原田泰治とクロアチアの仲間たち展
日本橋三越でいい展覧会を見た。それは“原田泰治とクロアチアの仲間たち展”(1/29まで)。
原田泰治という画家の名前は知っているが、これまで展覧会に足を運んだことはなかった。04年の秋、諏訪湖のそばにある北澤美術館でガレのガラス作品をみたとき、新館の近くにたしか原田泰治美術館があったことを記憶している。
そのとき、この美術館に足が向かわなかったのは、一つはガレの名品を沢山
みて疲れてたこともあるが、まだ原田泰治の絵のイメージが全くなかったから。
今回の展覧会でこの画家の絵が大きな力をもっていることがわかった。どうし
てミューズは原田泰治の絵にもっと早く会わせてくれなかったのかと思ってし
まう。画風はグランマ・モーゼスを彷彿させる。日本の画家で同じようなタイプの
絵を描いてる人がいて、素朴派というグループを形成しているのか、原田泰治
のオンリーワンの絵かわからないが、とにかく心がやすまる、素朴な絵である。
日本全国の懐かしい風景が色々でてくる。仕事の関係でいくつか住む場所が
変わり、日本中をクルマでだいぶ回ったので、絵に描かれた地方の山々などの
自然、山村、田んぼやそこに住む人々の様子を実感できる。また、よく見る古い
日本の映画や寅さんシリーズの映像とこれらの絵にでてくる日本各地の良き
空気と情感がまるごと詰まった風景が重なってくる。
日本の農家における四季折々の風景は今でもまだこんな風である。田植えが
あり、収穫の時期の稲刈り、そして寒い冬の季節を迎える。一人黙々と作業を
するおばさんやちょっと休んで話をしているお爺さんとお婆さん。その隣に孫
がいる。見方によってはサザエさんの漫画のひとコマを拡大したような絵である
が、原田泰治の凄いところは家の屋根や石垣、田んぼの稲、そしてまわりの山の
木々などを気が遠くなるくらい緻密に描いているところ。これにはびっくりする。
デザインの仕事をしているから、こういう長いこと緊張感を強いられる描写が苦
にならないのだろうか。また、色彩感覚、構図のとり方が素晴らしい。
右の絵は青森県五所川原市の雪を描いた“雪かき”。道に積もった雪を三人で
除去している。白い点々で表現された家の向こうにある木の雪と背景のあかるい
空がとても綺麗。細かい描写と美しい色合いをキャンバスに顔を近づけ、息を
殺して見た。これほど感激した展覧会は久しぶり。原田泰治をMy好きな画家に
即、登録した。
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コメント
僕も観てきました。
この画家が素朴派といえるかはともかく、全国を旅してありのままの風景を描くことが面白かったです、「宅急便」の看板まで描くのですから!
しかし新潟の山古志村は「思い出」なのですね、地震で破壊された鯉の泳ぐ池ーそれは回復への祈りでもあるのでしょうね
投稿: oki | 2006.01.24 23:41
to okiさん
蓮の花とか稲とかが細かく描かれてましたね。一点々食い入るように
観ました。この草花や木の描写力に参りました。明るい色なので、
心が清々しくなります。観て心地よい絵はやはり魅力がありますね。
描いてる日本各地の原風景がまた、胸をかきむしります。地方の都会化
はどんどん進みますが、まだまだスローライフも残ってますね。“夏の花”
では田舎の店先の感じがよくでてますね。“宅急便”、“Fanta”の看板
は面白かったです。山古志村の鯉はこの画家の優しい心情がでている
ような気がします。写真をみると、杖をついてるので足が悪い感じですが、
全国を旅して絵にしてるのですから立派です。
いつか諏訪湖の近くにある美術館を訪ねようと思います。隣の方にも三越に
行ってきたらとけしかけてます。
投稿: いづつや | 2006.01.25 15:51
いづつやさん、
小さい頃、日曜版新聞の一面に原田泰治さんの絵が毎週載っていて大変楽しみにしていたのを覚えています。岩崎ちひろさんなどと並んで一番最初に好きになった画家の1人です。京都のデパートに展示会にサインをもらいにいったと記憶しています。(笑)たぶん自発的に行きたいと思った始めての展示会だったような。。。
ナイーブアートと日本画の要素がしっとりと独特に混じっていると思います。
グランマ・モーゼスとは、なるほど。原田泰治さんの作品は日本のフォルク・アートと言えますものね。
投稿: あかね | 2006.01.29 03:58
to あかねさん
原田泰治の繊細な描写を時間が経つのも忘れてみました。家に帰り、
感想を話していると、隣の方が朝日の日曜版に掲載されてた絵
のことを思い出してくれ、段々昔の記憶が蘇ってきました。
癒しの時代と言われて久しいですが、原田泰治が描く田舎の絵は日本
文化の大事な財産ではないかと思います。いい展覧会でした。
投稿: いづつや | 2006.01.29 17:35
こんばんは。
今日ぎりぎり駆け込みで
観に行ってきました。
原田氏の作品よりも
クロアチアの作家さんの
作品にいたく感動しました。
TBさせていただきます。
投稿: Tak | 2006.01.29 22:55
to Takさん
今回展示されてたクロアチアの素朴画家が描いた絵は良かったですね。
秀作を選んでもってきたと解説にありましたが、クロアチアにもこんな
素晴らしい絵があったのですね。最後にソフィア・ローレンスやジョン・レノン
をパロッた現代感覚あふれる絵が出てきたのには参りました。これから
追っかけようと思います。
投稿: いづつや | 2006.01.30 08:53
2月4日から、新宿のアイランドウイング15階で原田泰治展があります。2月4日は、事前に予約した人限定ですが、原田泰治さんの講演会があります。(美術展の方にでてきてくれるとうれしいな!) 原田さんは1歳半のころ小児マヒ(本人の弁、今でいうところのポリオですか)で足が悪くなったのだそうです。原田さんは、すごく元気で大きな声の明るい人です。会うだけで元気がもらえます。
投稿: たま | 2006.02.03 12:29
to たまさん
はじめまして。書き込み有難うございます。原田泰治が描く日本の原風景
に心を揺すぶられます。今も頻繁に図録を眺めてます。新宿にも巡回
するようですね。東京はダブルチャンスなので出かける人も多いでしょう。
小さいころ小児マヒにかかられたのですか。元気な画家のようで、
いつかお話しが聴ければと思います。
投稿: いづつや | 2006.02.03 18:10