か
い表現や袖で口元を隠すポーズは源氏物語の姫君や女房と同じだが、斎宮女
御の顔は紫上などよりはふっくらしており、リアリティを感じる。単眼鏡で衣装をみ
ると繊細な文様や線がみてとれる。何度もみて気がついたのは、障子近くの赤
い地に引かれた金泥の線。オリジナルの色はこれよりずっと綺麗だったのだろう。

大正8年(1919)、佐竹本が切断されたとき、この“斎宮女御”を手に入れたの
は当時、三井財閥を統括していた益田鈍翁(どんのう)。面白い話が伝わって
いる。誰にどの絵がわたるかはくじ引きで決めることにし、歌仙絵には人気に応じ
て値段に大きな差がつけてあった。人気は5人いる姫君。なかでも、皆が欲し
がったのが“斎宮女御”。もちろん、鈍翁も欲しくてたまらない。

抽選の結果はどうだったか。鈍翁のくじは大はずれ。よりによって一番人気のない
“僧正遍昭”だった。鈍翁の顔がみるみるうちに不機嫌になり、その場はピリピリ
したムードになったそうだ。で、どうしたか。こういうときの解決法は誰でもわかる
とおり、“斎宮女御”の当たりくじの人がそっと“お譲りしましょう”と助け舟を出す。
もう、鈍翁は大喜び。この絵の値段は1987年の貨幣価値で5億円位したという。
さらに凄いのは鈍翁はこの断簡を1.8億円かけて表装し、茶席の掛け軸として、
終生愛用した。たしかに見事な表装が施されている。

現在、この絵は益田家を離れ、別の人が所有している。ふたたびこの“斎宮女御”
に出会うことがあるだろうか。せいぜい長生きしよう。

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コメント

鈍翁のエピソード楽しいです。
子供っぽいけれど、良く気持ちわかります。(笑)
美しい絵を朝一番に拝見しました

投稿: seedsbook | 2006.02.01 15:22

to seedsbookさん
佐竹本の切断の儀式は品川御殿山にあった益田邸で行われました。
これを仕切ったのが、経済界の総理とも言うべき益田鈍翁ですから、
鈍翁に声をかけてもらった三井の幹部をはじめとする茶人たちも心の中では
“斎宮女御”が鈍翁に当たればいいと思ってたでしょうが、くじ引きは最悪の
結果でした。黙ってると、鈍翁は“もう皆帰れ”と言い出しかねないほどのキレ
ようだったらしいです。

美にとりつかれた人は子供のようになるといいますが、鈍翁もこの絵
が頭から離れなかったのでしょうね。周りの人の大人の振る舞いでめでたく、
“斎宮女御”は鈍翁のものになりました。

投稿: いづつや | 2006.02.01 18:13

いづつやさん、TBさせていただきました。
だいぶ以前のことですが、NHKでこの佐竹本の切断を話題にした番組を見た覚えがあります。
明治から大正にかけてのお茶人たちには、いろいろなエピソードがありますね。

投稿: | 2006.02.01 20:48

to 郁さん
TB、コメント有難うございます。佐竹本の流転話しは面白いですね。
私もNHKの番組を興味深くみました。よく覚えてます。当時の茶人たち
の関心は当然のことながら茶道具や掛け軸の名品ですね。みんな佐竹
本を持つのが夢だったのでしょうね。綺麗な“斎宮女御”をじっくり見ました。

今度の新日曜美術館はコレクターの話ですね。佐竹本の話が出てくる
のではないかと期待してます。

投稿: いづつや | 2006.02.01 23:18

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