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2006.01.31

佐竹本三十六歌仙絵・斎宮女御

289出光美術館で開催中の“歌仙の饗宴展”に今日から佐竹本三十六歌仙絵の一番人気、“斎宮女御”(さうぐうのにょうご)が登場した。

この絵の一般公開は十何年ぶりという。今回出ている9点のうち“斎宮女御”と“紀友則”は後期(1/31~2/12)だけの展示。前期にでかけ佐竹本を含め、歌仙絵の数々をしっかり観た(拙ブログ1/12)ので、今回の鑑賞は2点のみ。

歌仙絵は背景が一切描かれないのが普通だが、“斎宮女御”の場合、だだ一人
皇族であるため、畳の上に描かれている。別格扱いは畳だけでなく、几帳がお
かれ、斎宮女御の背後には洲浜と赤い梅の花が描かれた障子が添えられる。
こういうセッティングはもう源氏物語絵巻となんら変わりない。

右でわかる通り、衣装の部分では緑青のところに剥落が多い。髪の毛の細か
い表現や袖で口元を隠すポーズは源氏物語の姫君や女房と同じだが、斎宮女
御の顔は紫上などよりはふっくらしており、リアリティを感じる。単眼鏡で衣装をみ
ると繊細な文様や線がみてとれる。何度もみて気がついたのは、障子近くの赤
い地に引かれた金泥の線。オリジナルの色はこれよりずっと綺麗だったのだろう。

大正8年(1919)、佐竹本が切断されたとき、この“斎宮女御”を手に入れたの
は当時、三井財閥を統括していた益田鈍翁(どんのう)。面白い話が伝わって
いる。誰にどの絵がわたるかはくじ引きで決めることにし、歌仙絵には人気に応じ
て値段に大きな差がつけてあった。人気は5人いる姫君。なかでも、皆が欲し
がったのが“斎宮女御”。もちろん、鈍翁も欲しくてたまらない。

抽選の結果はどうだったか。鈍翁のくじは大はずれ。よりによって一番人気のない
“僧正遍昭”だった。鈍翁の顔がみるみるうちに不機嫌になり、その場はピリピリ
したムードになったそうだ。で、どうしたか。こういうときの解決法は誰でもわかる
とおり、“斎宮女御”の当たりくじの人がそっと“お譲りしましょう”と助け舟を出す。
もう、鈍翁は大喜び。この絵の値段は1987年の貨幣価値で5億円位したという。
さらに凄いのは鈍翁はこの断簡を1.8億円かけて表装し、茶席の掛け軸として、
終生愛用した。たしかに見事な表装が施されている。

現在、この絵は益田家を離れ、別の人が所有している。ふたたびこの“斎宮女御”
に出会うことがあるだろうか。せいぜい長生きしよう。

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2006.01.30

アラビア書道

288先週訪れた“アラビアンナイト大博覧会”(国際交流基金フォーラム、1/31迄)で新しいアートとの遭遇があった。それはアラビア書道。

昨年末、この展覧会の存在を偶然知り、アラビアンナイトやイスラム文化のことが手っ取り早く分かるいい機会なのではというごく軽い動機で足を運んだ。

会場は地下鉄銀座線“溜池山王駅”12番出口すぐのところにある赤坂ツインタワ
ービル1階。アラビアンナイト誕生の歴史をイラスト入りのパネルでざっと頭の
中に入れ、フランス人、ガラン(1646~1715)が翻訳した“千一夜”(1704~
1717)の初版本やアラブの風俗、女性の衣装などが展示してあるコーナー
を見た後、これで終わりかなと一息ついてたら、アラビア文字と美しいフォルムで
構成された現代アートのような右の作品(部分)が目に飛び込んできた。

アラビア書道の作品らしい。アラビア文字が全く分からないので、この青で描か
れた部分がデザインなのか文字なのか区別がつかず、文字の意味するところや
書道家の表現したいイメージが充分に伝わってこないが、芸術作品として充分
感じることはできる。この書はイラク生まれの書道家の作品(00年)であるが、
その隣にあった中国人の最新作(04年)にとても惹きつけられた。波濤のような
形がシャープな黒の線で描かれている。線がシャープで繊細に見えるのは鋭い
ナイフ状の筆先を使っているから。瞬間的に京博でみた狩野山雪作、“雪汀水禽
図”の波の文様が頭をよぎった。

アラビア書道のもつ高い芸術性が世界的な関心を呼んでいるそうだ。で、ネットで
いろいろ調べてみた。日本におけるアラビア書道の第一人者、本田孝一さん(大東
文化大学教授、1946年生)の作品が昨年、大英博物館に買い上げられたという。
“神の顔”と題する三部作は鮮やかな赤、青、緑の地の上にアラビア文字が左右
対称に配置されている。堂本尚郎の“宇宙Ⅰ”を連想させるような新しいアート感覚
の書である。

4月にこの書道家の作品集が出版されるとのこと。東博の“書の至宝展”と“雪汀
水禽図”、この二つの文化記号がアラビア書道を導いてくれた。アラビア書道に
はまるかもしれない。

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2006.01.29

バーク・コレクション展の曽我蕭白

287昨年7月からはじまったバーク・コレクション展がやっと東京にきた(東京都美術館、3/5まで)。

事前にみた展示品情報からすると質の高いコレクションというのは窺がえたが、入場してみると予想通りだった。アメリカの資産家で日本の美術品をこれほど幅広く集めてる人はいない。

縄文土器から屏風、やきもの、琳派、曽我蕭白、伊藤若冲まで、しかも質のいい
ものを所有しているのだからバーク夫人の眼力は相当高い。日本美術のコレク
ションとしては、個人ではバーク夫人と伊藤若冲のいい絵を沢山もっているプライ
ス氏が双璧。この展覧会を待ち望んでいたのは、チラシにも使われている曽我
蕭白の“石橋図”(しゃっきょうず)が出品されるから。長年追っかけていたが、やっ
と出会えた。

この絵は蕭白、最晩年の作。狂の画人、曽我蕭白の真骨頂である怪人のような
仙人や手や足の爪が異常に長く、唇がやけに赤い男や女が出てくる毒のある絵では
なく、見てて楽しくなる絵。気が遠くなるくらい高いところにかけられた石橋をめざして、
獅子の群れが重なり合うようにして、垂直に切立った崖を登っている。なぜ、危険をお
かして登るかというと、石橋のむこうに文殊菩薩が住む浄土があるから。

だが、ここに到達するのは大変。もうちょっとのところで、力尽きて深い谷底に転落
する獅子、そこまでいかなくて途中で脱落する獅子。この様子はストップモーションの
映像を見てるよう。“ああー落ちる。でも、ちょっと宇宙遊泳をしているような気分”
なんて能天気なことは口走らないだろうが、悲鳴が聞こえるようでもあり、バンジー
ジャンプの快感が伝わってくるような感じもする。真ん中で岩がせりだしてるところに
親獅子が谷底を見ているのは、獅子の子落としが掛けられているため。個々の獅子の
姿で面白いのは、一番下で岩にかろうじて足をかけ、腹を上にみせてもがいてる獅子。
左右の岩に2頭いる。

この絵だけでも大満足なのに、伊藤若冲の“月下白梅図”や“双鶴図”までみせてく
れる。“月下白梅図”は若冲の超観察力と緻密なスーパーテクニックが生み出した
素晴らしい絵。地や幹の渋い茶色に、白梅の白と赤、そして咲いた花の黄色い点々
が美しく映える。幹は複雑に折れ曲がり、白梅が無数にあるため一見粗々しく、ビジー
に見えるが、絵の前に暫く立っていると、静寂で幻想的な世界に惹きこまれそうな気
がしてくる。チラシではこの感じはつかめない。本物に最接近して観るのがいい。主催
者はこのことがわかっているのか、拡大図版を図録の表裏紙に使っている。

蕭白、若冲のほかにも、雪村の“山水図”、狩野探幽の“笛吹地蔵図”、英一蝶の
“雨宿り風俗図屏風”、池大雅の“蘭亭曲水・秋社図屏風”などに感動した。満足度
200%の展覧会であった。

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2006.01.28

高台寺蒔絵

286今回の京都美術館めぐりは例年この時期行われる寺社の非公開文化財の特別公開(1/14~3/19)と重なったため、普段みれない絵画や美術品にもお目にかかれ、大変充実したものになった。

2年前はバスツアーに入り、妙心寺や金閣寺にある絵などを見たが、この度は見たい所だけをタクシーで回った。一番の目玉が高台寺。まず、円徳院で長谷川等伯作の“山水図襖”(重文)を見た。

等伯が揮毫を申し出て、一度は断られるが、住職がいないのを見計らって描いた
という逸話で有名な襖絵である。雪のように見える雲母摺(きらず)りの桐花文の上
に余白をたっぷりとった山水が描かれている。とても構図のいい絵で、左右二箇
所に小さな点景となった人がみえる。

豊臣秀吉の正室北政所(ねね)が秀吉の菩提を弔うため1605年に創建した高台
寺の見所は、なんといっても秀吉と北政所の座像が祀られてる霊屋(おたまや、
重文)。桃山時代の漆工芸の粋を極めたといわれる“高台寺蒔絵”が施されてる
右の須弥檀や厨子の扉をやっと見ることができた。豪華な黒漆に金の蒔絵に声が
でない。単眼鏡も使いじっくりみた。

左側の北政所の像の扉には“竹と松”が、右の秀吉の扉には“風に揺れるすすきと
露”が描かれている。これをみて思い出すのは、秀吉の辞世の歌、“露と落ち露と
消えにし我が身かな 浪速のことも夢のまた夢”。この文様は夫を愛する北政所の
心情を表している。今回は本尊の“大随求菩薩像”(5cm)が見れたり、通常は
立ち入ることの出来ない、開山堂と霊屋を結ぶ階段廊“臥龍廊”を通行ことができた。
特別の年に京都を訪れ、長年の願いだった高台寺蒔絵を鑑賞できたことは大きな
喜びである。

また、長谷川等伯の代表作、“水墨山水画”(重文)と妙心寺隣華院で出会ったり、
相国寺の法堂の天井画“鳴き龍”も仰ぎ見た。満ち足りた気分で京都駅に向かった。

■■■■■今年前半展覧会情報(拙ブログ1/1)の更新■■■■■
国内の美術館で開催される下記の展覧会を追加。
★西洋美術
 1/7~3/26   ベッカー展          神奈川県近美葉山館
 1/28~3/19  ビュフェ石版画展      ニューオータニ美術館
 4/8~6/4    雪舟からポロックまで展   ブリジストン美術館
 6/3~7/30   ジャコメッティ展       神奈川県近美葉山館
 6/17~8/20  ルーブル美術館展     東京芸大美術館
 6/24~8/20  クレー展           川村記念美術館
★日本美術
 1/27~3/8   名品展・紅白梅図屏風   MOA
 2/16~5/14  開館10周年記念展    大山崎山荘美術館
 3/8~20     加山又造展         大丸神戸店
 3/25~4/9   18世紀京都画壇展    京都国立博物館
 3/28~5/27  美しき日本の四季展    鎌倉大谷記念美術館  
 

