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2005.12.03

久隅守景の賀茂競馬

232狩野派展の後期に展示される作品をみるため、また大倉集古館にでかけた。後期は12/18まで。

ホテルオークラの隣にある大倉集古館へは地下鉄虎ノ門駅で下車し、虎ノ門病院の前を通って行くのと、南北線の六本木一丁目駅で降り、泉屋博古館を横に見ながら行く方法があるが、どちらも坂を登っていく。

もっとも、六本木一丁目の場合、坂といってもエスカレーターが上まで動いている
ので、疲れることはない。所要時間は虎ノ門からが13分、一丁目からは10分
くらい。この美術館のコレクションは日本美術では質が高いので、見終わるまで
暫く定期的に訪問しようと思っている。8割くらい見たので、もうちょっとで済み
マークがつく。

後期の“狩野派展”のお目当ては、03年、島根県立美術館で一度見た、右の
久隅守景作、“賀茂競馬・宇治茶摘図”(重文)。六曲一双の大きな屏風絵に描かれ
た風俗画の傑作である。洛中洛外図には、京の名所や町衆や武家の日常生活
の営み、華やかな祭り、農村の仕事などがでてくるが、この屏風では初夏を彩る
京の風物詩として、右隻に宇治の茶摘の様子を、左隻に賀茂神社の競馬を描い
ている。

登場人物はそれほど多くない。女たちは茶摘に精を出したり、家の前にむしろを
敷き、何かを干したりしている。ふざけあっている子供たちもみえる。画面上下にあ
る山や家々は金雲(源氏雲)で所々覆われ、家や道、人物は柔らかい土色で表
現されている。実に落ち着いた風俗画である。賀茂神社で開かれる競馬を取り
上げた風俗画は他にみたことがない。

レース場手前の仕切り柵のところに観客が多くいる。この画面には出てこないが、
右のほうでは子供が柵の上にあがって馬の競争を見ている。速さを競ってる2頭の
馬の描き方は極めてシンプルだが、躍動感がある。画家は大きな画面に人物や
木々をあまり描きこまず、疾走する2頭の馬に観る者の目が集まるように構成を考え
ている。静かな感動があり、印象深い絵である。久隅守景のたしかな腕に感服した。

他の作品では、前期に興味深くみた狩野探幽作、“地蔵十王図巻”(展示替え)に
また、足がとまった。首と手首を責め板で固定され、怖い鬼に痛めつけられている
母親とその母親の腰紐をつかんで泣いている裸の嬰児が痛々しい。この“地獄十王
図巻”に出会ったのはこの展覧会での大きな収穫。英一蝶作の眠る猫などがで
てくる“雑画帖”や狩野常信のユーモラスな“猿猴捉月図”にも魅せられた。数は少な
いが、狩野派の画風を楽しめる充実した展覧会である。

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コメント

こんにちは。私もこの展覧会行ってきました。
狩野派デビューです(笑)
前期の感想も拝見しましたが、私も作品の質もさることながら、
感じのいい美術館だと思いました。また折をみて足を運びたいと思います。
あと、ココログにはFC2からTBができないようなのですが、
いづつやさんから当方に何か気になる記事ありましたら、その時はどうぞ遠慮なくTBして下さいませ。

投稿: gem | 2005.12.12 12:31

to gemさん
こんばんは。大倉集古館は一回の展示数は多くないのですが、質の高い
美術品がでてきますので、定期的に通ってます。今回の収穫は
はじめてみた狩野探幽の“地蔵十王図巻”です。夢中になって見ました。

gemさんのブログ興味深く読まさせてもらってます。情報量が多いので大変
参考になります。文章もお上手ですね。

投稿: いづつや | 2005.12.12 16:12

いづつやさん、こんばんは。
狩野派はよく知らないので今回は勉強するつもりで観てきました。
いづつやさんも取上げている「賀茂競馬・宇治茶摘図」は狩野派の豪快なイメージと違い、親しみのある画題と画風が楽しかったですね。競馬の疾走シーンや観客の描き方も面白かったです。加茂祭礼や茶摘の様子など、つい当時の風俗にも見入ってしまいました。
で、今回私的に気に入ったのは前島宗祐「鶏頭小禽図」で、鶏頭の描写や風にたなびく草の流れなど琳派な趣を感じました。今回の展示作品は豪快な狩野派のイメージとはちょっと違う作品も観られて勉強になった展覧会でした。前半作品も観れば良かったなぁと、ちょっと反省です(^^ゞ

投稿: June | 2005.12.18 04:32

to Juneさん
久隅守景の“賀茂競馬・宇治茶摘図”はいい風俗画ですね。女が家の前
で洗濯してるところとか、子供が柵に上がり競馬に夢中になってるとことか、
日常の生活のひとコマ“ケ”と競馬という“ハレ”を一緒に描いてるところが
面白いです。

狩野探幽には前期にでた“鵜飼図”のようなのもあります。また、ここで
2年後くらいに展示されるでしょう。“鶏頭小禽図”の白い腹をみせる
逆さまの小鳥がいいですね。私も気に入ってます。

投稿: いづつや | 2005.12.18 23:10

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