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2005.12.01

北斎展 その二

230北斎展の盛況ぶりは止まるところを知らない。⑥期(11/29~12/4)がはじまった29日、朝10時に入館したのに、見終えたのは午後の1時半。

これでも、まだ楽なほうで、館の前には沢山の人が入場制限で待たされていた。帰るとき話した年配の人は長野市から来たそうだ。かなり広い範囲にまで北斎展の強い磁力が届いている。混むはずである。

3回目の入場なので、色々作戦を立てて、フットワークよく展示替えの作品を見た
つもりだが、予想以上の人で事前にチェックしていた絵の前にたどりつくのに時間が
かかった。洋画や日本画の鑑賞と違って、小さな浮世絵は最前列で見ないと、
細かい描写や微妙な色が味わえない。効率的なのは丸印だけをとばしとばし見る
方法だが、一度列を離れると、前に入り込むのは難しいので、この見方は捨て、
前見た作品をもう一度楽しむつもりで一点々じっくり見た。

ただ、2回目同様、第五期(為一)、第六期(最晩年)をみて、そのあと四、三、二、一
と戻っていった。この北斎展の良いところはシリーズものが期間を通して全作品観
れること。“富嶽三十六景”は数が多いので無理だが、“諸国瀧廻り”、“千絵の海”、
“琉球八景”、“百物語”、“元禄歌仙貝合”、“馬尽”は全点揃った。過去、部分的
には見たことがあるが、全部を観るのははじめて。大回顧展ならではの快挙である。

“貝合”や“馬尽”は工芸品を見るような楽しさがある。“百物語”はマンガをみる
感覚でみていたが、“さらやしき”や“笑うはんにゃ”に描かれたうす青の顔は結構
怖い。版画ではギメやメトロポリタンから出品された“富嶽三十六景”が関心の的で
あったが、世界中の美術館から集められた“花鳥画”を観れたのも忘れられない経験。
花の描写、枝に止まってたり、花のまわりを飛んでいる鳥のポーズが見事で、みて
て飽きない。

ハイライトの“富嶽三十六景”はどれも心打たれる。96年、名古屋でメトロポリタン
美が所蔵している浮世絵作品の質の高さを見せつけられたので、今回は画面の隅か
ら隅まで、色の調子、細部の描写を丹念に見た。中でも右の“東海道金谷ノ不二”に
夢中になった。まず、肩車されてる人が被ってる白い笠と着物の赤が目にとびこん
でくる。北斎が得意とする波は“神奈川沖波裏”のような生命感あふれるダイナミックな
波とは違い、デザイン化され、リズミカルに表現されている。河なので波はこれほど
上下にウエーブしてないはずだが、北斎の卓越した想像力にかかると、観る者を楽し
くさせる風景画に仕上がる。肩車渡しの向こうでは大勢の川越人足が担ぐ荷物や人
の乗った籠が往き交う。人足たちの掛け声や激しい息使いが聞こえてくるようだ。

この展覧会で注目してた肉筆画は名品が多数でていた。⑥期の狙いはMOA所蔵の
“二美人図”(重文)。全作品中、展示期間が最も短い。これを観るのは2度目。顔の
表情に関心があるのではなく、着物の柄、色彩に魅せられている。肉筆でこんなに色
が鮮やかに出ているのは他には北斎の師匠、勝川春章と喜多川歌麿の作品しか
ない。北斎は師匠と肩を並べる肉筆画を描いた。多才である。最晩年の“肉筆画帖”
も凄い。後期に出てたのでは、右後ろ足を上ヘあげる姿が可愛い蛙、小鳥を獲ろうと
狙ってる蛇のはらわたの白、包みの白の質感にびっくりさせられる。

質の高い版画、肉筆画をこれほど多く集めた北斎展は今後当分見れないであろう。
トータル10時間、200%堪能した。東博に感謝々。

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コメント

あ~~迷ってしまいます。
こんなに混んでいたら帰りの飛行機に乗り遅れます。
最終日だと朝一で行っても難しいかもしれませんね。
やっぱりプーシキン展だけにしようかしら?
あ~~~~迷っています。(^_^;)