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2006.01.27

狩野山雪の雪汀水禽図屏風

285現在、京博の平常展(1/29まで)に展示してある絵画は日本画が好きな人にはたまらないのではなかろうか。2階に飾ってある近世絵画を観たくて新幹線に乗った。

大きな屏風が4点あり、どれも見ごたえがある。狩野山楽の“龍虎図”、狩野山雪の“雪汀水禽図”、円山応挙の“雲龍図”と“群鶴図”。“群鶴図”以外は重文。

このなかで一番見たかったのが右の“雪汀水禽図”(せっていすいきんず)。04年、
京都の寺社にある非公開文化財の特別公開があったとき、妙心寺の天球院で
山雪が描いた“梅に遊禽図襖”をみて、たちまちこの絵師にはまった。この頃、どう
してこんなシュールで幾何学的な画面構成の絵が生まれたのか不思議でなら
ない。狩野派の伝統を引き継ぐ同世代の狩野探幽は垂直に折れ曲がる梅や対角
線に対象物をおくような絵は絶対描かない。狩野山雪が美術史家辻惟雄氏に“奇想
の絵師”と呼ばれるゆえんである。

その山雪の代表作として評価が高いのが“雪汀水禽図”。六曲一双の大きな屏風。
思わず、“おおー、凄い!”とのけぞった。右は左隻の真ん中あたり。まず、波に
感動する。波濤が立体的で流れ動いているように見える。加山又造の“千羽鶴”に
描かれたトポロジー的な波文はこの絵に触発されたのではないかと思った。
波頭は胡粉で盛り上がり、その上に銀箔が貼ってある。

この装飾的な波と手前にある松の葉に積もった美しい粉雪をみると琳派の世界で
はないかと錯覚する。雪のかかった松の葉は酒井抱一が描いた“雪月花図”(MOA)
と雰囲気がそっくり。金雲のなかを雁行する千鳥は白い腹をみせてる一群と背中
をこちらに見せる一群がきれいに逆S字をつくっている。工芸的な技法と幾何学的な
構図で月に輝く波と空を飛翔する鳥を見事に表現した傑作を見れて最高の気分。

屏風で昂揚したテンションを保ったまま隣の部屋にいくと、今度は伊藤若冲のいい
掛け軸が待ってくれていた。一度みたことのある“捨得と鶴図”とはじめての“墨竹
図”と“伏見人形図”。“捨得と鶴図”は若冲得意のユーモラスな絵。真ん中のこち
らに背を向けた捨得の頭は河童のよう。右にはお決まりの肥った鶴がいる。子供の
姿と赤の衣装が印象的な“伏見人形図”も面白い。

パスポートチケットを使ったので、この平常展はお金を払わなくて済んだ。満足感
一杯で館を後にした。

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2006.01.26

戸栗美術館の伊万里焼展

284渋谷の松涛にある戸栗美術館は陶磁器の専門館。都内で陶磁器だけを展示してるの東博を除いては、ここしかない。白金台の畠山美術館も展示の中心は茶道具だが、いつも数は少ないが書や絵画の掛け軸が飾ってある。

ここを訪れたのは3回目。現在、“伊万里焼の茶道具と花器展”(3/26まで)を開催中。初期伊万里、古九谷様式、金襴手様式の茶碗、水指、花入、小鉢、徳利、盃などが80点あまりでている。

染付では青がよく発色した山水文の水指が4,5点ある。白地に青、茶色が映え
る“銹釉染付 松竹梅文 水指”が目を惹く。銹釉の茶色とともにハットしたのが
紺色の瑠璃釉の作品。瑠璃釉だけのものと瑠璃釉と銹釉で色を分けたものがあ
る。“瑠璃銹釉 瓶”は上の瑠璃釉の紺と下の茶色が上手く調和した優品。

右は文様、色の組み合わせでとりわけ惹きつけられた“青磁瑠璃銹釉 鷺龍文
 三足皿”。これには高度な技術が駆使されている。白磁をベースに型押しで文様
を表し、その文様に合わせて釉をかき分けている。見込みの地に緑色を帯びた
青磁釉、龍に淡褐釉、渦巻き文と鷺の後ろに見える青海波に瑠璃釉、もうひとつの
渦巻きに銹釉と手の込んだ細工が施されている。白磁の鷺とその周りを駆け巡る
龍のとりあわせははじめてみたが、見事な意匠に強く心をうたれた。

色絵では瓢箪の上に唐子が乗ってる水注が面白い。形で足がとまったのが十四面
に面取りをした高さ20cmの壷。丸い壷とは違った魅力がある。面のとりかたは
なかなか微妙。面が少なすぎると間延びがしてダメだし、また、多くとりすぎると一つ
の面が狭すぎてゆとりが無くなる。このあたりはパッとみたときの感覚なのだろうが、
うまくできている。

お気に入りの“龍文 菊花形鉢”や見込みに荒磯文様と呼ばれる波濤に躍る鯉を
染付で描き、周囲を色絵、金彩の唐草でうめた“荒磯文 鉢”は色絵磁器の華。
この前に立つといつも気持ちがハイになる。今回も多くの名品に出会った。まだま
だ陶磁器めぐりは終わらない。

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2006.01.25

金城次郎の海老文大皿

283日本民藝館で現在、“民藝が生んだ人間国宝展”(3/26まで)が開かれている。

HPにでてた展覧会案内に、日頃から関心の高い陶工、金城次郎(きんじょうじろう)と島岡達三が名を連ねていたので、必ず見に行こうと決めていた。

入館するまでは、この二人が中心の特別展と思っていたが、展示されていた作品の数は河井寛次郎や濱田庄司と同じくら
いで、陶芸のほかにも染色の芹沢銈介、木工・漆芸の黒田辰秋、芭蕉布の平良
敏子、織物の宮平初子らの作品が全部で160点あった。所蔵品を目一杯展示して
いるという感じである。はじめてみる作品もあり、満足度はかなり高かった。

ここを定期的に訪問してみたくなるのは河井、濱田、富本憲吉、バーナード・リーチの
名品に会えるから。リーチはなかったが、民藝派ビッグスリーの馴染みの作品を
鑑賞でき、いい気持ちになった。嬉しいオマケは河井の陶磁器コーナーに棟方志功
の版画、“余韻十二ヶ月・跳鯉、倭桜”などがあったこと。赤や黄色が鮮やかな鯉の
絵に惹きつけられた。

今回のお目当ては、沖縄の陶工、金城次郎の魚文や海老文の陶器。3年前、刊行さ
れた“人間国宝の技と美 陶芸名品集”(講談社)に載っていた金城次郎(1911~20
04)の海老や魚の紋様の大皿に非常に魅せられ、いつかこの陶工の作品をまと
まった形でみたいと願っていた。目の前に味わい深い大皿や土瓶、湯呑などが20点
くらいある。

右は琉球陶器のトレードマークのようになった線彫り海老文の大皿。一緒にでている
魚と海老文大皿と共に金城次郎の代表作。二匹の海老は生き生きとしており、線に
勢いがある。海老の目をみると笑っているように見える。金城次郎を指導した濱田
庄司は“日本に陶芸家多しといえども、次郎以外に魚やエビを笑わすことができる名人
はほかにいない”と褒めたそうである。金城は沖縄は島国で周囲が海だから、魚や
海老を描いて個性をだそうとしたようだ。

昨年末にみた吉田屋の平鉢でも、鮮やかな紫色をした海老が飛び跳ねていたが、
沖縄の名人が描いた海老もそれに劣らず目を楽しませてくれる。沖縄で最初の人間
国宝となった金城次郎の陶器に150%感動した。

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2006.01.24

クロアチアの素朴絵画

282原田泰治の絵と一緒に展示してあるクロアチア素朴派の画家が描いた絵を夢中になってみた(日本橋三越、1/29まで)。

クロアチアにも米国のモーゼスお婆さんと同じような絵描き物語があった。原田泰治は1973年、ユーゴスラビア(当時)の画家が描いた絵をみて以来、その絵の魅力にとりつかれ、5回も現地を訪問し、素朴派の画家と交流してきた。そして、知り合った二人と1987年、
日本でナイーブ3人展を開催する。2回目となる今回は、画家を8人に増やし、クロ
アチアの首都ザクレブにある国立美術館所蔵作品などから選りすぐりの26点を
展示している。

原田泰治の絵すら知らなかったのだから、クロアチア素朴派についての情報は
皆無。会場に飾ってある作品や解説パネルをみてるうちに、現在、その絵が多くの
人の心をとらえ、世界的な関心を集めている理由が分かってきた。画家たちは正規
の美術教育を受けたわけではなく、家具をつくったり、郵便配達をしながら、仕事
の合間に、自分が感じた村の自然や人々のイメージを子供が描くような作風で
絵にした。

1930年代、最初に描き始めた第一世代、その後の二世代、そして今では第一
世代の息子、第三世代の画家たちが活躍するようになっている。その中で、素朴派
画家の精神的支柱となっている第一世代のゲネラリッチの描くスタイルがひとつ
の流れをつくる。ベチェナイ、コバチッチ、ラツコビッチの絵もゲネラリッチと同じ雰
囲気をもっている。原田の友人であるラビシンの絵はこれとは違う画風。人物が
登場せず、スーラがはじめた点描風の草原、花、樹木、丘、雲がとても美しい。

右はコバチッチの“婦人のいる冬景色”(部分)。じっとみていると、すぐ思い浮かべ
る絵がある。それはブリューゲルの名画、“雪の中の狩人”(ウィーン美術史美術
館)。手前から下の雪が屋根に積もった家々を見下ろす俯瞰の構図がよく似て
いる。狩人を婦人に変えた感じ。が、中景や遠景の木々の描写は超繊細。右の
大きな木の横に、小枝が沢山ついた木が奥のほうに向かって何本も立っている。
その縦横にでた枝をみると、どうやってこれを描いたのかと思うくらい細かい。驚異
の描写力。また、画面に流れる空気はドイツロマン派、カスパー・ダーフィト・フリ
ードリヒの風景画を連想させる。いろいろなことがイメージされるので、みてて飽き
ない。クロアチアの素朴絵画、恐るべし。

<嬉しいニュース!!>
3年前、ウィーン美術史美術館から盗まれたチェッリーニの金細工“サリエラ(塩入れ)”
拙ブログ05/1/14)が21日発見されたというニュースがとびこんできた。犯人は
この彫刻のモナリザといわれる“サリエラ”の価値(70億円)を知らなかったという。
無事戻ってきて本当に良かった。次回ウィーンを訪問するときは、お目にかかれそう。

