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2005.12.12

東博地獄劇場

241東京国立博物館における来年5月くらいまでの展示スケジュールを眺めていて、ふと今日のタイトルを思いついた。

すでにこの地獄劇場の幕は現在の平常展から上がっており、一部の展示コーナーでは半年くらい大変怖い、おどろおどろしい場面が続く。別に劇場の支配人でも宣伝部長でもないが、一応ご案内しておきたい。

一幕:餓鬼草紙、十王像(12/25まで)
二幕:狩野一信作、五百羅漢図(06/2/14~3/26)
三幕:地獄草紙(3/14~4/9)
四幕:六道絵(3/28~5/7)

一幕は以下で少々詳しく。狩野一信の“五百羅漢図”は昨年10月に出版された
“別冊太陽 狩野派決定版”(平凡社)に載っている。かなり怖い仏画なので、
夜、暗くなって見ないほうがいいかもしれない。公開されることがほとんどなく、
寺の住職や専門家だけが見てた絵を天下の東博で展示するというのだから、
またとない機会である。

地獄草紙(国宝)は12年前、ここで見て以来。今でもよく記憶している罪人が燃え
上がる火に焼かれる場面をまた、じっくり見てみたい。拙ブログ11/2で取り上
げた六道絵は“最澄と天台の国宝展”のなかで展示される。そのときは、おけは
ざまさんに習って単眼鏡で細かい描写までとらえるつもり。

一幕に出ている“十王像”の初江王と宋帝王は大倉集古館にでてた狩野探幽の
絵(狩野派展、12/18まで)ほど痛々しくない。十王像はいろんなヴァージョンがある
ようで、これから迫力あるものに出くわすことを期待しよう。初江王で鬼がふりかざ
す剣は北斎展にあった“鐘馗図”とよく似ている。

右の“餓鬼草紙”(国宝)は昔、“地獄草紙”と一緒にみた。ガリガリに痩せているのに、
腹だけはぷっくり出ている餓鬼がうごめく薄気味悪い場面が目に焼きついている。
餓鬼草紙は生前、貪欲で物欲の激しかった者が堕ちる餓鬼道の世界を描いた絵巻。
餓鬼は飢えた死者のことで、人の目には見えない。ここにはいろいろな餓鬼がいる。
宴席の貴族たちに取り付く欲色餓鬼。肩に小さな餓鬼がいることも知らず、福々し
い顔をした貴族が琵琶を弾いている。常に人の排泄物をうかがう伺便餓鬼。

そして、死者が出るとすばやくやって来て、その死骸を喰う右の疾行餓鬼。生前、
病人に食物を施さず、みずから食した僧がこの餓鬼道に堕ちるとされる。左端では
棺桶の遺骸をブチの犬が食らいついており、その横で餓鬼が笑いながら骸骨を拾っ
ている。一番怖いのが白骨の傍に死んで横たわる女の赤くなった片目。目を会わ
せられないほど不気味。石を積み上げた塚があり、人骨が散らばっている。12世紀
後半の京都近郊の墓場はこんなだったのだろうか。

別の場面があと2,3出てくる。餓鬼道に堕ちないよう、物欲はほどほどにしたい。

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コメント

はじめまして。
okiさんのところから飛んできました。
地獄草紙、餓鬼草紙は昔から気になってならない描像です。
京都の近郊の墓場というより、都大路などの巷の惨状そのものだったのでは、と思ったりします。末法思想が背景にあるらしいのですが、飢餓、疫病の巷をリアルに見つめて描いたと思えてならない、その惨状から逆に末法思想が流行ったのでは。

投稿: やいっち | 2005.12.18 15:29

to やいっちさん
はじめまして。書き込み、TB有難うございます。東博でこれから怖い
地獄の絵が続きますね。楽しみです。

餓鬼草紙や地獄草紙が描かれるのは12世紀後半ですが、1052年
から末法の世に入るとされてますから、やいっちさんのおっしゃるように
この頃、京都の町は疫病などで多くの人が死に、餓鬼草紙に描かれた
ような光景だったのでしょうね。これからもよろしくお願いします。

投稿: いづつや | 2005.12.18 23:23

こんばんは。
狩野一信観てきました~
言葉では表現できません。
凄すぎます。
図録も販売されていました。
お買い得です。

投稿: Tak | 2006.02.20 21:54

to Takさん
東博地獄劇場2幕、狩野一信の“五百羅漢図”は予想以上の凄い絵で
したね。これははまりそうです。土曜日、放心状態でみてたら、おけはざま
さんから声をかけられました。で、4つの目で、いや二人とも単眼鏡をつかっ
てたので8つの目で熱心にみました。

こういう絵が公開されたのは嬉しいですね。仏教物語がこれほどびっちり
描かれてる絵の鑑賞が一回で済むハズがありません。パスポーがまた役
に立ちそうです。

観終わったあと、おけはざまさんと近くでコーヒーを飲みながら、美術談義
に花を咲かせました。おけはざまさんも皆さんとまた、お話したいとおっしゃって
ましたので、お忙しいでしょうが是非機会をつくっていただけたらと思います。

投稿: いづつや | 2006.02.20 23:27

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