投稿: リセ | 2005.12.02 00:26

to リセさん
こんばんは。北斎展は閉幕間近になり大変混んでます。北斎展にどの
くらい時間を割けるかでしょうが、1時間でも2時間でもあれば入場され
たらどうでしょうか。5期、6期のコーナーは2時間くらいで見れます。

1時間であれば、もう割り切って、5期だけに絞るとか。5期に富嶽三十
六景、諸国瀧廻り、百物語、花鳥画など北斎の代表的な版画があり
ますから。ここだけでも、凄いです。ギメから出品されてる“凱風快晴”の
初摺りはなかなか観れません。美しいですよ。それから、メトロポリ
タンからでている三十六景も見逃せません。そして、シカゴ美などか
らきた“花鳥画”も素晴らしいです。

最晩年の“肉筆画帖”も肉筆画の傑作ですが、これは小布施でい
つでも見れます。また、若い頃の作品をパスしても、専門家でないの
ですから、大丈夫ですよ。

5期にでているギメやメトロポロタン、シカゴ所蔵作品は北斎の版画では
世界中で一番状態のいいものですから、これらでもう充分北斎展
を見たことになります。1時間あればみれますから、頑張ってください。

投稿: いづつや | 2005.12.02 17:46

3度観たのですね、羨ましいな・・
「二美人図」を見逃したことが残念ですが、
せめて、それほど混んでいない時に2度観られたことに感謝しましょう

後半の記事をupしたので、TBしました

投稿: えみ丸 | 2005.12.05 18:41

to えみ丸さん
TB有難うございます。こんな質の高い北斎展を2回も見られたので
すから、もう北斎通ですね。まだ、余韻覚めやらずで、図録を毎日眺め
て楽しんでます。この図録は北斎のバイブルといっても過言では無いです。

実は、今回作品を見ながら、一点々、赤のボールペンで気に入った
ポイントを入り口のところにあった出品目録にメモしていったんです。
記者の速記のように。例えば、海の青が鮮やかだったとか、構図が
良かったとか、海の波がレリーフのようだったとか、シュールな印象だ
ったとか。。。

それと照らし合わせながら図版をみています。とくに色は図録では100%
再現しませんから、このメモが貴重なんです。今回は10時間メモを取り
っぱなしでしたから、いろんな情報を吸収しました。貴重な経験です。

投稿: いづつや | 2005.12.05 22:02

こんばんは。
北斎展、花鳥画のほかは肉筆画に惹かれて観に行ったのですが、
この展覧会には、代表作のほとんどが出品されていたのですね。
やっぱり2回目を行きたかったです!
日本の美術に関心はありましたが、展覧会らしい展覧会に行ったのは今回が初めて??で、和の構図と色彩にすっかり魅せられてしまいました。

展覧会は終わってしまいましたが、
しばらく北斎展の影響が抜けそうに無いです。
とりあえず、市内の美術館に北斎漫画が出品されているそうなので観に行こうと思います。

投稿: gem | 2005.12.05 22:33

to gemさん
北斎展での大収穫は海外の美術館からきた作品です。唸ってしまう
のがいくつもありました。

・大英博物館ー梅樹図、滝に鯉、流水に鴨図 
・ギメー鯉、菊に虻、凱風快晴、
・ボストンー新版浮絵化物屋鋪、花鳥画賛歌合、金沢八景、江の島遠望、鎌倉の里 
・メトロポリタンー相撲絵、風流無くてなゝくせ(ほおずき)、富嶽三十六景、
・フリーアーはるの不尽 
・シカゴー相撲絵、風流男達八景、臼・萩・雀図、芙蓉に雀 
・ホノルルー山下白雨
・ベルリンー月下山水、滝山水、深山の鹿・軽業ほか、狂句人戯画、紫陽花に燕
・アムステルダムー桜花に富士図、元禄歌仙貝合、馬尽 
・ベルギー王立ー鳥羽絵 
・ミネアポリスー列子図、かめいど天神たいこばし
・ネルソン・アトキンズー梅樹図 
・ヴィクトリア・アルバートー風流東部方角、百人一首乳母か恵とき関白大政大臣
・ケルンー初鰹の荷揚げ
・ライデンー八十三歳自画像 

これらの傑作はこの先当分みることは無いでしょうから一生の思い出に
なります。本当に有難い展覧会でした。

投稿: いづつや | 2005.12.06 12:38

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