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2006.01.22

原田泰治とクロアチアの仲間たち展

281日本橋三越でいい展覧会を見た。それは“原田泰治とクロアチアの仲間たち展”(1/29まで)。

原田泰治という画家の名前は知っているが、これまで展覧会に足を運んだことはなかった。04年の秋、諏訪湖のそばにある北澤美術館でガレのガラス作品をみたとき、新館の近くにたしか原田泰治美術館があったことを記憶している。

そのとき、この美術館に足が向かわなかったのは、一つはガレの名品を沢山
みて疲れてたこともあるが、まだ原田泰治の絵のイメージが全くなかったから。
今回の展覧会でこの画家の絵が大きな力をもっていることがわかった。どうし
てミューズは原田泰治の絵にもっと早く会わせてくれなかったのかと思ってし
まう。画風はグランマ・モーゼスを彷彿させる。日本の画家で同じようなタイプの
絵を描いてる人がいて、素朴派というグループを形成しているのか、原田泰治
のオンリーワンの絵かわからないが、とにかく心がやすまる、素朴な絵である。

日本全国の懐かしい風景が色々でてくる。仕事の関係でいくつか住む場所が
変わり、日本中をクルマでだいぶ回ったので、絵に描かれた地方の山々などの
自然、山村、田んぼやそこに住む人々の様子を実感できる。また、よく見る古い
日本の映画や寅さんシリーズの映像とこれらの絵にでてくる日本各地の良き
空気と情感がまるごと詰まった風景が重なってくる。

日本の農家における四季折々の風景は今でもまだこんな風である。田植えが
あり、収穫の時期の稲刈り、そして寒い冬の季節を迎える。一人黙々と作業を
するおばさんやちょっと休んで話をしているお爺さんとお婆さん。その隣に孫
がいる。見方によってはサザエさんの漫画のひとコマを拡大したような絵である
が、原田泰治の凄いところは家の屋根や石垣、田んぼの稲、そしてまわりの山の
木々などを気が遠くなるくらい緻密に描いているところ。これにはびっくりする。
デザインの仕事をしているから、こういう長いこと緊張感を強いられる描写が苦
にならないのだろうか。また、色彩感覚、構図のとり方が素晴らしい。

右の絵は青森県五所川原市の雪を描いた“雪かき”。道に積もった雪を三人で
除去している。白い点々で表現された家の向こうにある木の雪と背景のあかるい
空がとても綺麗。細かい描写と美しい色合いをキャンバスに顔を近づけ、息を
殺して見た。これほど感激した展覧会は久しぶり。原田泰治をMy好きな画家に
即、登録した。

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2006.01.21

尾形光琳の大黒天図

280MOAはいつも企画展(今回は浮世絵展)と同じくらい併設展示の絵画と陶磁器(1/25まで)が目を楽しませてくれる。

とびっきり上等な琳派の絵と尾形乾山、京焼の野々村仁清などのやきものに毎度ながら、いい気分になった。今回は新春ということもあり、名品が並んでいる。

宗達は3点ある。源氏物語や伊勢物語を題材にしたのと可愛い子犬を描いた絵。
宗達の物語絵を観て楽しいのは色が鮮やかなことと、色白でまるっこく、柔らかい顔
をした男女が登場し、少女漫画風の夢見る世界に誘ってくれるから。伊勢物語の
“西の対”に描かれてる在原業平の衣装と山々の緑が際立っている。

尾形光琳にもいいのが揃っている。宗達の写しとされる大きな絵、“唐子に犬図”
がいい。女の子二人が犬と遊ぶ場面で、薄い青と朱の配色が無垢な子供たちに
ぴったり合っている。ユーモラスな“寿老人図”と右の“大黒天図”も味わい深い作品。
光琳の人物水墨画はこの二人と布袋を描いたものが多い。3人の顔はみんな
同じで、額がひろく、鼻はみじかく顎が張り、可愛くニコッとしている。この笑みを
たたえた福顔を見ただけでこちらにも幸運がやってきそうな気がする。

光琳は水墨画でも彩色画でも宗達の絵を手本とし、何点も写している。例えば
“風神・雷神”、“松島図”、“鴨図”など。でも、このユーモアにあふれる布袋図や
大黒天図は光琳独自の作風だ。水墨画の技法も宗達とは異なる。宗達がたらし
込みで墨の濃淡やにじみを多用したのに対し、光琳の墨の線はかなりシャープで、
さっさっと描いた感じがする。墨の薄いところと濃いところにも巧みにメリハリをつ
けており、その技量は相当高い。この俵の上に乗る大黒天図にも達者な筆さば
きがみてとれる。

光琳の絵はもう一点、面白いのがある。はじめてみる“虎図屏風”。出光美術館
でみた宗達の“龍虎図”とそっくりの虎が目の前にいた。虎だけの分、こちらの
ほうが迫力がある。正面を向いた虎の顔は宗達と同じだが、光琳流は尻尾を画面
の外に出し、一部だけをみせてるところ。こういうトリミングに光琳のセンスの良さ
がでている。新春から好きな宗達、光琳の絵を堪能した。

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2006.01.20

勝川春章の美人画

271浮世絵版画で人気の高い美人画というと、喜多川歌麿とか鳥居清長が描く女性であるが、肉筆画では勝川春章の美人画が断然いい。

MOAはその勝川春章の名品を2点も所蔵している。“雪月花図(三幅対)”と“婦女風俗十二ヶ月図”。共に重文に指定されている。

今回、“雪月花”がでた。昨年からずっと待っていたのでちょっと興奮した。期待にたがわぬ名品である。過去見た春章の美人画のベストは、出光が所蔵している“美人鑑賞図”だったが、“雪月花”はこれを上回った。びっくりするほど綺麗な美人画。三幅対になっている雪月花を清少納言、紫式部、小野小町という王朝の三才媛の見立て絵として、これを江戸時代の市井の婦女風俗に描きかえている。

右は真ん中の“月”で、紫式部に見立てている。筆を持った右手で頬杖をつき、しば
し筆を休めているところ。白い顔がまばゆい女は艶麗でありながら、気品がある。
黒の着物が鮮やかで、文様の繊細な描写が見事。左の“雪”では水鳥の柄の
帯をしめた立姿の女性が両手で簾を下ろしてる場面が描かれている。“月”同様、
丁寧に描き込まれた着物の文様に見とれてしまう。足元には白黒の犬がいる。
春章の美人画では犬が描かれることが多い。右の“花”では青い帯が目にとびこん
でくる。色が輝いてるのは相当良質の顔料を使ってるからだろう。

勝川春章(1726~92)は錦絵を生み出した鈴木春信(1725~70)と同時代を
生きた絵師。錦絵の誕生で可能になった写実表現を活かした役者似顔絵で注目を
あつめた。50歳以降は肉筆美人画に専念し、数々の名品を残している。肉筆画
に興味をもつきっかけとなったのが、3年くらい前、出光美術館であった“肉筆
浮世絵名品展”。それまで肉筆画へ関心は版画に較べ低かったが、この展覧会
で勝川春章の素晴らしい美人画をみて、肉筆画にたいする認識ががらっと変った。
次のターゲットである“婦女風俗十二ヶ月図”を早くみてみたい。

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2006.01.19

湯女図

278MOAの今年最初の展覧会は“浮世絵展”(1/25まで)。出品作は前回と多少ダブルものの、狙いの風俗画や肉筆画があるので、熱海までひとっ走りした。

肉筆画で注目してるのは今回出ている風俗画2点と菱川師宣、宮川長春、勝川春章の絵。ここには菱川師宣のいい絵がある。昨年は鬼の酒天童子を源頼光らが退治する話を12枚の揃物に描いた“大江山物語”を見た。

今回は“江戸風俗絵巻”と“見返り美人図”がでた。“江戸風俗絵巻”の見所は
男や女の着ている衣装の色と柄。赤や薄緑、紫の綺麗な着物を身に着けた女性
が男たちと楽しそうに遊んでいる。これだけ色彩が鮮やかな風俗画はなかなか
見れない。東博と同じレベルの師宣を所蔵しているのだからすごい。

“見返り美人図”は菱川師宣の代名詞となってる東博のものとは異なるポーズ。
例のお尻をこちらにむけて、後ろを振り返っている姿ではなく、正面から捉えられた
女は顔を左後ろに向けている。名前は同じでも頭のなかにカッチリ記憶されてる
いつもの見返り美人のほうがやはりいい。一番のお目当ては右の“湯女図”
(ゆなず)と雲谷等顔作、“花見鷹狩図屏風”。

“湯女図”(重文)は風俗画を代表する作品の一つ。前々から知ってはいたものの、
巡り合わせが悪く、見る機会がなかったがようやく対面できた。江戸の寛永年間
(1624~1642)に流行した湯屋で客の垢を流したり、酒や食事プラスαの
相手をした湯女が6人いる。2人をのぞいてふっくら型の顔を横から描いている。
ポーズのとりかたがいいのか長身にみえる。背景は何も描かれてないので、目
は自然と着ている着物の柄にいく。

真ん中の女は大きな桜の柄の衣装をまとっている。こんなに大きな桜の文様は
みたことがない。普通のサイズでは目立たないから、“エイー、私はなんと言われ
ようとビッグなのでいくわよ”という感じだろうか。その後ろにいる女のは鳥の柄。
左から二人目の湯女の着物には、篆字(てんじ)風の“沐”字が入っている。
元気がよく、きっぷのいい女が多い湯女は仕事を離れるとこんな格好で町を歩い
ていたのだろう。当時の様子が伝わってくる風俗画の名品である。

湯女の仕事ぶりが見られる絵が現在、三井記念館で開催中の“日本橋絵巻展”
(2/12まで)にでている。それは八曲一双の大き屏風、“江戸名所図屏風”
(出光美所蔵)。湯屋で多くの湯女が客の体を洗ったり、髪を梳いたり、整髪した
りする場面が描きこまれている。熱心に見ればすぐわかるハズ。

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2006.01.18

須田国太郎展

277現在、東京国立近代美術館で開催中の“須田国太郎展”(3/15まで)は久ぶりの回顧展だという。

日本人が描く洋画が全部頭に入ってるわけではなく、むしろ展覧会情報は薄いほうなのだが、これほど大物の洋画家だったら、もう少し頻繁に個展が開かれてると思ったが、実際は逆だった。

過去に観た須田国太郎の作品は10点くらいしかない。印象に残ってるのは、東近美
の平常展でみた“法観寺塔婆”、“書斎”と京近美にあった右の“校倉乙”、“夏の夕”
、“夜桜”。そして、2年前、島根県立美術館で開かれた“昭和前期の洋画展”という
一級の展覧会に展示してあった“海亀”、“村”。これらは全部今回も出ていた。

