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2005.12.21

コレクター芝川照吉と岸田劉生

250現在、渋谷区立松涛美術館で行われている展覧会から近代日本における美術品コレクター、パトロンに関する興味深い情報を得た。

“幻の芝川照吉コレクション展”(06/1/29まで)の図録にここの美術館の学芸員がコンパクトにまとめた芝川照吉を含むコレクター、パトロン物語が掲載されている。

この論考をざっと読むと日本の才能ある洋画家、日本画家、陶芸家をどの企業家、
資産家が支援し、その作品をコレクションしてきたかがわかる。財閥系の鈍翁
益田孝(三井)、住友吉左衛門(住友)、岩崎弥之助(三菱)、原三渓、細川護立、
松方幸次郎、大原孫三郎、石橋正二郎、薩摩治郎八、井上房一郎、芝川照吉らコレ
クター、あるいはパトロンとして名の通った人はおおよそカバーしている。

コレクターのなかにはただ財力があるだけで陰の美術指南役のアドバイスのまま作品
を購入した人もいようが、美術品を愛し、高い審美眼で才能豊かな画家や陶芸家
を見つけ、支援してきた企業家、資産家は数知れない。明治から大正にかけて毛織
物貿易で財をなした芝川照吉(1871~1923)は事業への情熱よりは芸能、芸術へ
の関心が高かったらしく、芸術家や文人、文化人との交流を深め、絵画、陶器などを
約千点コレクションしてたという。が、芝川の死後、そのコレクションは関東大震災
にあうなどしてほとんどが散逸してしまったようだ。

今回、この美術館は現在、そのコレクションの一部を所蔵する各地の美術館や個人
から集め、往時の姿を再現している。HPでみた青木繁と岸田劉生の作品に期待を
寄せて入館したが、いい絵がいくつもあるのでびっくりした。東近美やブリジストン美で
よくみる青木繁の“運命”、“光明皇后”はもとは芝川コレクションだった。好きな絵、
“女の顔”(個人蔵)にまた会えた。浅井忠の代表作、“縫物”(ブリジストン蔵)もある。

圧巻は岸田劉生のコレクション。芝川は岸田劉生を支援し、40数点持っていたという。
東近美にある有名な“壷の上に林檎が載って在る”や水彩の名作、“麗子座像”(メナ
ード美)に魅せられる。一番心を揺すぶられたのが右の“静物”。前々から劉生が描く
静物画は対象物に実在感あり、上手いなと思っていたが、この絵の素晴らしさはセザン
ヌ級。テーブルクロスの青が光輝いている。出品作の事前情報が無く、普通の心拍数
で訪問したが、この“静物”に大きな衝撃を受けた。

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コメント

いづつやさん、こんばんは。
岸田劉生の《静物》画像を拝見し、ぜひ実物を観たいと行って参りました。いづつやさんのおっしゃる通り劉生の静物画には魅了されますね!今回の芝川コレクションの中の2点、特に画像の《静物》は北方絵画的な襞表現とセザンヌ的なリンゴ表現と、その不思議な調和がとても面白かったです。私的には急須ポットが聖母のように思われたりして、劉生に益々興味を持ってしまいました。
本当に素敵な作品をご紹介いただき、いづつやさんに感謝でございます!

投稿: June | 2005.12.27 01:46

to Juneさん
過去みた岸田劉生の静物画を図録をめくり思い起こしているのですが、
はじめて観たこの絵が一番いいですね。岸田劉生の画技はすごいです。
いや、びっくりしました。これは個人蔵ですが、こんな名画はもっと頻繁に
出品してもらいたいですね。法律的には私的財産ですのでとやかく
言えませんが、岸田ファンとしては常設展示にしてもらいたいくらいです。

西洋の静物画ではやはりセザンヌですね。オルセーにある“りんごと
オレンジ”を観たときの感動は一生忘れないでしょう。もう、セザンヌの
静物画に惚れ込んでます。また、クールベにもいい静物画がありますね。

それと、我らがカラヴァッジョが描く静物にも魅了されます。Juneさんも
同じように感じられてるとおもいますが、“エマオの晩餐”に出てくる手前
に飛び出してきそうな果物籠も素晴らしいですね。Juneさんは鑑賞済み
でしょうが、ミラノのアンブロジアーナ美術館にある“果物籠”をいつかみ
たいと願ってます。

投稿: いづつや | 2005.12.27 12:05

こんばんは。

わたしもこの展覧会にはときめいたものです。
やはり『静物』がすてきですね。
あの青色が綺麗です。

それから藤井達吉・・・
藤井のことは知らなかったので、今から勉強しようと思います。


TBさせていただきました。

投稿: 遊行七恵 | 2006.02.15 22:09

to 遊行七恵さん
岸田劉生の静物画にびっくりしました。これまでみた日本の洋画家が
描いた静物画で一番感動しました。
藤井達吉の作域は広いですね。刺繍、七宝、そして木工の家具調度もつく
ってます。東近美であった“日本のアール・ヌーボー展”には電気スタンド
がでてました。才能ある人はなんでも出来ちゃうんですね。

投稿: いづつや | 2006.02.16 11:33

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大正頃までは、日本にも芸術家の庇護者がいた。その一人が芝川だ。彼は羅紗王と呼ばれたそうだ。実父は五世竹本弥大夫、弟は木谷蓬吟、義妹は画家の千種だ。数年前、千種の回顧展をみ [続きを読む]

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