会場ではじめてこの画家の絵描きとしての歩みを知った。41歳で画壇にデビューする
も評価は惨憺たるものだったらしい。“法観寺塔婆”や“発掘”、“アーヴィラ”などいい
絵があるのに、黒や茶褐色の暗い絵は当時の好みに合わなかったのだろう。モティ
ーフは風景画、人物、鳥、花、動物の絵と持ち駒は多い。

足が止まったのが寺や仏像を描いた作品。奈良の古寺の感じが良く出ている“唐招
提寺礼堂”、そして“校倉乙”がいい。“校倉”をはじめてみたとき、その黒がずしん
ときた。粗い筆致と黒が校倉を表現するのに一番あってるような気がした。力の
ある絵。戦後の作品、“窪八幡”にも魅了される。作品全体のなかでこの絵が一番
輝いており、屋根の黒とその下の白、赤に吸い込まれそうになる。

鳥や動物の絵がなかなか魅力的。中でも“犬”、“鵜”が秀逸。画面手前に大きく黒い
犬や鵜を描くのは、世田谷美術館でみた稗田一穂の“黄色い豹”と似ている。須田も
また、豹を描いている。そして、鷲の絵が何点もある。この画家は鳥や動物が好き
だったのかもしれない。黒を中心にした色数の少ない絵だが、じわじわと心のなかに入
ってくる感じである。忘れられない展覧会になりそう。

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2006.01.17

市川市東山魁夷記念館

276昨年11/12にオープンした市川市東山魁夷記念館で行われていた開館記念展を1/15の最終日に見てきた。

山種美術館の“日本の四季展ー雪月花”でみた東山魁夷の“年暮る”(拙ブログ12/11)の余韻がまだ体に残っていたのか、先週訪れた畠山記念館で偶然、この展覧会のチラシが目に入った。開館記念展というのは美術館にとって特別のセレモニーなので、いい絵を数多く出品してるだろうと睨み、15日午前中に
出かけた。

バスを降りて、美術館はどこにあるのかなとキョロキョロしてたら、すぐ前の建物が
記念館だった。もっと大きな美術館と思ってたが、全然イメージとちがっていた。
住宅地の一角にあるこじんまりとした美術館。この広さなら、数はあまりなさそうと
直感し、帰りのバスの時刻を確認して入館した。1階に展示してあった東山魁夷が使
った絵の具などの身の回り品はパスして、作品が飾ってある2階に急いだ。

スケッチ、習作、完成作品などが50点くらいあった。館自慢の絵、“夏に入る”
(1968)、“ツェレの家”(1971)、“緑の微風”(1985)、“湖岸(試作)”(1991)、
“雪野”(1992)は当然ながら東山魁夷の代表作。後で、過去みた大回顧展(1993
年:名古屋松坂屋と2004年:兵庫県立美術館)の図録をチェックすると、“京洛四季“
の連作の一枚で、初夏の竹林を描いた傑作“夏に入る”は2回とも出品されていた。
“ツェレの家”と“雪野”は04年の展覧会に出品。また、93年のときには“緑の
微風”、“湖岸”と似た作品が出ている。

このなかで、兵庫県立美の“ツェレの家”はかすかに記憶しているのに、“夏に入る”
と右の“雪野”の印象が薄いのは、この2点の作風が東山魁夷の絵を特徴づける
青の風景画と異なるからかもしれない。冬の時期、この“雪野”に出会えて幸せな気分
である。気品を感じるとてもいい絵。画面に沢山描かれた縦に長い野草はビジーな
感じを与えず、草に少しばかり積もった雪の白と背景にちりばめられたプラチナの箔が
えもいわれぬ美しさを醸し出している。この冬は東山魁夷の雪景色を表現した名画、
“年暮る”と“雪野”で心が洗われた。

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2006.01.16

加山又造の鶴舞

275昨年、はじめて訪問した川村記念美術館に加山又造作の“円舞(鶴舞)”があることを知り、いつかお目にかかりたいと願っていたら、意外に早く、それが実現した。

この絵は日本画展示室の長谷川等伯の“烏鷺図屏風”の対面に飾ってあった。四曲一双の屏風に描かれた美しいタンチョウヅルの舞にしばし時間が経つのも忘れて見入っていた。左隻に2羽のタンチョウが共に羽を大きく広げて、向かい
合って飛び跳ねてる姿が、右隻に3羽が背を曲げ、首と頭を上に伸ばし加減にバレリ
ーナのように美しく舞ってる風景が描かれている。

これまでツルの絵を沢山みてきたが、これほど光沢があり、質感が表われた白は
みたことがない。惚れ惚れするツルの絵である。そして、ツルの足元の草花や背景の
描写が実に緻密。画面から離れると見えないが、靄がかかった背景には銀箔が
細かく撒かれ、夢幻的な雰囲気を生み出している。この絵は加山が55歳のときの
作品。43歳のとき描いた“千羽鶴”のような、形や色が様式化された装飾的な絵画
空間をみてると気持ちがハイになってくるが、白と黒の単純なコントラストが美しい
タンチョウヅルを写実的に表現したこの絵にも魅了される。

この頃、加山は新しい水墨画に挑戦し、“月光波濤”や“凍れる月光”など現代的な
水墨画の傑作を描いた。画家の強い精神性を表現した中国の水墨画とは違う、日本
の情緒性を装飾的に描いた独自の水墨画である。山種美術館に大作“月光波濤”の
小型ヴァージョン“波濤”がある。岩に波が激しくぶつかり、あたり一面に波しぶき
が飛び散る見事な絵。この絵で加山又造の虜になった。以来、加山の作品を追っか
けている。

因みに、明治以降の日本画家が描いた水墨画の中で群を抜く傑作と思ってるのは、
横山大観・“生々流転”、横山操・“越後十景”、加山又造・“波濤”、千住博・“ウォー
ターフォール”、日本人ではないが、王子江・“雄原大地”の5点。加山又造の絵を見た
くてしょうがないのだが、生憎、仕事の関係で東京を長く離れていたため、回顧展を
見る機会がなく、画集に載ってる代表作はまだ6割くらいしか観てない。心は熱くだが、
静かに展示のときを待っている。加山又造の以前の記事は拙ブログ05/6/16

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2006.01.15

長谷川等伯の烏鷺図屏風

274五浦美術館の“川端龍子展”を見た帰り路、川村記念美術館に寄った。現在、開催中のゲルハルト・リヒター展をまた、観るためではない。

HPの展示案内を見て以来、頭の中をぐるぐるまわっていたのが平常展の日本画コーナーに展示してある長谷川等伯の“烏鷺図屏風”と加山又造の“円舞(鶴舞)”の2点(展示は1/22まで)。

当然、平常展だけなので500円くらいかなと思っていたら、平常展だけの料金設定は
なく、いつも企画展&平常展の入場料(1300円)になってるという。西洋画の作品
に変りはないが、日本画はあまり長く展示できないので別の絵に替えるのだろう。ここ
の平常展は印象派のモネやステラ、ロスコーが売りだから、長谷川等伯だけをみたい
というレアケースは想定してないのかもしれない。

この美術館に等伯の“烏鷺図”(うろず)があることは前から知っていたが、観たいとい
う思いが強くなったのは昨年3月、出光美術館で“新発見・長谷川等伯の美展”をみ
たから。出光にも烏と鷺の絵があり、この絵の隣に参考として、川村美蔵の烏鷺図
(重文)の写真が飾ってあった。この絵には図録では気づかないことで、非常に印象
深いところがある。

それは右の左隻に描かれているカラスの色。カラスが黒い鳥ということは百も承知だが
、このような黒ベタのカラスはあまりみない。この黒いフォルムが空中での争いに凄味
を与えている。これは水墨画の伝統からすれば、異常な描き方である。もともと、日本
では古来忌み嫌われるカラスを避け、白いサギとの対比で選ばれる黒い鳥は叭々鳥
(ははちょう)という中国の南部でしか見ることの出来ない鳥が描かれてきた。等伯
はこれを踏襲せず、日本にいるカラスを、しかも黒ベタで表現し、新しい解釈の烏鷺図
をつくりだした。

右隻には大きな幹の柳の老木とその周りに思いおもいの姿をした12羽のサギが描か
れている。飛び上がろうとして羽を広げたサギはちょっと不恰好。こういう面白さは
狩野派の水墨画では味わえない。一方、空を飛ぶ3羽は様式化され、デザイン的な
図様になっている。この絵は最高傑作、“松林図屏風”(国宝、1/29まで東博で展示)
の後に描かれた。松林図を完成させ、晩年、独自の画境に達していた等伯は、伝統の
様式に縛られることなく思いついたアイデアを自在に絵のなかに取り入れたのであろ
う。黒いカラスと白いサギの対照の妙を楽しめる名品である。

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2006.01.14

書の至宝展

273開幕初日に出かけた“書の至宝展”(東博、1/11~2/19)の人気が徐々に高まっている。

当日も午前中にもかかわらず、書道の先生風の人や宗教関係の方が大勢いて、最初にある王義之(おうぎし)のコーナーから混雑し、列の進み具合が遅く、全部見終わるのに2時間以上かかった。

日本史や中国史の教科書に出てくる書の大家の名筆がこれだけ揃えば、書道家
や古美術関係の専門家のみならず、一般の美術ファンでも興味が涌いてくる。
中国の書を見る機会は少ない。東博東洋館の平常展で定期的に鑑賞する中国
絵画のあと、すぐ隣に展示してある書をさっとみる程度。目は多少慣れているがキャ
プションを覚えているわけではない。直近では、昨年10月にあった三井記念館の
名宝展に李斯筆の“泰山刻石”などがでていた(至宝展にも出品)。

展覧会で絵画をみる場合、説明書きは読まないが、今回は中国の書の歴史につ
いて、まとまった知識を得ようと、章のはじめにある文章を熱心に読んだ。そのあと、
古い王義之(303~361)や欧陽詢(557~641)らの書を食い入るように見、
書体の特徴を素人なりに読み取ろうとしてみた。草書、行書、楷書は知っているが
実際、筆で書いたことがないので、字と字の続きかた、墨の濃さやかすれ具合は
つかめても、字そのものの達筆さのレベルはわからない。

漢字を書く技量についての知識はないが、書は人を表すの言葉通り、大家の性格
や美意識といったものはなんとなくその書から伝わってくる。あくまでも先人の書風
を踏襲しようとする人、長い文章を楷書で一字々丁寧にきっちり書いていく人がい
るかと思うと、一方で自由奔放な筆使いで個性的な書のかたちをつくりだした書家も
いる。紀元前12世紀から清朝末までの作品のなかには、絵画同様、美しさを感じ
る書もあり、また見てると元気がでてくるような自由ではつらつとしたものもある。
じっくりみると、書は奥が深く、高い芸術性を秘めていることに気づく。

中国の書に較べると、日本の書は三筆と呼ばれる人の書や写経を過去、みたこと
があるので身近な感じがする。とくに、三筆の一人、空海の本展にでている書は、
空海展(03年、京博)のとき熱心に観た。今回の一番の収穫は、和様の書をつくりだ
した三蹟、小野道風、藤原佐理、藤原行成の本物と、美しい料紙に和歌が繊細
な書体で書かれた右の“古今和歌集(元永本)”(国宝、東博)に出会ったこと。

“古今和歌集”のなんと華麗なこと。薄紫の料紙に撒かれた金銀の切箔、砂子を
みると、源氏物語絵巻の詞書の部分を連想する。中国の書体から離れ、日本の風土
から独自のひらがなを生み出した日本の書は、さらに装飾的な工芸品と一体に
なり、柔らかくて、優美な書の世界に発展していった。これは日本美の極みかも
しれない。今回の展覧会で書の魅力を十二分に感じることが出来た。もう一度見に
行こうと思う。

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2006.01.13

川端龍子の金閣炎上

272川端龍子の名画を求めて茨城県の北にある五浦美術館までドライブした。常磐道をいわき勿来ICまで走るのははじめて。美術館には自宅から2時間半で着いた。

ここで今、昨年江戸東京博物館であった“川端龍子展”が開かれている(2/19まで)。東京展でいい絵に沢山出会い、満足度は高かったのだが、東京会場に出品されなかった絵でどうしても見たいのがいくつかあったため、再度
足を運んだ。高速料金はかかるものの、滋賀県立美術館(4/11~5/21)に出か
ける費用と較べれば安いもの。

東京で観たものはどんどんパスして、お目当ての絵をめざした。入ってすぐのところ
に一番観たかった“天橋図”が飾ってある。長らく追っかけていた絵にあっさり出会
った。図録で見る以上に感動する。上空からみた天橋立が俯瞰の構図で縦長に描か
れている。両サイドの海岸線に打ち寄せる白い波と金泥が使われた群青と緑青の
交じりあう海が実に美しい。装飾的ではあるが、波の音が聞こえてくるような実在感
がある。真ん中の松は横からの視点で描かれているので、松林が立体的に見える。
巧みな画面構成である。ちなみに、日本画を鑑賞するとき参考にしている“昭和の
日本画100選”(朝日新聞社、1989年)には、この絵と“愛染”(足立美術館)が入
っている。

ほかの作品では、定期的に通っている龍子記念館(大田区)の所蔵でまだ、見て
なかった“龍子垣”と“小鍛冶”に魅せられた。描かれた題材により、龍子の特徴であ
る大作の魅力がこれほど発揮されている絵はない。“龍子垣”の左右に配された
白梅と藤の花、その間に組まれた竹垣を唖然としてみていた。竹の質感に全く驚か
される。

この2点と同じところに展示してあった右の“金閣炎上”を9年ぶりにみた。何度見て
も凄い絵である。これを描いた川端龍子はショッキングな事件に接し、絵心魂がめ
らめらと湧き上がったのだろうが、観る者は絵のもつ強烈なパワーに圧倒される。墨
で描かれた周りの木々が一層、炎に燃える金閣寺を浮かび上がらせ、空から降り
注ぐ雨が白い線となって、生き物のように金閣寺を焼き尽くす炎と木立のなかに消え
ていく。“金閣炎上”は平山郁夫が広島の被爆を描いた“広島生変図”とともに炎を
表現した絵の傑作。遠くまで出かけた甲斐があった。

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2006.01.12

佐竹本三十六歌仙絵

271出光美術館では現在、注目の“歌仙の饗宴展”が行われている(2/12まで)。なぜ関心が高いかというと、知る人ぞ知る王朝絵巻の傑作、佐竹本三十六歌仙絵が出品されてるから。

三十六歌仙の内、9点が集まることだけでも凄いこと。2点(個人蔵)ははじめての展覧会出品で、最も人気の高い“斎宮女御”は十余年ぶりの公開という。

この歌仙絵はもとは2巻の絵巻であったが、大正8年((1919)に切断され、断簡
の形になった。その多くは個人が所蔵し、茶席の掛物として、茶人たちの目を楽しま
せている。この36点の歌仙絵には高額ゆえ(億以上)、所有者が何回も変わると
いう流転のドラマがある。一つ々の絵にまつわる秘話だけでも一冊の本になる。

今回でている歌仙は柿本人麿、斎宮女御(さいぐうのにょうご)、小大君(こだいのき
み)、藤原興風(おきかぜ)、紀友則、僧正遍昭、大中臣頼基(おおなかとみのより
もと)、藤原元真(もとざね)、壬生忠見(みぶのただみ)。和歌は日本の伝統文化な
ので、専門家でない我々でも、藤原公任が選んだ三十六歌仙は有名な歌人なら名前
を言われれば、思い出す。ここには出てないが、小野小町、伊勢、在原業平、紀貫
之、山部赤人らの絵もあるハズ。

絵巻を分断する前につくった模本があるので、どんな肖像画になってるかはこれを載
せた画集をみればわかると思うが、残念ながら目にしたことはない。個人蔵が多く、
現在の所有者が誰であるのか掴めてないこともあり、三十六点が一堂に会することは
まずない。だから、ほとんど人の目にふれられることのない幻の名画であり続けるこ
とだろう。9点を見られる機会にめぐり会っただけでも幸せ者と思わなければならない。
もし興味があればであるが。

佐竹本三十六歌仙絵が制作されたのは、鎌倉時代、13世紀中頃。国宝の源氏物語
絵巻が描かれて150年くらい後である。現存する歌仙絵では最も古い。女性像が5点
で、残りが男性像。三十六歌仙を切断したとき、皆が欲しがったのがお姫さま。一番
高かったのが斎宮女御で、今のお金にして4~5億、その次が小野小町だったという。
男ものは大体その半分の値段。不人気は2点ある僧正遍昭と素性法師。総額は40億
円を超える空前の価格だったと伝えられている。

前期に出品されてる歌仙でもやはり、十二単の色が鮮やかに残ってる右の“小大君”
に目がいく。単眼鏡も使ってじっくりみた。うつむき加減の顔で、目には表情がある。
引目鉤鼻(ひきめかぎはな)の技法で描かれた源氏物語絵巻に登場する女性から、
鎌倉のリアリズムを反映し、すこし個性的な顔立ちになっている。これは男の歌人にも
いえ、リアルな目や鼻、口、髭の描き方により、男前ぶりや内面の性格が読み取れる。
なかなか観れない佐竹本三十六歌仙絵を鑑賞できた喜びに浸っている。後期にでて
くる一番人気の斎宮女御の展示に胸が高まる。

展示期間が前期(1/7~29)、後期1/31~2/12)だけというのがあるので、もし
訪問を計画されてる方があれば、これを頭に入れられたほうがいい。
通期の展示は、柿本人麿、僧正遍昭、大中臣頼基、壬生忠見、藤原元真(但し、前期
は1/7~22)。前期だけー小大君、藤原興風。後期だけー斎宮女御、紀友則。

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2006.01.11

畠山記念館の茶道具取り合わせ展

270港区白金台にある畠山記念館を訪れた。まだ2回目なので、地下鉄都営浅草線高輪台駅を降りてからの道順に危うさはあったが、徐々に思い出し5分くらいで着いた。

ここは企画展はなく、館所蔵の茶道具を中心とした展示を年4回行っている(現在の展示は3/12まで)。館の創立者、畠山一清(1881~1971)が集めた茶道具などの美術工芸品は1300点くらいあるという。そのなかには国宝が6点、
重文が33点あり、コレクションの質は超一級。

記憶に新しいところでは2年前、根津美術館であった南宋絵画展に、ここの“林檎
花図”(国宝)という名画にお目にかかった。そのとき、中国の水墨画では多くの愛好
家が見たがってる牧谿(もっけい)作、“煙寺晩鐘図”(国宝)も出てくれば最高だったの
だが、残念ながら展示は無し。前回、学芸員の方に“煙寺晩鐘図はいつ頃出てくる
のでしょうか?”と聞いてみたら、今のところ公開の予定はないという返事だった。
古い絵なので保存にものすごく気を使ってるという。11年前にあった五島美術館の
牧谿展に出てから、随分間隔があいているのでそろそろ公開が近いかもしれない?
あまり、期待せず静かに待っていよう。

畠山一清は琳派の作品にも関心が高かったようで、琳派の画集に載ってるほどの
代表作をいくつか所蔵している。是非見たいと思い続けているのは尾形光琳の“躑躅
図”(つつじず、重文)と本阿弥光悦の赤楽茶碗だが、今回、その赤楽茶碗を観ること
ができた。右の“銘雪峯”(重文)。やっと願いが叶った。これは本阿弥光悦が焼いた
名品のひとつに数えられており、白釉のながれが峰に降り積もる雪に見えることから
この銘がついている。こぶりながら、丸みをもった胴に温かみがあり、強く惹きつけ
られる。“白楽茶碗 銘不二山”(国宝)、“黒楽茶碗 銘雨雲”(重文)はすでに見た
ので、残るは“赤楽茶碗 銘加賀”(重文)だけになった。

掛け軸がかけられている畳のところに、光琳が描いた丸々とした可愛い布袋の絵が
あった。これは大きな収穫。展示されてる陶磁器や絵画の数は多くないが、前回同様
見終わったあと、とてもいい気分になった。

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2006.01.10

フンデルトヴァッサー

269京近美でフンデルトヴァッサーの回顧展(4/11~5/21)があるということがわかり、俄然楽しくなってきた。

早速、京近美に他の美術館への巡回があるか問い合わせると、今のところ無いとのことだった。だが、東京のどこかがオファーを出すかもしれない。そのときは二度観られる幸せを味わえばよい。まずは京都で楽しむことを決めた。

以前、倉敷の大原美術館と伊豆の池田20世紀美術館でフンデルトヴァッサー
の絵に出会い、すごく惹きつけられた思いはあるのだが、わずか2点ではこの画家
の作風を知るにはほど遠かった。それが、03年、ウィーンでおとぎの国のお城
みたいなフンデルトヴァサーハウスやクンストハウスに展示してある子供の絵かと
見紛う作品の数々をみて、オーストリアが生んだこの天才芸術家との距離がぐん
と縮まった(拙ブログ04/12/25)。

美術館になっているクンストハウス(1991年開館)には、フンデルトヴァッサーの
若き日の自画像のほか、観てて楽しくなる絵が何点も飾ってある。平面的で子供が
遊んで楽しむパズルのような絵というのが第一印象だった。黄色、赤、緑、青のメイン
カラーが画面いっぱいに氾濫している。どの画家と似てるかな?と思いをめぐらすと、
クレーの絵が頭に浮かんできた。でも、クレーの絵はこれほど色彩が輝いてない。

フンデルトヴァッサーの絵の中には同じようなフォルムがでてくる。そのひとつが渦巻
き模様。この画家は直線が嫌いで、不規則な渦巻き模様や曲線でアンチ合理主義
や自然志向を象徴している。また、百の力をもつ水という名前の通り、水が波打つ線
やモスクワにある聖ワリシー寺院を連想するタマネギ型の尖塔もよくでてくる。

作品中、最も印象深く、美しかったのが右の絵。建物と建物の間に描かれている黄色
の顔をみてると、ミュージカル“キャッツ”で猫に扮する役者がしていたメイキャップを
思い出す。また、面白いことにシュルレアリスムのダブルイメージがみられる。目、口と
横に建つ丸いネギ坊主の塔などをもつ家の列。もう一つは、顎の横線と川の水の流
れが重なっている。

この美術館にはどういうわけか図録がない。で、絵が描かれたポストカードよりすこし
大きめの厚紙プレートが13枚あったので、全部買いこんだ。一枚5ユーロ(当時600
円くらい)したので、高い図録代になったが、いまではこれを時々眺めて当時の感動を
リフレインしている。4月のフンデルトヴァッサー展が待ち遠しい。

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2006.01.09

松岡美術館の美人画・東洋やきもの展

268地下鉄南北線あるいは三田線の白金台駅から歩いて6分くらいのところにある松岡美術館を定期的に訪問している。

今回のお目当ては館所蔵の美人画と東洋のやきもの(展示は4/23まで)。ちょっと古い図録には円山応挙、伊藤若冲、酒井抱一や、明治以降の日本画家、橋本雅邦、横山大観、川合玉堂、小林古径、上村松園などの巨匠の絵画がいくつも載っている。ここは絵画だけ
でなく、古伊万里など陶磁器の優品が揃ってることでも有名。これから2年くらい
通い、これらの作品を見尽くそうと思っている。

今回のテーマは美人画。上村松園の“春宵”や鏑木清方の“蛍”などは昨年も
見たが、名品なので何回見ても飽きない。そして、別の展覧会にでてた安田靫彦
の“羅浮仙女”とまた会った。はじめてこの絵を観たとき大変感激したが、今度も
若冲が描くような白梅を背にして立つ長身の仙女に釘付けになった。縦長の大き
な掛け軸に9頭身もある女が描かれている。仙女の印象を強めているのは身に
着けてるうす緑の衣装と大きな鼻。上村松園や鏑木清方の絵にはこんな鼻をした
女性はでてこない。伊東深水の“春宵”、伊藤小坡(いとうしょうは)の“歯久ろめ”
も心地よい絵で、しばしうっとりして眺めていた。

美人画展と同時開催の東洋のやきもの展も充実している。ここの陶磁器コレクション
はレベルが高いので、他館のやきもの展によく貸し出される。前回の古九谷様式
の名品に引き続き、中国、ベトナム、朝鮮、イランのやきものを堪能させてもらった。
とくに目に焼きついたのが右の中国、明時代に焼かれた“黄地青花紅彩牡丹唐草
文瓢箪”。黄地に赤の牡丹と青の唐草が鮮やかに映えている。色絵磁器の魅力
はその鮮やかな色合い。絵画ではこんなに輝く色は味わえない。

都内の美術館では東博が中国のやきもののメッカだが、ここの作品をみても大き
な満足が得られる。この美術館はいつも一粒で二度美味しい。また、訪れたい。

今日は嬉しい展覧会情報がいくつも入ってきた。朝日新聞の朝刊に今年、朝日が
主催する企画展が載っている。西洋美術では、上野の森美術館で“ダリ回顧展”
(9/23~07/1/4)がある。ダリ好きにとっては天にも昇る気持ち。もうひとつ、朝日
とは関係ないが、嬉しくてたまらない展覧会を見つけた。京近美で4/1~5/12に
開かれる“フンデルトヴァッサー展”。待ちに待ったフンデルトヴァッサーの作品が
日本にやってくる(拙ブログ04/12/25)。

日本美術にも凄いのがある。東京美術倶楽部で開催される“大いなる遺産 美の
伝統展”(2/5~26)。国宝17点、絵巻、日本画、陶磁器など日本美術を代表する
名品が沢山でてくる。いまからワクワクする。京近美の今年の企画展は目を見張ら
せる。9/13~10/23に“プライス・コレクション 若冲と江戸絵画展”が開催される。
若冲展はいつも京都からはじまる。奇想の絵師の名画を沢山所蔵してるプライス
コレクションなので、出品作に期待が膨らむ。京博では“大絵巻展”(4/22~6/4)
がある。今年も京都に行く回数が増えそう。また、江戸東京博物館の“ボストン
美術館蔵肉筆浮世絵展”(10/21~12/10)も有難い展覧会。

なお、前半に開催される展覧会は拙ブログ1/1の展覧会情報に付け加えておいた。

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2006.01.08

上村松篁の花鳥画

267九段下の山種美術館では1/5から“日本の四季展ー雪月花ー”の後期がはじまった(1/22まで)。

前・後期通して出品される19点はダブルものの、後期には広重の版画3点を含め、26点でてくるので、また、出かけた(前期の記事は拙ブログ12/11)。

奥村土牛の絵、4点はいずれも小品で、今年の干支にちなんだ犬の絵が2点ある。可愛い子犬を扇子の絵柄に使っ
てる“戌年”がいい。また、じっと見てると晴れやかな気分にさせてくれるのが金地
に紅白の梅を描いた“紅白梅”。堅山南風の大きな絵、“彩鯉”も見ごたえがある。
6匹の鯉の配置が巧み。横山大観の絵は3点ある。青い海と白い波が印象的な
“松・白砂青松”と名作“富士山”に足がとまる。龍のような雲が左から斜め下に出て
きて富士の山腹をかこむ“富士山”は大観の代表作の一つ。

ここには“蓬莱山”、“海山十題の黎明”、“喜撰山”、“作右衛門の家”などの名画が
あるのだが、過去他の美術館で行われた回顧展で見ることはあっても、この展示室で
これらにお目にかかることは無かった。今回はじめてAクラスの“富士山”に出会った。
アベレージの大観ではなく、見て唸るような代表作をもっと頻繁に出してくれればい
いのだが。

後期だけの作品より、出ずっぱりの方にいい絵が多い。右の絵はポスターに
使われてる“竹雪”。描いたのは上村松篁(うえむらしょうこう、1902~1992)。
女流美人画家、上村松園の息子。これまで3回くらいこの絵をみたが、いつも絵の
前にいる時間が長くなる。この絵には観る者を吸い込むような力がある。左上から垂
れてる笹にはこんもりと雪がつもり、笹に隠れるように一羽の鳩が佇んでいる。実景
ではなく、鳩が雪の陰にいたら美しいだろうと画家が想像して描いたもの。画面は
あくまでも静謐で、幽玄的な美を感じる作品である。

上村松篁には竹の笹に積もった雪と鳥を描いた絵が3枚ある。これは最初の絵。
1977年の作で、このあと、丹頂鶴(1980)、鴛鴦(1982)と続く。なかでもこの
“竹雪”が気に入っている。自宅で多くの種類の鳥を飼っていた松篁の花鳥画には
色々な鳥がでてくるが、拙ブログ05/7/26で取り上げたのは熱帯にいる鳥。
松篁の格調高い花鳥画に魅せられ続けている。

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2006.01.07

三井記念美術館の日本橋絵巻展

266今日からはじまった三井記念美術館の開館記念展の第2弾、“日本橋絵巻展”(前期1/7~28、後期1/31~2/12)をみてきた。

最初の展覧会では、三井家が所蔵する質の高い陶磁器や絵画などの美術品をごっそり出品し、観る者をうっとりさせたが、今回もまた日本橋が描かれた風俗画や風景画で目を楽しませてくれた。ドイツから里帰りした風俗絵巻が一番の見所だが、国内の美術館から集めてき
た歌川広重や溪斎英泉らの浮世絵が凄い。摺りの状態が一級なのと日本橋を描いた絵がバラエティーに富んでいる。よくぞこれだけの作品を揃えたものだと感心する。

ベルリン東洋博物館が所蔵する日本橋繁盛絵巻“熈代勝覧”(きだいしょうらん)は
12メートルの巻物で、1805年当時の日本橋通りの光景を描いている。江戸の
文化・経済の中心である日本橋界隈を行き来する商人、武家、僧侶、職人、芸能者、
修行者などが1671人描き込まれているという。これを数えるのは根気がいる作業
だと思うが、そのくらいいるらしい。

洛中洛外図で人の動きやしぐさ、顔の表情を見る目を養ったので、蟹の横ばいスタ
イルでじっくりみた。ここは魚河岸があり、三井越後屋などの店が立ち並ぶところ
なので、洛中洛外図にでてくるような岩佐又兵衛風のダイナミックな動きとか、あけっ
ぴろげな男女の恋などは勿論ない。でも、この通りは美味しい食べ物や最高の衣装
を求めて粋な人々が集まるところ。すれ違う黒頭巾の女性を振り向いて眺める男
の場面などがちゃんと描かれている。どこにでてくるかは見てのお楽しみ。

隣にいた小学生の女の子の目は鋭い。“可愛い犬がいる!”。こちらが気がつかない
ところを見ている。お返しに、鷹匠の男や猿を教えてあげた。右の日本橋の手前(画面
の右端からむこう)が一番人が多い。魚河岸から魚を運ぶ男たちなどで路上は足の
踏み場もないくらい大混雑。日本橋の下では数えきれないほどの舟が川岸に接岸し、
男たちがてきぱきと魚を上にあげている。その向こうに富士山がみえる。江戸といえば
日本橋と富士山がお決まりのモチーフ。

庶民の生活を活写したこんな面白い風俗画が日本に無く、ドイツの博物館に収まって
るというのは複雑な気持ちになる。が、この絵巻に限ったことでなく、北斎の富嶽三
十六景でも最上の版画はギメやメトロポリタンにあるのだから、気にすることはない。
三井記念館や三越があった場所の200年前の賑わいを存分に楽しんだ。

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2006.01.06

溪斎英泉の風景画

265昨年の今頃、開館25年を記念した館蔵の浮世絵名品展で愛好家を楽しませてくれた太田記念美術館では、そのパート2を行っている。

前期が1/3~26、後期が2/1~26。ここには約1万2千点の版画、肉筆画があるという。そのなかから名品を取り出してきても、一度では展示しきれず、昨年出なかった残りの作品がでている。準名品というのではない。前期の71点も見ごたえ充分。

この美術館は入ってすぐの畳のところで座って作品をみれるのがいい。自分が
所蔵する掛け軸を見るような気分になる。朱がよく残っている菱川師宣の“遊女
物思いの図”と宮川一笑作、“楼上遊宴図”に魅了される。楼上遊宴図は大
きな肉筆画で、海が見える二階で繰り広げられる賑やかな宴席の場面を描い
ている。酒を飲む男と、男たちをもてなす芸者衆が大勢いる傍らで、旗本風の男
が横になりひじをついている。これほどリラックスした様を描いた風俗画はあまり
お目にかからない。

2階には鈴木春信が4点ある。とくに空摺りの技法で雪と鷺の白を表現した“雪中
鷺”がいい。歌麿の美人画、“北国五色墨 おいらん”、“青楼七小町 大文字屋
内多賀袖”はいずれも魅力的。東博、MOA、千葉市美、そしてここで歌麿の美人
画をかなり見たので、遊女など女性の顔、髪の毛、手の指の描き方の特徴や
作品ごとの違いに目が慣れてきた。あとは描かれる女性の心の内面にどれだけ
入っていけるかだ。もっともっと歌麿に近づきたい。

今回は風景画が少ない。広重は一枚も無い。後期に展示?目を惹くのは北斎の
名作“雪月花 隅田”と溪斎英泉(けいさいえいせん)の風景画2点。右は英泉作、
“江戸両国橋ヨリ立川ヲ見ル図”。広重より六歳年上の溪斎英泉の絵ですぐイメージ
するのは退廃的で妖艶な女性の絵。英泉はこの美人大首絵で人気絵師になる。
女郎屋の亭主をやり、淫乱斎とも号した英泉にしてみれば、崩れた女はすらすら描
けたのかもしれない。

だが、英泉はただの美人画絵師では終わらない。“江戸八景”や“木曽街道六捨
九次”など風景画の名品を沢山残している。このあたりが並みの絵師とは絵心、
技量が違う。右の両国橋では漢画風の強い筆致と洋画の陰影法を使い、舟が何艘
も行き交う隅田川の光景を描いている。手前をトリミングし、左端に両国橋を大き
くみせる構図のとりかたが実に上手い。英泉には北斎を思わせる大胆な画面構成
で観る者をあっといわせる“木曽路駅 野尻・伊奈川橋遠景”という傑作がある。
いつかこの絵にめぐり会いたい。

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2006.01.05

鳥居清長の美人画

264渋谷の東急東横店で開催中の“浮世絵にみる女性の装い展”(1/11まで)は予想を上回る良質の展覧会。

デパートの会場なので、手狭な感は否めないが、なかなかいい美人画が多く、しかも料金は700円と安い。

浮世絵の華である美人画は菱川師宣以来、多くの浮世絵師に数限りなく描かれただろうが、ここには50人の絵師が制作した120点が飾られている。美人画
のビッグスリー、鈴木春信、鳥居清長、喜多川歌麿をはじめ、風景画を得意とする
葛飾北斎、歌川広重や歌川豊国、歌川国貞、歌川国芳、溪斎英泉、菊川英山
らが描いたいろんなタイプの美人画が次から次と出てくる。

照明が当たってる作品もあるので、浮世絵版画の見所である細かい描線
まで楽しめる。肉筆画、版画の両方あるが、版画のほうに名品が多い。春信では
代表作の“笹森おせん”と“風流江戸江戸百景・浅草晴嵐”がいい。淡い色調
で描く少女のような美人画をみていると甘美で夢心地な気分になる。

これとは対照的に、天明年間(1784~1788)に絶頂期を迎えた鳥居清長が
描く女性は写実的。なぜこんなに背が高いのかといつも不思議におもうのだが、
理想的な8頭身。そして、顔はヴィーナスのように美しく、体全体から健康的な色香
を漂わせている。清長の革新的なところは大判を続絵にして大画面を構成し、ここ
に日本人の実体とは違う理想的な美人を何人も描いたこと。

巧みな群像表現が目を惹くのが右の“亀戸天神太鼓橋”。亀戸天神の名物である
藤棚の下に綺麗な着物姿の5人の清長美人が描かれている。拙ブログ11/29でとりあげた山本丘人の静かで雅な絵とは異なり、豊かな町人文化の空気を感じさせる
生気あふれる美人画である。じっとみていると、この輪の中に入って一緒に歩きた
いという衝動にかられる。

はじめてみる絵で印象深いのが歌川豊国の“両国花火之図”。三枚続きを上と下に
並べ、大画面をつくる絵は過去、見たことがない。下の三枚には芸者衆や酔っ
払った客が乗ってる納涼船を、上の三枚に橋の上から花火を観ている群衆を描い
ている。豊国はやはりたいした絵師だ。この絵と雪の中、近景に傘をさした女を大き
く表現した広重作、“見立浮ふね・隅田川の渡”が一番の収穫かもしれない。
もちろん、歌麿の艶っぽい美人画も存分に楽しんだ。なにか随分得した気持になる
展覧会である。

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2006.01.04

日本橋高島屋の人間国宝展

261日本橋高島屋では1/2から“人間国宝展”を行っている(1/16まで)。

陶芸、染織、漆芸などの分野で高い技を体得した人を重要無形文化財保持者(人間国宝)と認定する制度ができて50年になるのを記念し、初年度(昭和30年)に人間国宝となった作家の名品と現在の作家による作品が160点あまり展示してある。

03年、山口県立美術館であった“日本伝統工芸展50年記念展”をみた経験から、
今回は陶芸以外の各工芸分野の作品についても落ち着いてみることができた。
まず、馴染みの陶芸品では有名な陶芸家の逸品が2点づつ飾られている。初年度
に人間国宝になったのが、富本憲吉(色絵磁器)、荒川豊蔵(志野、瀬戸黒)、
石黒宗麿(鉄釉陶器)、濱田庄司(民芸陶器)。このなかに北大路魯山人と河井
寛次郎が入ってないのは本人が辞退したため。富本憲吉の作品は東近美から、
濱田庄司のは日本民藝館から名品がでている。

現在活躍中の作家では、十四代酒井田柿右衛門(色絵磁器)、三代徳田八十吉
(彩釉磁器)、三浦小平二(青磁)、十一代三輪休雪(萩焼)、伊勢崎淳(備前焼)らの
見事な陶磁器を前にして、言葉がでない。なかでも関心の高い陶芸家、三代徳田
八十吉が05年に制作した右の“耀彩曲文壷”に魅せられた。美しい深海を連想させる
青や緑とガラス作品を思わせる形が強く心を打つ。古九谷様式を再興した吉田屋
拙ブログ12/30)の技を引き継ぐ徳田八十吉は今に生きる九谷焼の名手。隣にある
青が鮮やかな壷も強い磁力を放っている。

他では、染織をじっくりみたが、過去、これほど色鮮やかで華麗な友禅の訪問着や
振袖をみたことがなかったので、気分はもう高原状態。初年度に認定された上野為二、
木村雨山、三代田畑喜八、中村勝馬や現在も活躍中の森口華弘、羽田登喜男の
高い意匠感覚と染織の技にただただ感服するばかり。また、ミリ単位の精度で装飾
的な文様が施されている松田権六や大場松魚の蒔絵にも釘付けになった。見所一杯
の工芸展であった。

なお、この展覧会はこの後、高島屋各店を巡回する。
・ジェイアール名古屋高島屋:2/16~27
・横浜高島屋:4/5~17
・大阪高島屋:8/30~9/11
・京都高島屋:9/13~10/2

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2006.01.03

モーツァルトのフィガロの結婚

262今年はモーツァルト生誕250年にあたる。昨年からこれにあわせ、モーツァルトの演奏が多くなっており、年末恒例のベルリンフィル・ジルヴェスターコンサートで演奏された曲も全部モーツァルトだった。

クラシックあるいはオペラのビデオ収録は以前に較べ、回数が少なくなっているが、サイモン・ラトルが指揮するベルリンフィルの演奏だけは欠かさず録画するようにしている。今回はモーツァルト尽くしなので、元旦からいつも以上に楽しい気分で聴いている。

演奏されたのは“フィガロの結婚序曲”、“ピアノ協奏曲変ホ長調K.271”(ピアニ
スト、アックス)、“交響曲38番・プラハ”、“フィガロの結婚、第4幕最終場面”。
“フィガロの結婚”はモーツァルトがつくった人気オペラ・ブッファというだけでなく、
全てのオペラを代表する作品のひとつ。その軽やかな序曲が流れてくると、一気に
モーツァルトモードになり、じわじわとでてくるα波で気分が爽快になってくる。
やはりこの“フィガロの結婚”はザ・モーツァルト。

聴きどころのアリアや重唱がいくつもある。中でも伯爵の小姓ケルビーノが歌う“恋と
はどんなものかしら”はアリアの名曲として名高い。このアリアとモテット“踊れ、喜べ、
幸いなる魂よ”を聴くといつも心が洗われる。まだ、このオペラを劇場で聴いたことは
ないが、Myベストオペラビデオで楽しんでいる。これまでモーツァルトのオペラは何回と
なく収録したが、今はベストを残し定期的に聴いている。

★フィガロの結婚(アバド指揮ウィーン国立歌劇場、91年、アルマヴィーヴァ伯爵を
            ライモンディ、伯爵夫人をスチューダーが演じている)
★ドン・ジョヴァンニ(ムーティ指揮ミラノスカラ座、87年、トーマス・アレン、クルベロ
             ーヴァ)
★コシ・ファン・トゥッテ、女はみんなこんなもの(アルノンクール指揮ウィーン国立
              歌劇場、89年、クルベローヴァ、フルラネット、ストラータ)
★魔笛(ムーティ指揮ミラノスカラ座、95年/パリオペラ座、01年)
★後宮からの誘拐(ザルツブルグ音楽祭、97年)

今年は内外でモーツァルト関連の演奏会が色々企画されてるようだ。モーツァルト好
きにとっては楽しい一年になりそう。また、2,3年前のようにビデオ録画が忙しくなる。
最近、タイミングよく堀内修著“モーツァルト オペラのすべて”(平凡社新書、05/12)
という本がでた。出版社も抜け目がない。堀内氏の本は2冊目だが、この本も読みや
すくて面白い。

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2006.01.02

東博の初もうで展

261東京国立博物館の初もうで展(1/29まで)を観てきた。会場でばったりおけはざまさんと会い、一緒に美術談義をしながら、楽しく回った。

いつ頃からやっているのかわからないが、ここは正月、その年の干支にちなんだ絵画などの美術品を展示している。今年のテーマ“犬と吉祥の美術”には、犬が描かれたものと吉祥を表した作品が二つのコーナーに50点あまり展示されている。

いの一番にみたかったのは、円山応挙が寺の書院の杉戸に描いた右の“朝顔
狗子図杉戸”。円山応挙は可愛い子犬の絵を何点も描いているが、これはその代表
作。03年、大阪であった円山応挙の大回顧展では展示替えでみれず、残念な思
いをしたが、やっとリカバリーできた。清少納言ではないが小さいものは何でも可愛い。
日本画のなかで心を和ます子犬を描いてくれたのは琳派の俵屋宗達、尾形光琳
と円山応挙と応挙の弟子、長澤芦雪。

宗達や光琳の子犬は墨で描かれているのに対し、応挙が描くのはどこにでも見か
ける白や茶色の毛をした子犬。当然ながら、こちらのほうが和み度は大きい。それに
犬のしぐさが実にリアル。一番左の犬のように後ろ足をあげて顔をかく姿はまこと
に微笑ましくて、ほんわかする。江戸時代に入ってから犬は絵画だけでなく、工芸作品
にも多く出てくるようになる。安産や子供の健やかな成長を祈願して犬をあしらった工
芸品では、雪の上で遊ぶ14匹の子犬が刺繍された見事な帯や犬張子があった。

“吉祥”のところのお目当ては、雪村の“松鷹図”(重文)と伊藤若冲の“松樹・梅花・
孤鶴図”。“松鷹図”は追っかけていた絵。松の葉はさっさと筆を動かして描いた感じ
で、粗さもあるが、鋭い目をした二羽の鷹の体を少しひねった姿は威厳があり、画面
に緊張感をもたらしている。これと対照的なのが若冲の絵。真ん中に描かれた鶴の
体は異常に円く、超肥満鶴。こんな鶴は見たことがない。昨年ここでみた太った鶏の
ように漫画のような絵である。若冲にはユーモラスな絵がいくつもあるが、この絵
もそのタイプ。

若冲ほど多彩な技をもった絵師はいない。これらを使ってサイケデリックな細密花鳥画、
正統的な鶴や松の絵、モザイク風の鳥獣花木図屏風、点描風の石燈籠、漫画チック
な鶏、鶴、犬、野菜の絵を描いた。また、若冲にやられてしまった。

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2006.01.01

謹賀新年 展覧会情報

本年も美術、スポーツ、音楽などの文化現象を記号としてとらえ、その記号の
価値を読みとり、そして記号と記号のコラボレーションを勝手気ままに楽しみ
たいと思います。よろしくお願い致します。

今年はどんな名画、名品に出会えるだろうか。前半に開催される注目の展覧会
情報をまとめてみた。

★西洋美術
1/2~2/26    ポーラ美術館の印象派展  Bunkamura
1/7~3/26    パウラ・モーダーゾーン=ベッカー展 神奈川県立近美葉山館
1/13~3/5    須田国太郎展       東京国立近代美術館
1/28~5/7    東京ーベルリン展     森美術館
1/28~3/19   ベルナール・ビュフェ石版画展  ニューオータニ美術館
2/9~28      クレー展           大丸東京店
3/4~4/9     スイススピリッツ展     Bunkamura
3/7~6/4     ロダンとカリエール展    国立西洋美術館
3/25~6/30   プラド美術館展       東京都美術館
3/25~5/7    青騎士の画家たち展    ニューオータニ美術館
3/28~5/21   藤田嗣治展         東京国立近代美術館

4/11~5/21    フンデルトヴァッサー展  京都国立近代美術館
4/1~5/14    ルーシーリー展       とちぎ蔵の街美術館
4/8~6/18    ナポレオン展        江戸東京博物館
4/8~6/4     雪舟からポロックまで展   ブリジストン美術館
4/12~5/28   バルラハ展         東京芸大美術館
4/15~6/25   イサム・ノグチ展      横浜美術館
4/15~5/28   大岡信コレクション展      三鷹市美術ギャラリー
4/18~30     絹谷幸二展         日本橋三越
4/22~6/25   ポンペイの輝き展      Bunkamura
5/11~22     ニキ・ド・サンファル展   大丸東京店
6/3~7/30    ジャコメッティ展       神奈川県近美葉山館
6/13~7/30   吉原治良展         東京国立近代美術館
6/17~8/20   ルーブル美術館展     東京芸大美術館
6/24~8/20   クレー展           川村記念美術館

★日本美術
1/2~29      初もうで展、松林図    東京国立博物館
1/2~11      浮世絵・女の装い展   東急東横店
1/3~2/26    浮世絵名品展       太田記念美術館
1/5~22      日本の四季展       山種美術館
1/5~4/23    美人画展          松岡美術館
1/7~2/12    歌仙の饗宴展       出光美術館
1/7~2/12    日本橋絵巻展       三井記念美術館
1//11~2/19  書の至宝展         東京国立博物館
1/18~30     平山郁夫シルクロード美展  日本橋高島屋
1/21~3/21   日本の陶芸100年展   茨城県陶芸美術館
1/24~3/5    バーク・コレクション展   東京都美術館
1/27~3/8    名品展・紅白梅図屏風   MOA
2/5~26      美の伝統展         東京美術倶楽部
2/16~5/14   開館10周年記念展    大山崎山荘美術館
2/18~3/26   源氏物語絵巻展      五島美術館

3/4~4/23    風俗画展          出光美術館
3/4~4/16    亜欧堂田善展       府中市美術館
3/8~3/20    加山又造展         大丸神戸店
3/10~4/12   近代日本画と工芸展    MOA
3/11~5/7    桜さくらサクラ展       山種美術館
3/11~4/23   小野竹喬展         香雪美術館
3/14~5/21   近代工芸の名品展     東近美・工芸館
3/18~5/21   横山、竹内、川合展    野間記念館
3/25~4/9    18世紀京都画壇展    京都国立博物館
3/28~5/7    最澄と天台の国宝展   東京国立博物館
3/28~5/27   美しき日本の四季展   鎌倉大谷記念美術館

4/1~5/28    播磨ゆかりの江戸絵画展 大倉集古館
4/1~5/28    蒔絵の美展         畠山記念館
4/8~5/14    関屋澪標図と琳派展   静嘉堂文庫
4/8~6/4     伊東深水展         目黒区美術館
4/11~7/2    京焼の名工展       三井記念美術館
4/12~5/28   大正・昭和前期の美術展 東京芸大美術館
4/15~5/7    燕子花図と藤花図展   根津美術館
4/22~6/4    大絵巻展          京都国立博物館
4/22~5/28   菊池契月展        長野県信濃美術館
4/28~6/4    伊東深水展         五浦美術館
4/29~6/18   所蔵名品展Ⅰ       出光美術館
4/29~5/28   若冲・動植綵絵展示2期 三の丸尚蔵館
6/1~7/17    広重・東海道五十三次展 太田記念美術館
6/3~7/2     若冲・動植綵絵展示3期 三の丸尚蔵館
6/17~7/23   書の国宝展         五島美術館 

(ご参考)
・“東京ーベルリン展”にはドイツ近代絵画を代表するグロス、キルヒナー
 などビッグネームの作品がでてくるので期待値は高い。
・“クレー展”は93年、名古屋でみた大回顧展以来。どんな作品がでてくる
 のか楽しみ。
・“スイススピリッツ展”のお目当てはセガンティーニ、ホドラーの絵。
・“プラド美術館展”にティティアーノの“アモールと音楽をくつろぐヴィーナス”
 が出品されるのは有難い。グレコ、ベラスケス、ゴヤはどの作品か?
・“藤田嗣治展”はこれまでお目にかかってない回顧展なので、すごく楽しみ。
・“フンデルトヴァッサー展”は待ちに待った回顧展。嬉しくてたまらない。

・“初もうで展、松林図”はお得な展覧会。420円で円山応挙、伊藤若冲、
 長谷川等伯、洛中洛外図、狩野芳崖、横山大観、歌川広重の名画が観れる。
・“歌仙の饗宴展”にはなかなか観れない“佐竹本三十六歌仙絵”が出光に揃う。
 エポック的な企画展で見逃せない。雑誌、“なごみ1月号”に特集あり。
・“書の至宝展”は日中の名筆が揃う。一生の思い出になりそうな企画展。
・“バークコレクション展”の目玉はなんといっても曽我蕭白の“石橋図”。追っか
 けてる作品がようやくみれる。伊藤若冲の“月下白梅図”にも興奮しそう。

・“美の伝統展”は東京美術倶楽部の創立100周年を記念して開催される超一級
 の展覧会。国内の美術館、個人蔵から国宝17点、絵巻、古陶磁、近代日本画、
 洋画、工芸の名品が集まる。これは凄い。開幕が待ち遠しい。
・“よみがえる源氏物語絵巻”には素晴らしい復元模写が全点でてくる。徳川美
 で見れなかった残りの半分に会えるのが今から楽しみ。
・“加山又造展”は没後初の回顧展。版画をふくめて80点がでてくる。

・“18世紀京都画壇展”は京都で活躍した池大雅、与謝蕪村、伊藤若冲、曾我
 蕭白、円山応挙、長澤芦雪らの代表作を展示。追っかけてる若冲の“菜蟲譜”
 が出品される。これは2/26までサンフランシスコで行われる展覧会の里帰り。
・“美しき日本の四季展”には横山大観、速水御舟、小林古径、前田青邨などの
 名品が揃う。見所一杯。大谷コレクションは質の高いことで有名。
・“最澄と天台の国宝展”は国宝がぞろぞろでてくる一級の展覧会。“六道絵”
 全部を見る機会はそうめぐってこない。
・“大絵巻展”には国宝源氏物語絵巻、鳥獣戯画などの名品がでてくるようだ。
 期待が高まる。


展示の情報は得ていないが、心の中で見たいと願ってる日本画がいくつか
ある。“犬も歩けば棒にあたる”とか“求めよ、さらば与えられん”ということもある。
学生の頃、大好きなマージャンのメンツが揃わなかったときでも、“誰かい
ないかなあー”と思っていると広い構内のなかから、ひょいと友人が現れ、マー
ジャン屋へ直行したことがよくあった。とにかく、狙いの絵が出てくることを念じ
ておこう。その日本画とは。。

★“山越阿弥陀図”(国宝、京都、禅林寺)
★“釈迦金棺出現図”(国宝、京博)
★“月次風俗図屏風”(重文、東博)
★長谷川等伯、“波濤図”(重文、京都、禅林寺)
★尾形光琳、“太公望図屏風”(重文、京博)
★与謝蕪村、“夜色楼台図”(重文、東博)
★伊藤若冲、“菜蟲譜”(栃木県葛生町立吉沢記念美術館)
★英一蝶、“布晒舞図”(埼玉県、遠山記念館)
★鈴木春信、“見立蟻通明神”(東博)
★勝川春章、“婦女風俗十二ヶ月図”(重文、MOA)
★横山大観、“游刃有余地”(東博)
★竹久夢二、“五月の朝”(竹久夢二伊香保記念館)
★福田平八郎、“漣”(大阪市近代美術館準備室)

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